サイト内検索:
 
中学・高校受験:学びネット

 学びネットは、中学、高校受験のための情報ページです。学校紹介や塾経営にお役立て下さい。

今月号の紹介 学校散策 塾長のためのマンスリースケジュール 購読案内 会社案内
特集・スペシャル
   
2010/1 塾ジャーナルより一部抜粋

「高校無償化」のねらい
私学関係者らの要望・質問が噴出

  学びリンク株式会社‘09秋の教育セミナー
2009年10月19日(月) /  於 アルカディア市ヶ谷
 
     

高井美穂先生プロフィール

 1971年徳島県生まれ。早稲田大学第一文学部英文科卒業。会社員を経て、2003年衆議院選挙初当選。2009年8月30日の第45回衆議院議員選挙では、徳島2区で当選。現在3期目。鳩山内閣で文部科学大臣、副大臣とともに文部科学省の「政務三役会議」の一翼を担う。

 鳩山政権の成立により、民主党がマニフェストで打ち出した「高校無償化」が来年度から実現されようとしている。「公立志向に一層拍車がかかるのではないか」「私学助成が削られるのではないか」……そうした不安がささやかれる中、私学高等学校関係者を対象にした教育セミナー『「高校無償化」の狙いと制度概要』(学びリンク株式会社主催)が、高井美穂氏(文部科学大臣政務官、衆議院議員)を招き、10月19日(月)、東京・アルカディア市ヶ谷で開催された。講演の後の質疑応答では、私学関係者からの要望・質問も噴出。緊迫感漂うセミナーとなった。

高井美穂文部科学大臣政務官、
衆議院議員の講演

 鳩山政権が誕生の折、鳩山総理から文部科学大臣に指示書が届きました。その中で第一にあったのが、「高校を実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充するなど、教育にかかる国民の負担を軽減し、すべての意志のある人が教育を受けられる仕組みを構築する」というものでした。

 何より「教育・医療」といった、人が担うサービスを充実させていく。ハードよりソフトに重点を移し、しっかり日本の社会をつくっていくことが、我々の姿勢です。また、「戦争は人の心から生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなくてならない」と、教育でもって戦争をなくしていくという理念も持っています。

 国連の人権条約A規約の13条には、「種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む)は、すべての適当な方法により、特に無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること」とあります。この条項を留保しているのは、締約国のうち、いまやマダガスカルと日本だけです。

 ぜひ、この条項の留保撤回のためにも、この高校無償化法案を来年の4月1日に間に合うように国会で論議していきたいと考えています。

 私自身、小学1年と4歳の子どもが徳島におります。そこで1軒1軒家を回ってお話を聞いていると、家庭の教育力が子どもの将来に、本当に大きな影響を与えていることを感じます。世界で貧富の格差が一番大きいと言われているアメリカですら、就学前の子どもの貧困問題が、その後のどんな時期よりも影響を及ぼすという調査があり、貧困により教育を受けられないことが、いかに大きなダメージになるか知り、ヘッドスタートという貧困児童への支援を始めました。日本国にとっても大事な課題だと思っています。

 ご存じの通り、中学生の98%が高校に進学しております。高校を義務化はしないまでも、すべての子どもたちにできる限り無償で教育の機会を与えることが、今必要になっているのではないかと選挙を通じて感じました。

私学経常費助成は4億円増

 マニフェストでは公立高校を実質無償化、私立高校生の学費負担の軽減を謳っておりますが、具体策としては、公立高校生のいる世帯に対し、授業料相当額(全日制では11万8,800円以内、低所得世帯には23万7,600円以内。定時制の金額は年3万2,400円、通信制は年6,200円)を助成すること。私立高校生のいる世帯に対しては年額12 万円(低所得世帯には上限24万円)の助成を行うことにしています。

 それらのための予算(高等学校等就学支援金)として4,501億円。従来の奨学金に加え、入学時に必要な経費などを対象とする就学支援策(収入350万円以下の世帯の生徒が対象)を付加的に行うためには123億円の予算を考えています。

 これまで都道府県が行ってきた私立高等学校等経常費助成費等補助が削減されるのではないかという私学からの心配の声も聞いておりますが、経常費助成は維持するとともに授業料減免補助を引き続き実施できるよう、4億円増の1,043億円で概算要求をあげています。

 また、これらは事務費も含めて、全額国が負担すると考えていただいていいと思います。当初はできるだけ本人に受給するとしておりましたが、定額給付金を思い出していただければわかる通り、事務費が相当掛かります。実際、それが教育費に使われないかもしれない懸念も残ります。

 よって、世帯(または高校生本人)に受給権を付与し、それを学校設置者に申請してもらい、学校が助成金を代理受給できるスキームを考えております。

 また、私学に通う年収500万円以下の世帯には、上限24万円まで助成する方向で検討していますが、幼稚園の就園奨励費補助などと同様に、年収により段階的に金額を設定していく。そういうスキームになる可能性があると思います。

 対象となる学校ですが、高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、高等専門学校の1〜3学年、専修学校・各種学校の高校相当課程と、大きく5つを考えています。

 各種学校をどこまで認めていくのかは、細かい点はこれからですが、ある程度きちんと後期中等教育をしていると思われる学校を対象にしていきたいと考えているところです。

教員の養成課程にメスを入れる

 第二段階の方向性としては、教員の質の向上や数の増加について検討していきたいと思っています。民主党は教員養成課程を6年制にするのではないかという話がありますが、まだ検討中でございます。

 子どもたちに直接かかわる教師が研修を受けて、スキルを上げていくこと自体は歓迎することです。しかし、安倍総理の時代に出された免許更新制度は、不適格教員を排除しようということと、教師の質を上げていこうという2つの目的が混在していたように思います。

 我々としては、まず養成課程をきちっと充実させていくことが必要ではないかと第一に考えています。例えば、教育実習は1年間にし、本免許の前に長期の現場経験ができることも考えていきながら、教員の質を向上させることも一案かと思っています。

 このように免許更新制度は変えたいと思ってはおりますが、今取得した免許は決して無駄にはなりません。さらに研修を受け、資格を取得した方がグレードアップできるように学校経営や教科指導、進路指導などの専門資格を付け加えることも一つの案として考えています。

 今回、全体の予算が大変厳しい中、政府として少なくても3兆円くらいはカットしていくという方向が出されました。国債の発行は、将来子どもたちに負担をかけることになりますが、ここで教育予算を削ることになっては、どちらを優先するのかわからなくなりますので、まず、教育を第一の命題にしました。大学の奨学金なども含めて、なんとか予算を守っていきたいと考えています。

 高校無償化により、生徒が私学から公立へと流れていくのではないか、という私学からの懸念の声もありました。公私間格差を広げることが、この政策の意図ではありません。私学には公立と同額の助成金を支給したいと思っております。

 私学ではそれぞれ建学の精神があり、さまざまな授業をなさっています。そうした中で授業料の設定も多様です。我々は最低限の金額ベースをキープし、先ほど申し上げた授業料減免補助に加えて、就学支援金も増額していくことにより、できるだけ公私間格差を是正していきたいと考えているところですので、何とぞご理解をしていただければと思っております。

講演後の質疑応答から

 通信制や定時制の生徒で、在籍はしているものの実態のない生徒の確認はどう考えていますか。

高井 在籍確認の問題まで調査ができていませんが、実際には通学していない生徒が学校に受給権を申請することは恐らくないのではと考えています。別の課題として、そうした生徒をどのようにして学校に来させるかという問題に取り組む必要があると思います。

 私学にとっては、4月に助成金が給付されるのでは遅いと思います。その点についてはいかがでしょうか。

高井 月々になるか、四半期に一度になるかも含め、支給時期については検討中ですが、代理立替は負担が大きいので、そうならないようにしたいと思います。

 フリースクールを運営しており、学校法人ではありません。しかし、高卒公認試験に合格した生徒もおり、大学のAO試験にも合格しています。高校3年間に匹敵する教育をしていると自負しておりますが、私たちのような存在はどのように位置付けされるのでしょうか。

高井 いろいろなタイプの教育があることを理解した上で、高等学校に値する各種学校、ある程度の基準を満たし、成果を挙げているところを対象とするように検討していきたいと考えています。

 通信制の助成額は年6,200円と聞きました。しかし、私学の通信制にはさまざまなタイプがあり、我々の年間授業料は20万円を超えています。12万円という数字が一人歩きをし、保護者はそれくらい助成されると期待する方が多いと思います。その点についてはいかがですか。

高井 通信制を6,200円としたのは、概算要求の中で、公立の標準額として出したものです。私学の通信制については公立の全日制と同額の12万円にしたいと考えております。全日制私学と同じように低所得者は上限24万円まで助成できるようにし、その他の負担についても、通信制だけに特別な負担がかかることがないようにしたいと思います。

 学校経由で助成金の代理受領できるようにするということですが、低所得世帯を特定する方法として、実際には何をもって所得を証明するのでしょうか。生徒が所得証明できるものを学校に提出し、それを集めて学校が査定するとなると、1、2回の回収では済まないと思います。また、都立でも成績のいい子の世帯は年収が高く、授業料をそれほど負担に感じていないのではないでしょうか。授業料以外にも私学は入学金や設備費がかかるので、もっと私学に力を入れていただきたいのですが…。

高井 24万円の免除を受給する場合には、所得証明を提出していただく必要がありますし、現在の私立高校の授業料減免や幼稚園などでも同様の制度がありますので、その点は学校側にご負担があると思いますが、ご了承いただければと思います。また、公立学校に行っている生徒の家庭でも苦しい家庭は増えています。公立、私立それぞれに行きたくても行けない、さまざまな事情を抱えた家庭があります。私学は上限24万円まで助成金が出、引き続き授業料減免補助が行えるような仕組みを作って、ならしていきたいと思っております。

 現在、高校における公立と私立の割合は7:3。私には民主党は「高校の70%はタダ、30%は有料」というように日本の高校像を捉えているように思えます。不安感を持つ私学関係者が多い中、「私学には建学の精神がある。スピリットで頑張ってね」とおっしゃっているようにしか聞こえません。大学経営にはセーフティーネットがありますが、高校にはありません。国として、理想の割合が6:4であるとか8:2であるとか、そういう考えが政権の中でディスカッションされる余地があるのでしょうか。

高井 私はぜひ私学の皆さんにご理解いただきたいのは、高校無償化は、所得の低い方が教育を受けられないということをなくしようという主旨の制度導入ということです。公立と私立の割合が8:2になってほしいとは思っておりません。私学にも同額の助成金を出すことで、一緒に頑張っていきたいと思っております。その点をよく理解していただき、皆さんの意見や要望も拝聴していきたいと考えています。

特集一覧

 

 
  ページの先頭へ戻る
manavinet」運営 / 「塾ジャーナル」 編集・発行
株式会社ルックデータ出版
TEL: 06-4790-8630 / E-mail:info@manavinet.com
Copyright© 2004-2003 manavinet. all rights reserved.