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2010/5 塾ジャーナルより一部抜粋

学習塾の費用はどうなる!?
混迷する教育費から見えてくるもの

  文部科学省発表 平成20年度「子どもの学習費調査」より  
     
どん底と呼ばれるラインを下方修正したほどの不況、回復の兆しも見えぬ日本経済…一般家庭を直撃しているこの状況は、聖域と呼ばれた教育費すら、削減に追い込んでいる。今回、文部科学省が発表した、平成20年度『子どもの学習費調査』から見えてくる現在の学習費の内訳と状況をもとに、教育界が抱える問題とその解決策を模索しよう

私立小学生が最も高額!
受験年度の学校外学習費比較

 平成20年度の中学生の年間学習費の総額(※表1参照)は公立で約48万円、私立約123万6千円。私立は前回(平成18年度)発表より下がったものの、増減率としては少なく、家庭での教育費の重要性は、決して衰えていないことが表されている。この総額の中で、大きく存在を占める学校教育費(授業料・教材費・修学旅行費・納付金など)においては、私立中は公立中の約7倍の費用がかかっている。一方、学校外活動費(学習塾・家庭教師・通信教育・教育補助書籍〔参考書や問題集、ハードを含むネット活用費など〕を含む補助学習費および学童やスポーツクラブ・芸術文化活動などのその他の活動費の総計)は、公私共にほぼ同じ金額がかかっている。同じ公私比較でも、小学校ではこの学校外活動費に格段の差がある。また、高校の公私比較では学校教育費は約2倍だが、今後、高校の無償化が実現すれば、差はさらに大きく開くことになる。

 では、学校外活動費を詳しく見てみよう。前述の塾や家庭教師などを代表とする補助学習費は、スポーツクラブや芸術活動などの他の活動に比べて、どれほどの差があるだろうか。この図(※図1参照)の通り、小学4年までは補助学習費をその他の活動費がわずかに上回っているが、5年生に進級すると途端に逆転、しかも大きく差が開いてくる。この差は中学・高校でさらに大きく広がり、縮まることはない。

 また、補助学習費は入学年度となる中学1年と高校1年次にいったん大きく下がり、2、3年になってから、再度上昇を始める。だが、補助学習費自体は小学6年の約35万円がピークで、中学・高校ではそれ以上盛り返すことはない。これを見ても、中学受験が全国的にどれほど過熱気味にあるかがわかる。中でも、難関国公立・私立中学を受験する私立小学生の多くが、2つ以上の塾や高額な個別指導、家庭教師などを利用していることも要因のひとつと言えるだろう。

 中学から高校への受験時の費用は約28万円であり、小学6年の中学受験時費用を上回らないのは、中高一貫制の私立校の生徒が増えたことが、大きく関係していると予想される。同じ受験期でも、大学受験を控えた高校生の場合は、推薦入学や既卒生の受験費用を含んでいないなどの理由で、中学受験ほどの大きな伸びは見せていない。一方、その他の活動費においては、多くの家庭で「小学校まで」の習い事や、学童(民間学童は6年制有)の費用がかかる、スポーツクラブを中学入学後はクラブ活動へ乗り換える…などが、中学入学と同時に約3分の2まで費用が激減する理由と思われる。ただし、中学3年間と高校3年間で、同じ学校に通っている間は、この項目の大きな変動はない。中学や高校進学の節目でやめなかった活動は、その次の節目となる上級校進学まで持続する生徒が多いと言うことだろう。

鍵は高校受験への姿勢
私学・公立比較で塾費用の逆転

 では、この学校外活動費の補助学習費の内訳はどうなっているのか。学年別補助学習費(※表2参照)では、家庭内学習費が小学4年〜高校3年まで公立1万〜2万円、私立2万〜4万円で推移しており、大きな変動はあまりないことを示している。家庭教師の費用は公立ではほぼ1万〜3万5千円で推移。私立では中学受験に重点を置くためか、小学6年次に8万円を超えるものの、その後は公立と似た推移を経ている。また、私立高校3年次は内部進学を控える生徒もいるためか、2〜3年でも大きな変化はない。

 さて、ここで特筆すべきが学習塾の費用である。小学校の間は公立10万9,712円、私立40万9,766円(ともに小学6年)と、約4倍の費用差があった。しかしその差は、中学進学と同時に逆転、さらに高校受験を控えた中学3年になると、公立中は28万1,520円、私立中15万7,078円と年間12万円以上の差額で、公立中の生徒のほうが高額になっているのだ。これはどういうことなのだろうか。

 これについて、学習塾自身の意見を聞いたところ、

 「公立中は一部を除いて、3年間の後に高校受験を控えているのに対し、私立中学の多くは中高一貫制を敷いています。ですから、いったん私立中に入った生徒は、中学3年でも時間のある大学進学を見据えた勉強をしています。そのため、この時期に高額な進学塾に行く人数が、私学は少なくなりますね」(神奈川)

 「この地域での私学はかなりしっかりとした指導方針を打ち出しており、目標の大学に入学するには、学校の勉強だけで充分という考え方が生徒や保護者に広がっています。反面、公立中学の生徒は、より良い大学へ進学するために、県内トップクラスの高校へ合格することを目指しています。そのため、トップ校の倍率は高く、その分、努力も人一倍必要になる。そういった理由から、高額な塾へ通う生徒が多いのでしょう」(香川)

 「公立小の生徒は、地域によって、進学先の公立中を決められています。そのため、私立中と異なり、生徒の学力差も大きい。その中で、自分の学力に不安な層が個別指導塾に流れる傾向が、公立中学1〜2年の通塾費の平均値を引き上げているのでしょう」(大阪)

 中学受験を終えた生徒の多くは、いったん塾をやめる者が多い。また個人塾では、高校生の指導に対応していない場合もあり、高校1年では公立・私学ともに10〜20万円と大きく学習塾費は下がる。だが、高校2年になると、私学が再度高額になる。

 この点については、「全国的に見ると、公立高校はどの県でも県内くまなく点在しているのに対して、私立高校は都市部に集中した配置になっています。そのため、生徒の大学進学指向も私立校のほうが高く、通塾率に差はなくとも、進学塾や個別指導などの高額な塾に通う生徒が私学には多い。それが再度の逆転につながっているのだと考えられます。ただし3年になると、私学では内部進学や指定校推薦枠などで、早目に進路を決定する生徒も増えてくるので、差が逆転しないまでも、かなり縮まるのでしょう」(神奈川)という意見を得た。

 今年度の中学生は、家庭内学習費、家庭教師費ともに、3学年総合の平均値が前年度を下回ったものの、学習塾費だけは公私ともに上昇。学校外の学習の場として、通塾を選ぶ家庭が、さらに増えていることを示している。

収入差は学習費の差にならない?
混迷する補助学習費

 全体で見た学習塾にかかる費用は前述の通りだが、生徒ひとりの費用負担はどのくらいで、そこにも中学の逆転減少は表れているのか。

 図(※図2・次ページ参照)の示す通り、公立中学生の通塾率は73%。その中で年間20〜40万円未満を使う生徒が43.4%と最も多い。また、年間で40万円以上を学習塾費として充てている生徒も13.4%、公立中学の4人にひとりは、月に約3万円以上の学習塾に通っている計算になる。

 一方、私立中学生の通塾率は54.9%。残りの45.1%、実に半数近くが塾へは通わずに学生生活を送っている。通塾生も年間20〜40万円未満は27.8%、40万円以上は9.4%と、公立に比べて低い。先の学習塾比の逆転は、この金額の差でもあると思われる。また、私立中学の生徒のほうが、全学年において、塾の時間に追われることのない生活を送っているということも読み取れるだろう。

 注目は、通塾率や補助学習費の差は家庭の年収の差に比例しないということである。折れ線(※図3参照)の動きに表れるように、年間収入が400〜999万円の家庭の間では、線がかなり入り混じって折れている。私立中学の線では、600万円未満の家庭が800万円未満の家庭を上回る補助学習費を支払っているのだ。また、公立中と私立中では、私立中の家庭が全体的に公立中の家庭より下回っているのだが、400万円未満の家庭のみ、そのラインはほぼ同じ。私立中の600〜799万円の家庭で、いったんラインは下向きになるが、大きく下がらないことからも、この10〜15万円ラインが、中学の補助学習費における最低限度であると言えるだろう。また、私立高校が1,000万円を超える収入世帯から大きく変動するのは、この世帯以上の家庭では、親が医者や弁護士などが多く、親の跡を継ぐために難関大学の医歯薬学部や法学部などを目指す生徒が、一段と増えるためと思われる。

 総括として、学校外の補助学習費は、私立小学・公立中学を除き、昨年度よりも下回っている。中学受験にかかる費用は、私学・公立問わず大きいが、今後、政府の計画にあがっている公立中学や高校の無償化が実現すれば、私立中学受験生は少なくなり、小6の補助学習費は下がるかも知れない。しかし、この無償化政策では政府の負担は増すばかり。ゆとり教育で下がった公立教育のレベル回復のための費用を出せるのかという不安が、保護者に浸透しているのも事実である。確かに家計は助かるが、それと子どもの教育を引き換えにする考えを持つ親がどれほどいるかが、今後の中学受験にかかる補助学習費の増減を決めるのは間違いない。

 日本経済も政策も行く末すべてが闇のままの現在、暗中模索の中から保護者や受験生たちの心をつかめるような努力を、私学・私塾がどれだけできるかが、今後の民間教育界の生き残りにかかっていると言っても過言ではないだろう。

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