作成の背景及び目的だが、昨年実施された公立学校における実態調査では、学校だけでは解決困難なケースが約1割発生していること、また、学校の初期対応に課題があり、要求を理不尽にさせていく事例が半数以上あることがわかった。そのため、学校の初期対応をはじめとする組織対応能力の向上が重要であり、保護者や地域と共に「相互協力」していく関係を築けるよう、教職員に啓発を図るためといったことが大きな目的である。
作成部数は約7万部。今年度中に全教職員へ配布予定。
主な内容は第1章:教員の苦情の捉え方の特徴。第2章:学校が行う保護者等へのより良い対応。その他第5章まである。今回は第2章の一部を抜粋し、掲載した。
同手引きには、興味ある内容が多く記載されており、必見である。
大切な初期対応
〜無理難題ととらえるか? 連携の第一歩にするのか?〜
●初期対応の心構え
学校には、毎日のように保護者や地域の方から、電話や連絡帳、来校などにより、多種多様な情報が寄せられます。その中には、素朴な質問や相談、学校に対する不安や不満、要望や苦情…などがあります。
保護者や地域の方のどんな声であっても、こちらの接し方によって、その後の流れが、良くも悪くも決まってしまうことが多くあります。
より良い対応を行うためには、先入観で相手を見たり、勝手に決め付けたりすることなく、そのときの保護者や地域の方の声に耳を傾け、その背景にある事情や心理を把握することが大切になります。
素朴な質問や相談であっても、こちらの対応が不適切なものだったり、誤解されかねないものだったりすると、学校に対する不満や不信感が生じ、無理難題や過剰な要求に発展することがあります。
逆に、最初は不満や苦情であったのに、よく聴いて丁寧に対応していくうちに、お互いの誤解が解け、相互理解が深まり、学校の強力な味方になってくれることさえあります。これも本来は学校も家庭も、子どものためという同じ目標を共有している仲なのですから、決して不思議なことではありません。
教員の職務は※感情労働のひとつとも言われます。まずは、気持ちを聴き取ろうという姿勢がとても大切なことです。
(東京都教育委員会の「学校問題解決のための手引き」より一部抜粋)
※「感情労働(Emotional Labour)」とは、アメリカの社会学者ホックシールド(Hochschild,A.R.)が、著書“The Managed Heart”(1983年)で示した概念。航空機の客室乗務員やホテルなどの接客業、医師や看護師、弁護士など、身体や知識だけでなく感情の移入を必要とする労働のこと。
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