今回は、準1級・2級・準2級の2次:数理技能検定から、数学が社会でどのように活用され、役に立っているかを受検者に伝えるための問題を取り上げました。
準2級は、視力検査で用いられるランドルト環を扱った問題です。立った位置を決めて視力表を見たときのランドルト環の大きさと視力との関係は、表から反比例であることがわかります。また、ランドルト環の大きさを変えずに,立つ位置を変えて見たときの,距離と視力との関係は比例です。ここでは比例・反比例が同じ場面で同時に現れ、密接な関係があることが分かります。
2級は、臭気指数に関する問題です。人間の感覚は,刺激が10倍になっても実際に感じる感覚は2倍に,刺激が100倍になっても3倍にしかならないといわれています。刺激の大きさとそれに対する反応を、そのまま10、100、1000という数値を用いてグラフ化すると、プロットした2点間の距離が大きくなり過ぎます。しかし、10、100、1000という数値も(常用)対数を用いれば、1、2、3という小さな値で扱え、また、人間の感覚と一致するのでとても便利です。
準1級はロボット工学に関する問題です。行列を用いると様々な移動を簡潔に表すことができます。この問題では、実際にロボット工学で,ロボットの運動(アームの回転運動や並進運動)を計算するために行列が用いられていることを示しています。このような基本的な計算がロボットの運動を支えています。
今回取り上げた問題は、どれも正しく解けるかどうかをみることだけが目的でなく、数学の有用性を受検者に伝えることも目的にしていますので、説明するために問題文が長くなっています。準2級は必須問題、2級と準1級は選択問題として出題しました。
「数検」ではこのような問題を出題することにより、より多くの人たちに数学の有用性を知ってもらいたいと考えています。 |