河野(以下──) 今回は、愛媛県新居浜市で進学塾を経営されている神野先生です。
早速ですが、もともと神戸で独立された塾も順調だったのに、こちらに帰ってきた理由は何かあったのでしょうか?
神野 単純に親の問題ですね。高齢になってきたということと、長男ということで帰ることにしました。
── じゃ、私が帰って来た理由と同じですね。(笑)で、今は新居浜で塾をされてますが神戸と比べて何か違う所、感じる所とかありますか?
神野 まず思ったのは、子どもの数が減ったな、ということですね。私が子どもだった時代と比べると半分になりました。後は、高校の偏差値ですね。私の母校を全国模試の偏差値でみると56になっているのですが、神戸の進学校ですと68とかあるんですね。何でこんなに差があるのか?と。実際、大学実績をみると、そこまで大きな違いがあると思わないんですが、少なくとも「入学しやすくなっている」ことは事実で、そこは、非常にびっくりしましたね。
── 県立高校の競争率は、今年ついに1倍を切りましたしね。少子化が学力に及ぼす影響は無視出来ないですね。
神野 確かにそうですね。ただ私が感じているのは、優秀な生徒というのは、田舎でも都会でも関係なくいるものです。
問題は、都会だと教育サービスのレベルも高いところが多いですし、何より選択肢が多くあります。一方、田舎ですと、それが限られてしまいます。そこをどうにかしたいという気持ちは、強いですね。
── すると塾のコンセプトとしては、田舎で都会並みの教育サービスを、ということでしょうか?
神野 そうですね。一言だとそうなりますね。
── すると、何を持って都会並みと言うのか、その実態に迫りたいのですが。
神野 う〜ん、ここは非常に説明が難しいのですが、田舎の個人塾になると、例えば模試がないとか面談が少ないとか、学習報告書や塾通信がないとか、そんな塾も多いようですが、私の塾は、まずそれらは、「当たり前」としてきちんとやっています。もう1つは、勉強の型を作るということですね。ここは、非常に気を使う部分です。
ともかく勉強は量だと考えていますので、それをこなすために宿題や授業前の小テストも含め、神野進学では勉強をこうやるんや!ということを徹底して指導します。
── 確かに個人塾の多くは、教えることに特化し過ぎて、生徒の成績の「チェック」「管理」は甘くなる傾向はありますね。また教育「サービス」という考え方は少ないので、保護者へのサービスなども少ない感じはしますね。
神野 本来、塾の仕事としてするべきことを、きちんとすること、つまり当たり前のことだと思うんですけどね。
※神野先生は、私からすると先輩格にあたる先生です。神戸という激戦区でも200名以上の生徒を集めていたことからも、その実力が分かります。神野先生は、職人肌で教えることの好きなタイプの先生ですが(実際、授業は、先生と奥様だけで回しています。)それだけで終わらず、塾をサービス業とも捉えているところが素晴らしいところです。
── 先生は、よく「新居浜」にしか興味ないとおっしゃいますよね。
神野 新居浜にしか興味ないですね。(笑)ですから、他地区に塾を出そうとも思いませんし、もっと言えば新居浜でも多店舗をしようとは思いませんね。
── なんででしょうね。それだけ実力がおありなら、多店舗も余裕だと思うのですが?
神野 いえいえ。ただ故郷ということが一番だと思います。正直、新居浜の子だけが賢くなればいいくらい思ってますよ。
本当、新居浜の学力を上げたい!ということだけですね。
── 新居浜の学力を上げると言っても、多店舗もしないとなると教えられる生徒数には限りが出てきますが・・・
神野 そうですね。(笑)どちらかと言えば、保護者の意識を変えたいというのが正確かも知れませんね。
子どもの能力は、田舎も都会も関係ないのですが、チャンスをどうするかは、保護者の力が大きいですから。だから、実は色々なイベントも実施しています。はっきり言って、それらのイベントには神野進学の名前が出なくてもいいんですよ。少なくとも、保護者の方が何かしら情報に接してくれて、色々と子どもの教育について考えてくれれば。
── つまりは影響力ということですね?
神野 そうですね、そういう言い方も出来ますね。
── イベントも大事ですが、神野進学では、どのように成績を上げるために指導を行っていますか?
神野 勉強は、量だと思うんですね。私が司法試験に失敗したということは、河野先生は、ご存知でしょうが実は、その話も生徒や保護者にはします。そこで、何で失敗したのか?その理由も話しをします。
結局は、量をこなしてなかった。好きなことしかしなかった。毎日継続してしなかったと。よって塾ではそれらの経験を踏まえた上で、子どもたちには、私のような失敗をしてもらいたくないので、量をやらせますし、宿題のチェックも厳しいですし、ともかくさぼらせないですね。また、以前、河野先生が個人塾は、サブテキストを使わないところが多いとおっしゃってましたが、うちでは、各教科2冊使います。
それでも1日にすると1頁くらいのものでしょ?本当ならテキスト3冊は渡したいくらいです。それと指導教科も、多くの個人塾ですと2科目なのですが、うちは5科目指導します。そのため、結構、シンドイ塾になっていますが、ともかく量が必要なので、そうなってます。
── なるほどですね。
神野 結局、勉強は、好き嫌いに関係なくやるものだと認識させることが大事だと思っています。
── 先生の塾では、結構、勉強の意義とかその辺りも生徒にお話しますよね?
神野 よく言うのは、「頼られる人」になれ!ということですね。何のために勉強するかというともちろん自分の幸せのためということもあるのでしょうが、最終的に、人から必要とされる人にならないと本当の意味での幸せは、ありません。これは、結構しつこく話しをしますね。
── もう1つ付け加えるとすると、勉強することで社会変動出来るということもありますね。
神野 確かにそうですね。スポーツなどでも一流になれる人は、それが出来るかも知れませんがほんの一握りです。しかし普通の人でも勉強することで変わります。以前の塾の塾長は、よく勉強はマスター・キーだと話しをしていました。将来に続くどんな扉でも開けることの出来るマスター・キーそれを手に入れることが勉強であると。私は、100%その意見に賛成ですね。
── 本日は、どうもありがとうございました。
神野 ありがとうございました。
※今回は、教育について熱く語って頂きました。個人塾の原点は、私は情熱だと考えています。神野先生も「職人は、情熱がある。」という言い方をされてましたが、塾がビジネス化していく現在、あえて職人として地元に一石を投じたいという心意気が伝わってきたインタビューでした。
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