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2005/7 塾ジャーナルより一部抜粋

日本教育者セミナー 姫路大会

  2005年4月20日〜21日 於 兵庫県姫路市 姫路キャッスルホテル
主催 日本教育者セミナー
 
     
 
文部科学省の「ゆとり教育」をめぐって、学力の低下傾向が指摘される一方で、ようやく成果が出始めたとする見方もあり、議論はいまだ尽きることはない。そんななか、世界における日本の子どもたちの学力に視点を置き、その遅れにどう取り組むのか。寡占化時代における学習塾の戦略経営のポイントとは何かなど、民間教育が直面する課題解決のための方策を探る日本教育者セミナーが開催された。2日間に及ぶセミナーに延べ120人が参加した。
 第1日目は日本教育者セミナーで理事長を務める岡村寛三郎氏(岡村ゼミナール社長)の挨拶により開始された。そのなかで、岡村理事長はいわゆる「ゆとり教育」によって、日本の子どもたちの学力低下がもたらされたことを改めて指摘し、危機感を持った日本教育者セミナーが教育行政への政策転換を促す一定の役割を果たした旨を述べた。

 続いて2講座が行われた後、開催場所となった同ホテルで懇親会が催された。第2日目は3講座が進行し、なかでも実践型講座『こうすれば力がつく――英語最強勉強法』では参加者の熱気に包まれ、高まる雰囲気の中で終了した。

第1講座
「学習塾の寡占化時代を乗り越える」
PS・コンサルティング・システム代表  小林弘典 氏

 例年、この時期になりますと、私のもとに各学習塾からの経営状況に関する情報が入ってまいります。それらを集約してみますと、市場の拡大はあまりなく、横ばいか、むしろ悪い状況が多くなってきているような声が聞かれます。しかし、私自身の見方は違っておりまして、近々5年ほどで市場は拡大しはじめると見ております。

 その「市場」とは、教育関連産業としてみた「市場」であり「学習塾」のみを限定した市場ではありません。少子化により「学習塾」の市場規模の拡大は厳しさを増していますが、例外的に少子化であっても一部の層における教育熱は非常に上がっていく傾向はあります。例えば、トヨタが蒲郡に中高一貫の男子校を創ろうとしたところ、応募者が殺到したことや、中学受験をする子どもの数が増えていることなどから、特定層の受験熱は今後も過熱していくと思われますが、市場を拡大するほどとは言えません。
ですが、「生涯学習」という観点でとらえれば、資格取得、英会話学校、趣味、習い事、幼児教育、企業研修、通信教育など、あらゆる分野で市場は拡大し、現在の数倍になるでしょう。これまで勉強は子どもがするものだという概念がありましたが、大人になっても学ばなければついていけない社会に変わってきているのです。

 10年前、一般に普及していなかった携帯電話やパソコンが一気に普及浸透し、関連産業の市場が拡大したことと同様の現象が起きると考えています。その時、強い基盤を持つ学習塾であれば主体的地位を占めることができるでしょう。

 中堅規模あるいは大規模塾は今後ますます大きくなるでしょう。ある時点から塾は「設備産業化」せざるを得なくなる、というのがその最大の理由です。一定の資本がなくては設備を整えることができませんから、寡占化の進行は自明と言えるでしょう。
2001年の数字ですが、個人塾が持つ分教場の数は平均して1.023であるのに対し、法人の分教場の数は3.625となっています。1999年時では法人の分教場の数は3.281でしたから、たった2年間で企業塾の分教場の数が勢いよく増えていると言うことができます。逆に個人塾はその分、数を減らしています。これを5年、10年の単位で見ますと、さらに企業塾の勢いは強まってくることは間違いありません。

 こうした寡占化の中を生き残る戦略とは、拡大化か高付加価値戦略かのどちらかしかないと見ています。拡大化は設備、職員の数と質を充実させ、広告をうつことによって大規模化を、高付加価値戦略は小規模であっても専門化した塾を目指す、この2点しか考えられません。

 拡大化に重要な役割を果たすのが広告です。年間売り上げを大きく伸ばした大手の塾の広告費は売り上げに正比例しています。専門化路線を選択したとしても、やはり広告に説得力があるかどうかが問われます。コース別メニューの羅列よりも、実績や面倒見のよさが具体的に見えるよう工夫していただきたい。組織のシステム構築も重要です。成果主義、能力主義への転換を図り、人を活かす仕組みを創ることで寡占化時代を乗り越えていただきたいと思います。

第2講座
義務教育段階での理数力崩壊の実態と改革提言
英進館館長/全国学習塾協会常任理事 筒井 勝美氏

 日本の子どもたちの学力についてはご承知の通り、国際教育到達度評価学会(IEA)が行いました「国際数学・理科教育調査」および経済協力開発機構(OECD)が実施いたしました「実施の生徒の学習到達度調査」(PISA)の結果により、明らかに低下傾向にあることが証明されました。私どもが小・中学生の学力低下に気づき始めたのは、学力低下論争やゆとり教育批判が表面化するずっと以前の1993〜1994年頃でした。その後、国の教育施策や学習指導要領、理数系教科書の内容の変遷を調べたところ、驚くべき学習内容の削減が行われていたことがわかりました。2002年度の教育課程の30%削減は誰もが知るところですが、1992年当時にも同程度の削減が実施されていたことはあまり問題にされません。日本の義務教育における学習内容は1970年代なかごろから減り続けているのです。

 東京大学教養学部生物学の松田良一助教授や、同農学部の正木春彦教授によりますと「1997年、医学部学生が遺伝子やアミノ酸についての知識なく入学してきて、高校の補習授業が必要となった」とのことです。また、日本の超難関大学の大学院生を海外へ推薦留学させようとしても、昔は受け入れられていたのが、断られるケースも出てきています。

 世界の中で日本の子どもたちの学力低下を認めざるを得ない状況になって、文部科学省はようやくゆとり教育や学習指導要領の見直しを表明するに至っています。しかし、ゆとり教育や総合学習を推進しようとする学者のなかには、この見直しに対し、「教育行政として定見がないのではないか」という意見が出されています。

 3月4日に公表された「全国4県統一テスト」(岩手、宮城、和歌山福岡の4県が参加)の結果は、文科省がやってきたことをそのまま反映したもので、ゆとり教育に警鐘を鳴らす結果となりました。あらかじめ設定しておいた正答目標に対し、選択問題では70%に近い正答率でしたが、論述問題などの正答率はわずかに17%、白紙回答も20%もありました。これらは文章問題や図形といった文科省が削減した学習内容そのものなのです。

 アジア諸国では理数教育に限らず、全体的に授業時間数を日本より多く確保しています。2003年のIEAで1位となったシンガポールでは小学校高学年からエリート教育への進路が設けられ、落第があるなど競争が激しいのです。中国では共産党政治局の主要メンバーは胡錦濤国家主席をはじめ、温家宝首相、その他の主要メンバーは理工系出身者ばかりが占めています。日本は「文系王国」ですが、資源のない日本こそ科学技術立国として国家経営をするべきと考えます。

 最後に、知識の詰め込みはよくないという意見ありますが、多くの知識がなければ的確な判断力や問題解決能力といった「生きる力」がつかないことは、脳科学や認知心理学などの研究から明らかにされています。中山文部科学大臣はゆとり教育の見直しを明確に示しましたが、現場での浸透など今後の状況を見守る必要があるでしょう。

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