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中学・高校受験:学びネット

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2010/3 塾ジャーナルより一部抜粋

塾長から作家へ転身

― 後藤 武士氏インタビュー ―

後藤武士氏プロフィール
1967年 岐阜県生まれ。青山学院大学法学部卒。日本全国授業ライブ(GTP)主宰として、北海道から沖縄・石垣島まで、児童、生徒、父母、講師、教師、会社員などを対象に講演。また、新進気鋭の若手教育評論家、最強教育指南としても活躍。

仕掛けで売るベストセラー 中身で勝負のロングセラー
塾にも通じる生き残り戦術

あるスポーツがメジャー性を持っているかどうかは、競技人口に比例する。受験を競技に喩えるなら、塾業界ほど競技人口が多い業界はそうはない。間違いなく日本の教育水準の底上げに貢献してきたことは自負していいと後藤武士氏は言う。元カリスマ塾講師の肩書を持つ後藤流生き残り塾の戦術とは。1月号新春インタビューに続く第2弾。「読むだけですっきりわかる塾長プロ論」。

苦手は捨て去り 得意を生かす道へ

 50万部ベストセラー「読むだけですっきりわかる日本史」の著者、後藤武士氏は、青山学院大学在学中にアルバイトで始めた塾の仕事にすっかり魅せられた一人だ。その後も、子どもの成長を実感できる塾講師の仕事を選び、2008年までの17年間、塾経営を続けてきた。

 途中、2003年に作家デビューしたが、最後の塾生を送り出すまで、塾と作家を兼業する律義な面も。一時は愛知と岐阜で3教室を展開、約300人の塾生を擁しながら、作家への転身を決意してからは、実に3年計画で事業を縮小、閉塾した。

 すでに安定の域に達していた経営をみすみす手放したのはなぜか。その問いに、後藤氏の意外な答えが返ってきた。「ぼくは教務に関してはバケモノだけど、生徒募集がすさまじく苦手でしたね。商売魂を出してはいけないような気がして」と。

 「塾の客観的評価は生徒数で決まる」。そう考えていた後藤氏は、苦手な生徒募集で苦労するより、自信のある教務面を生かす術として、書くことを選んだ。それまでの経験を生かし、著作というツールを介してわかる授業、おもしろい授業を目指したのだ。

 一方で、今も授業ライブや講演会活動で全国を駆け巡る後藤氏は、パフォーマーに徹して、得意な授業や子どもたちとナマでかかわる場を今も持ち続けている。

オン、オフ 際立つ仕事人

 さて、そんな後藤氏が講演や授業ライブで心がけていることがある。それは「ぼくが一番好かれたら、その講演(授業)は失敗」ということ。なぜなら、講演や授業ライブは、その日限りのイベントだからだと言う。聴衆(生徒)である子どもたちの面倒を後藤氏が最後まで見ることはできないし、また、保護者ともかかわり続けることはできない。

 「あくまでぼくという講師を通して、日々接する先生に、子どもたちの心が向くように話をすべき。聴衆しか沸かせられないようではダメで、聴衆と主催者の両方を満足させないと」とプロとしての自負を見せる。そう話す後藤氏も自らの塾時代をふり返ると、塾生と保護者に心配りが十分であったかどうか「勘違いしていたかも」と打ち明ける。

 作家業に転じてから、自分の中により明確な「プロ論」を持つようになった。作家であれ、塾人であれ、目的はその仕事を通して報酬を得ることだ。その額は少ないより多いほうがいい。つまり、究極的には「稼ぐ」に尽きる。その代わり、仕事に対するいい加減さを自分の中から徹底的に排除する。それが後藤氏の「プロ論」だ。

 講演会で受ける質問には2種類ある。真剣に答えを求めている人と、早く楽になりたくて、すぐに答えを知りたがる人だ。前者は質問した時点で、9割方答えを自分で見つけているが、あと一歩のところでピンポイントの質問をしてくる。後者は成功するにはどうしたらいいかなどと漠然と質問を投げてくる。それを後藤氏は「質問以前の姿勢」と呼ぶ。真剣に答えを求め、悩んだ人だけが、その仕事の、その人なりの「プロ論」にたどり着けるようである。

 仕事にこだわりを見せる分、後藤氏は仕事モードのオン、オフの状態が、実に際立っていると言う。「講演会場に入る前なんて、ただのオッサンですからね。終わって、会場から出てきてもドヨ〜ンとなってます」と。ただし、いったんスイッチが入るとオーラを生むタイプ。

ベストセラーの売り方 ロングセラーの売れ方

 後藤氏のもとには、本を書きたいという相談を持ちかける塾人が少なくない。だが、後藤氏はあまり勧めてはいない。その理由は実入りが少なく、安定性がないこと、おごりが身に付いて、人が離れていくこと、10年前なら売りに直結した「著者」の肩書は、今では必ずしも売りにはならない、などだ。

 それよりも、もっと簡単に塾人がクリエーターとなり、かつ売りに結びつく方法があると言う。それは、自分自身の授業をDVDなどに収録しておくこと、自身の板書を写して保存しておくこと、教務ノウハウを生かし、メソッドタイプの参考書を書くことなどだ。運が良ければ「〜式」「〜スタイル」として、オリジナリティーを出して商品化することもできるだろうし、そうでなくても自己の反省用、講師の研修用にも利用できる。日々蓄積しているものの強みを生かし、利用範囲を広げる方法で、売りに結びつける。そんなやり方が手堅く有効ではとアドバイスする。

 今も塾人との交流が絶えない後藤氏が、最近感じたこと。それは塾業界に身を置きながら、他業界に憧れや興味を抱く人が、あまりに多いのではないかということだ。何にでも興味を抱くことはいいが、他業界、他業種の先進例、成功例を参考にしようとしたり、応用したりすることは「ちょっと違うのではないか」と釘を刺す。つまるところ、商圏1qの業種がワールド・ワイドな世界を見て、参考になるだろうかと言うのだ。高額なセミナー料を払っても得るものが少ない気がすると疑問を呈する。

 変化が激しい時代に一つの方法、一つの理論を正解と呼ぶには難しい。大きな流れができれば、絶えず揺り戻しが起こる時代だ。受験制度は年々刻々と変わり、保護者の世代間ギャップも数年単位で顕著になる。募集にばかり気がそがれていると、いつの間にか退塾率を高めてしまうことにもなりかねない。変化に敏感でなければならないが、軸がぶれないようにするにはどうしたらいいか。

 後藤氏はベストセラー作品の売り方と、ロングセラー作品の売れ方にヒントがあるのではと言う。ベストセラーは、その多くが仕掛けで認知させて売る。マスコミやパブリシティーなどを使って一気に売るが、作品に魅力がなければ長続きはしない。ロングセラーは中身で勝負できる作品だけに、時代を超えて読み継がれる。

 何かを売るには、まず認知が必要。勝負できる中身を持っていても、認知のための仕掛けがなければ、変化の激しい時代、気付かれることなく流されていく。

 もっとも、仕掛けだけで乗り切ろうとすれば、信用を得ることなくやはり流される。塾もときにはベストセラーであり、そしてときにはロングセラーであり続けてほしいと。

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