「見掛け」を目立たせる
ところで、ここでいう「目立つ」には2つの意味があります。すぐにおわかりのように、1つは「見掛け」で目立つこと、もう1つは記載された「内容」で目立つこと。
見掛けからいくと、各家庭には毎日、スーパーや不動産や電器量販店をはじめとする多種多様なお店が送り出す、たくさんのチラシが折り込まれてきます。週末ともなれば30枚以上なんてことも珍しくないのではないでしょうか。
塾のチラシも当然、その中に混じって折り込まれてくるわけですから、とにもかくにも目を引いて消費者の目に留まらなければなんともなりません。
では、どうすれば見掛けで目立つことができるのか。
4点だけ、お勧めしておきましょう。
- 色を工夫する
- 形、大きさを工夫する
- 紙質を工夫する
- スッキリした紙面にする
見掛けが目立つか否かは、ちょっと理屈っぽく言えば、優れて相対的なものです。つまりは、一緒に折り込まれた他の多くのチラシと違っていなければならない。色にしても形・大きさにしても紙の質にしても、他のチラシと違っていればいるほど目立つ。それが道理でしょう。
ならば、他のチラシが使っているような色はできる限り使わない、カラーチラシが多いようならモノクロにする、逆にモノクロが多いようなら派手なカラーにする、他がB4判を使うならB3判にする、A4判にする、思い切ってB2判にする、よく利用される60s前後のコート紙やマット紙はやめて110kgの厚いアート紙や中厚口の上質紙を使う、わざとザラ紙を使う。他のチラシと異なること、文字通り「異彩を放つ」ことを優先順位の一番に据えれば、工夫の仕方はいろいろとあるはずです。
ここで特に留意すべきは、これまでの「常識」に囚われないことでしょう。常識から外れれば、場合によっては消費者の顰蹙(ひんしゅく)を買うこともあるかもしれません。が、わたしが知る限り、それが災いして失速した塾はほとんどありません。例えばかつて、丸い形をした厚紙のチラシ、真ん中に穴のあいたチラシ、真っ黒な紙面に白ヌキで教師が指し棒を持って立つ図柄だけのチラシなどなど、どう考えても異様なチラシを折り込んだ塾もありました。どれも今、地域でトップを争う塾にのし上がっています。多少の顰蹙は買っても目立ったほうが得、という好例といってよいのではないでしょうか。
ギッシリよりスッキリ
スッキリした紙面は、別の視点からの「見掛けで目立つ」ための大きな要素でしょう。
折り込みチラシには、それを、
- 塾の内容をしっかり知っていただくための材料と考える
- 問い合わせ電話やHP閲覧に結びつけるための材料と考える
という2つの考え方があります。
どちらが正しくどちらが誤っていると申し上げるつもりはありません。ただ、前者ならば塾の事業内容その他を事細かに、ていねいに書き込まなければなりません。必然的に、文字は小さく文章はギッシリ。勢い、読みにくくなります。
一方、後者はというと、消費者の興味を惹くと思われるキャッチをいくつか書き込むだけで十分です。文字は大きく、読みやすい。
「見掛けで目立つ」を優先させるなら、どちらが適しているかはいうまでもないでしょう。前者はわざわざ手にとって読んでもらわなければなりませんが、後者は文字が目に飛び込んでくる。
わたしならもちろん後者を選びます。チラシは目立って初めて意味を持つというのが第一の理由ですが、同時に、塾はコンサルティング・セールスの典型みたいなもので、なんとしてでも顧客を目の前に引っ張ってきて、話し合ったのちに入塾を決めていただくのが本来ではないかとも考えているからです。いずれにしても、ここは細部を捨ててスッキリしたチラシを作ったほうが得策と申し上げておきましょう。
「内容面」で目立つには…
「内容面で目立つ」に入っていきましょう。
問題はどういう内容ならば「目立つ」かですが、わたしは成績向上、上級校合格、成績上位層の在籍等々「成績」に関することがらか、あるいは居心地のよさ、職員の心配りなどの「ホスピタリティの充実度」以外に、消費者の関心を惹く内容、換言すれば「目立つ」内容は存在しないと思っています。理由をデータで示すことはできません。これまでの経験則と申し上げてご容赦を願うことにしましょう。
少し寄り道させていただくことにします。
本誌本年1月号「塾長のためのマンスリー・スケジュール」で申し上げたことをご記憶の方もいらっしゃるでしょうが、もともとわたしは、塾の集客は一般に、公式(1)で表されると考えています。
公式(1)
N=S×(HH×HS)×(AQ×AS×AI)
Nは集客数
Sは成績向上に関する地域の評価
HHはハード部分のホスピタリティに関する地域の評価
HSはソフト部分のホスピタリティに関する地域の評価
AQは広告の量
ASは広告の種類
AIは広告のインパクト
変数SからAIの変動の範囲は0より大きく、地域の平均値は1
塾の集客公式
一口で申し上げると集客数は、成績向上に関する地域の評価(S)と、ホスピタリティに関する地域の評価(HH/HS)と、広告の総量(AQ/AS/AI)との掛け算で決まってくるという考え方です。
厳密にいえば、この他にも料金や立地(商圏内人口)なども変数として加えたいところです。しかし、安ければ安いほど客が集まるというわけでもありませんし、立地も一義的に数字で捉えることはなかなかに困難ですので、ひとまずおくことにしています。
個々の変数についてもう少し説明しておきましょう。
Sは、成績が上がる塾だという評価があるかどうか、あるいは成績のよい子が通っている塾だという評価があるかどうかで数値の高低が決まってきます。通塾しても成績は上がらない、合格もしない、成績上位層はほとんど通っていないという評判の塾は当然評点1未満です。
反対に、通えば必ず成績が上がる、トップ校への合格者がたくさん出ている、エリア内の学校の上位10番以内がほとんどが通っているという評判のある塾はもちろん1以上。
HHはハード部分のホスピタリティ、要するに建物の大きさや外観、設備・備品に関する地域の評価のことです。奇麗でカッコよく居住性のいい塾のほうが、狭苦しい今にも倒れそうな塾よりも客が集まるに決まっている、と申し上げればおわかりいただけるでしょう。これも地域の平均評点を1とみて、倒れそうな塾は1未満、カッコいいほうは1以上です。
HSはソフト面でのホスピタリティ、いわゆる面倒見に関する地域の評価の高低です。授業内外での子どもたちへの気配りや保護者への対応等々、ハード面以外のホスピタリティの一切が含まれるとお考えください。教師の人気なんてのもここに入ります。
A関係の3つは広告の量、種類、個々の広告物のインパクトの強さで、これは消費者に届く広告の総量を指しています。総量が多ければ多いほど消費者の頭の中にはその塾の印象が深く刻み付けられていくわけですから、いざというとき思い出していただける確率は高くなる。したがって、地域の競合と比較して総量が多いほど評点が高いことになります。
「成績」言及が一番
この考え方が正しいか否か、確証はありません。しかし、もともと集客数はこれで決まると考えていますから、内容面で目立たせるためには「成績」に関することがらか、「ホスピタリティの充実度」を前面に押し出すよりほかに、わたしには妙案は浮かんでこないわけです。
では、そのどちらを優先させるか。
躊躇することなく「成績」を選びます。
近くに2つの病院があったとしましょう。1つは威張り散らすけれどもスゴ腕と評判の名医がいる。もう1つには愛想はいいけれどヤブの部類に入るボンクラ医者がいる。
皆さんならどちらを選びますか。医療ミスの危険を覚悟で居心地のよい病院にするか。それとも、多少気分を害することはあっても、治してもらえる病院にするか。
少々極端なたとえですが、塾も似たようなものじゃないでしょうか。
異論はあるでしょうがわたしは、塾にお子さんを送り出す保護者の99%は成績向上や上級校合格に足る学力の育成を期待していると思っています。
もちろん躾や人格的な教育を期待している保護者もいるでしょうが、それらはあくまで二義的な目的であって、もしそれが本来の目的なら剣道場やお寺さんに通わせるに決まっています。
「学習塾」に送り出す保護者は「学習」を目的にしている、であるならば当然保護者の興味関心の第一は「学習」「成績」にあるはずであり、したがって「学習」「成績」に関する内容に言及したチラシがもっとも「目立つ」。わたしが考える理屈はこういう単純なものです。
とはいうものの、成績や学習はただただガンガンやれば伸びるというものでもありません。心理的にもまた物理的にも良好な環境のほうがはるかに効率がよい。保護者もまたそのことを重々承知していますから、「成績向上」や「上級校合格」への評価にたいした相違がみられない場合には文句なく、ホスピタリティの評価が高いほうを選択します。さきに「成績」と並べて「ホスピタリティの充実度」を挙げた理由です。
いずれにしても、チラシを「内容面で目立たせる」ためにはまず「成績に関する事柄」を、それだけで足りなければ次に「ホスピタリティの充実度」を――これがわたしの結論です。 |