河野(以下──) 今回は、埼玉県にて個別指導塾を経営されている小林先生です。さて、先生の場合、学生時代から独立されてたわけですが、そのあたりの経緯からお尋ねしたいのですが?
小林 学生時代、21歳の時に独立しました。学生時代は色々なバイトを経験しました。最初、「時給が高いから」という不純な動機だけで始めた塾講師でしたが、考えが180度変わりました。生意気な言い方ですが、「僕がやらなきゃ誰がやるんだ!」と思うようになったんです。20名のスタートでしたが、私が指導から抜ける頃には、140名になってました。
── 学生時代に独立ですか?それはすごいですね。直接のきっかけは何だったんでしょう。
小林 子どもたちが大きく変わることを実感したからです。こちらが本気になると成績だけではなく、態度も変わる。生徒たちがものすごく「自信」や「愛」に飢えていると感じました。じゃあ、学習指導を通して元気にしてあげようと思ったんです。
── で、苦労したと・・・(笑)
小林 そうですね。もともと生徒とのふれ合いの部分しか見てませんでしたので、経営など考えたこともなかったわけです。
しかし生徒が増え、講師が増えると裏方の仕事が多くなり、一方で校舎も増えますと、経営のことを考えざるをえなくなりました。
そこで法人化したわけですが、そうすると思った以上の支出がありますよね?これは、どうにかしないといけないということで千樹会はじめ、色々なところで勉強させて頂いております。
── 確かに法人格にすると色々と出ますよね。では、塾の話に移らせて頂きますが、まず形態は個別指導ですね。
小林 そうです。実は最初は、小集団での授業をしていたのですが、法人化と同時に全て個別指導に切り替えました。
大きな理由は、生徒の集客の問題、それと生徒のニーズの多様化に対応するためです。どの個別指導塾も同じかも知れませんが生徒全てに対応するとなると、どうしても提案型といいますか、オーダーメイドのカリキュラムを組まざるを得ません。
これが小集団でも厳しくなってきたということです。
── 提案型は、どの個別指導でも言われますが、先生のところで注意している部分とかありますか?
小林 他の個別指導塾との差があるかどうか分かりませんが、私の塾では、定期テストと客観的な全県模試の組み合わせで生徒の学力を判断した上でカリキュラムを組みます。細かく組むのは教室長の役割ですが、最終決定するのは、今でも私になっています。
── この規模になっても、まだ直接、先生が最終決定するというのは、理由があるのでしょうか?
小林 いえ特に理由ということもありませんが、生徒に対しての効果を考えながらも、一方では売上も考えないといけない。そのバランスとか、また各ご家庭の事情、生徒の事情も踏まえてトータルで判断することが、まだまだ難しいのかな?と思いますね。
ただし、現在、大まかなガイドラインを作成しています。マニュアルと考えて頂いても結構なのですが、ともかく全ての教室長や時間講師の方に、学びの森の判断基準とかカリキュラムの作成方法とか、キチンと知って頂き、お客様と接する全ての人が、学びの森の哲学から外れることのないようにしたいと思っています。
── そのマニュアルの効果はいかがですか?
小林 目標数字上でしたら、新人講師もベテラン講師もほぼ7割までは持っていけてます。まだ未完成ですが、出来れば8割くらいには持っていきたいですね。
── なるほど。あと、先生の塾は、英会話とかパソコン教室なども行っていますね。
小林 そうですね。実は、法人化した際に学びの森というだけでなく、その後ろにJ-STUDIOとつけました。
これは、年齢に関係なく学びの空間を作りたいとの思いからです。その一環として英会話とかパソコン教室も経営してます。英会話は、3歳から小6生まで、パソコン教室にいたっては、80歳のおじいさんまで通ってくれてます。
── 何かそのことで塾にとってのメリットとかありますか?
小林 直接的なメリットは、あまりないですが、ただ1か所に3歳から80歳まで集まるということはあまりないですよね。
その点、塾では、おじいさんが、お孫さんくらいの子どもに声をかけてくれたり、外国人講師が、パソコン教室で学んでいる方に声をかけたりと、独特のつながり観のようなものはあります。
※小林先生の塾のHPを見ると「元気・笑顔・感動プロデュース空間」と書いてあります。通常、塾は成績を上げ、合格させる空間ですが、勉強は一生続くもの、どんな人でも勉強したいはずとの思いから、このような形になっていったのでしょう。
結局、世代の垣根を越えてコミュニケーションをとることで、1つのコミュニティが生まれれば・・という小林先生の想いが表れた塾の形になっています。
── さて今後の目標をお尋ねしてもよろしいですか?
小林 2015年までに10校舎の目標を立てています。そのために今年からは、もっと経営ということに関してシビアに勉強をしたいと思い、千樹会はじめ、様々な勉強会に参加させて頂いてます。
── どうですか?何かプラスになりましたか?(笑)
小林 まず1つは、大小、規模を問わず多くの塾長先生と話しをする機会を得ることで、一匹狼で経営していた部分をある程度、客観的に見れるようにはなったと思います。意外と自分本位の経営をしていたなと思いますね。
他人というスタッフを雇った瞬間に、皆が納得してついてきてくれるような経営をしないといけないとも思います。
── その他になにかありますか?
小林 そうですね。塾に対するスタンスも大きく変わってきた感じがします。実は、私の塾の転機はリーマン・ショックだったんですね。
このままではダメだとチラシの勉強を始めました。そうすると、チラシが当たるようになり、売上も上向きになってきたのですが、ここに来て、この手のチラシだけだとシンドイなと。いつまでもこれを続けるのは、危ないのではないかな?と。つまり経営体として考えると、長く経営するには、顧客や地域とのコミュニケーションとか、そういうもっと人間的な部分を強化しないといけないと考えるようになりました。
── その辺りを話し出すと長くなるので、ここでは割愛して(笑)、ともかく色々な活動に参加されていますね。
小林 そうですね。個別指導の研究会とか、チラシやマーケティングの研究会、それから、内部組織の充実のための勉強会とただ単にセミナーや勉強会に参加するだけでは意味がないので、最終的には自分流に落とし込んで、理想の塾を作る糧にしないといけないと考えていますが。
── あと、先生の塾では理科実験や感想文などもされてますね?
小林 学びの空間ですので、何でもやります。(笑)特に理科実験は、子どもたちの不思議を体験してもらうには最適ですね。
また理科実験においては、日経新聞の取材を受けたりと色々とマスコミにも取り上げられ、塾のブランド化にも役立っています。
── なるほど。本日はどうもありがとうございました。
小林 ありがとうございました。
※最初、塾名を聞いた時、不思議な名前だな?と思ったものですが、先生の話を聞くにつれ、思いが形に、名になったのだなと気付きました。またインタビューの最後に私が、「では、先生は、塾の生徒・保護者の方とどんな付き合いをしたいのですか?」とお尋ねした際、「ご近所付き合いのような家族ぐるみの付き合いをしたいですね。」と答えられたのが印象的でした。塾を通してコミュニティを形成したい、子どもを塾という機関でなくコミュニティの中で育てたいという気持ちが伝わってくる話でした。
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