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中学・高校受験:学びネット

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2006/9 塾ジャーナルより一部抜粋

新会社法を学習塾でどう活かすか

  中小企業診断士 大咲 元延  

1 今、何故会社法が必要なのか

1.圧倒的に多い中小零細企業

政府の発表では、今の景気はいざなぎ景気を超えた期間になっているそうです。本当に世の中の景気が良いというのが、信じられません。それもそのはず、景気が良いのは、ほんの一部の大企業だけだからです。

日本の企業の約95%は、中小零細企業で占められています。それらはさまざまな規制があることで、大きく育てるというシステムは日本にはありませんでした。そのネックとなっていたのが、会社を設立する際の、資本金であり、取締役などの数でした。

今や日本でもITに関する仕事が盛んになり、個人で起業する人も増えてきました。しかしそれも上記の障壁で、個人事業の域を出ていないのが現状です。21世紀になりはや5年が経ちました。これからは、今までの経験や知識が役に立たない時代になってくるといわれています。その中では新しい起業家の出現が待たれているのです。そのためにも、新しい社会のシステムの一つとして、会社に関する法律の施行が必要となっていたのです。

2.実態に合わせることが必要

現在、法人の約40%が株式会社、そして55%が有限会社として稼働しています。しかしそのほとんどが、中小零細企業であるため、法律で決められたことが行われていないのが実態でした。例えば、株主総会を実施せず、議事録だけの作成をしている。名義のみの取締役や監査役で経営の実態を把握していないなどでした。

それもそのはず、資本金が1億円以下の会社、株式の譲渡制限をしている会社が、全国の株式会社のほとんどを占めていました。にもかかわらず、旧法はそれらの会社の実態に即しているとは言えないものだったのです。規定が厳しすぎて、これらの会社には適していなかったのです。

そこで、企業の規模にマッチした経済活性化システムが必要となってきたのです。そういったことを目的として新会社法が制定され、今年の5月1日に施行されたのです。

2 会社法って何?

1.会社法の10のポイント

新会社法の主なポイントとして、次のものをあげることができます。

  1. 有限会社がなくなる
  2. 取締役は1人でもよい
  3. 資本金の額を特に決めていない
  4. 合同会社を作ることができる
  5. 利益配分を何回でも行うことができる
  6. 会計参与を置くことができる
  7. 企業の再編が簡単にできるようになる
  8. さまざまな株式の発行が可能である
  9. 払込金保管証明書が不要となる
  10. 類似商号が使えるようになる

これらは今までにないほどの大改訂であり、誰でもがスグに会社を設立できるようになったのです。これを機会に会社を設立したり、現在の有限会社を株式会社にしたりするところが増加してくるでしょう。逆にいえば、今後も、個人事業で存続させることの意味がなくなってくるのかもしれません。

2.会社設立がカンタンになった

株式会社を設立するには、発起人、すなわち会社を作ろうとする人だけでできる「発起設立」という方法と、発起人以外から株主を募集する「募集設立」という方法があります。新法では、発起人が一人で済み、他の手続きも簡単にできるようになりました。ここでは「発起設立」の手続きを簡単にお話します。

  1. 発起人(会社設立者)が会社の商号、目的、資本金などの重要事項を決定します。
  2. 発起人が定款を作成し、公証人の認証を受けます。
  3. 発起人が銀行に発行株式の価格である、発行価額全額を払込、残高証明書を発行してもらいます。
  4. 取締役を選任します。ほとんどが発起人と同じ人で1名です。取締役が株式会社設立の登記をします。この設立登記をもって、会社の設立が完成です。

実に簡単に会社を設立することが可能となったのです。しかもそれに係る費用は、印紙代、公証人の手数料、登録免許税などで25万円から30万円でできるのです。資本金の金額も自分で決めることができ、個人事業主にとって法人化がいともたやすくなったといえます。

3 法人が得か、個人が得か

1.個人と法人の大きな違い

学習塾のほとんどは、個人事業の形で経営されています。それは、対象となるお客様が個人であるため、法人にすることのメリットを感じないからかもしれません。確かに、地域の子どもたちに自分の指導方針や指導方法で学力をつけることを目的としている個人塾では、個人事業で十分なのかもしれません。いろいろな場所に多店舗展開するのでなければ、多くの資金を用意することも不要です。それよりも子どもや母親とのコミュニケーションを密にすることの方が必要であるという考えもわかります。

しかし、学習塾も一つの事業体である以上、考えなくてはいけないことがあります。それは事業に対する経営責任ということです。経営者の身勝手で事業を閉鎖したり、休止したりすることは責任を果たしていないといえます。これが法人となると、それがそういった身勝手な行動がしにくくなります。法人とは「人間以外で、法律上の権利義務の主体となることを認められたもの」のことです。個人とは切り離された、法人という人格が法律上で認められるということなのです。

例えば、事業資金として借りた借入金であっても、個人事業では借主はあくまでも個人で、仮に倒産するようなことがあれば、個人財産をもってしても返済をしなければなりません。これを「無限責任」といいます。しかし、法人として借りたのであれば、借主は会社であり、債務が及ぶのは法人資産の範囲内であり、原則として経営者個人の資産にまで支払義務が及ぶことはありません。(経営者が借入金の個人保証をしている場合を除く)これを「有限責任」といいます。

また、賃貸契約、売買契約なども法人で行えます。また銀行口座も法人で開設することが可能です。経営体としての形を整えることができるのです。これは経営者が死亡などの緊急事態であっても、企業の継続ができるということなのです。経営者が死亡の際、銀行の個人口座は凍結され、引き出すまでさまざまな手続きが必要となります。

2.法人化のネックは何か

起業する時に、誰しも個人でいくか法人にするかを考えるでしょう。確かに個人事業は、税務署に開業届をだすことでスタートができます。法人の場合には、資本金の準備、会社の機関設計、法人設立の手続きなど面倒な手順を踏まなければなりません。そういったことがネックとなり、個人事業を続けているという人も多くおられるのではないでしょうか。

ここで法人化へのネックについて、次の2つをあげることができます。

一つは、法人化へのメリットです。先ほども述べたように、学習塾では法人化のメリットはいったい何があるのか、これを考えると個人事業のままでいいのではという結論になるのかもしれません。この法人化のメリットについては、次の章で詳述します。

二つ目のネックは、法人化への手続きの複雑さです。これについては前の章でも述べましたように、今回の会社法では、著しく簡単になりました。そのため、このネックについては、減少されたと考えてもいいのではないでしょうか。

3.会社の種類

ここで、新会社法で定められている会社の種類について、簡単に述べておきます。新会社法では、株式会社のほかに、合名会社、合資会社、合同会社を設立することができます。旧法にあった有限会社はその中に入っていません。今後は設立できないということです。ただし、今現在の有限会社は、そのまま特例有限会社として継続することはできます。

合名会社は旧法と同じく、無限責任社員で構成されています。それに加えて、法人も社員になれることと、1人でも設立ができるということが定められました。

合資会社も旧法と同じく、有限責任社員と無限責任社員とで構成されています。また法人が無限責任社員となること、有限責任社員が代表権を持つことを認められました。

合同会社は、すべての社員が有限責任しか負わないという点で、株式会社に近いものとなっています。一方、会社の運営については、法律の規制がほとんどなく、組合に近いものとなっています。会社設立は1人でもよく、社員全員が業務執行権をもつのが原則です。また利益配分方法を自由に決めることができ、出資額に応じた比率に準ずる必要がありません。学習塾で経営者の勉強会を継続させるために、組合形式で会社を設立するというときに最適なものかもしれません。

 
― 一部抜粋 ―
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