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2003/11 塾ジャーナルより一部抜粋

公教育の変換と塾業界 売上増加塾急増も、進む二極分化

  ※本文中の図表については、塾ジャーナル11月号本誌をご覧下さい。  
 
 9月号と本号との2回に分け、本誌は毎年恒例の「学習塾業界法人申告所得ランキング」を掲載した。タイトルは「法人所得ランキング」になっているが、ご覧いただくとおわかりのように、実際の内容は9月号に掲載された「法人申告所得」そのもののランキング(表1)と、9月号と本号とに分載されている「年間売上高」のランキング(表2)との2種類で構成されている。いずれも「非各種学校の学習塾(日本標準産業分類)を主業とする法人」の、原則として「2002年1月期から12月期までの1年間に到来した決算期」の申告所得と年間売上高を対象に、前者は全国の税務署からの公示をもとに、後者は民間信用調査機関が所有するデータをもとに、本誌が追加調査を行った上で順位付けしたものである。

 周知にように昨2002年4月、小中学校に新しい教育課程が導入された。新教育課程の目玉は「総合的な学習の時間」の設置と指導内容の削減、それに土曜日の完全休業を含めた指導時間の削減の3つであったが、これはおそらくわが国の教育史に残る画期的な変革と言ってよかろう。公教育が変われば公教育とともに生きてきた塾もまた変わらざるを得ない。その意味で2002年は塾業界にとっても曲がり角になった大変な年であった。ここではその大変な年の前後1年間に塾業界にどんな変化が起きたのかを、本誌掲載の法人申告所得と売上高のランキングを通じて眺めてみたいと思っている。

 なお、各社の決算期は1月期から12月期に渡っているので、厳密に言えばこれは各社の01年のある時点から02年のある時点までの1年間の所得と売上高を比較して作成したランキングであって、01年あるいは02年の1月1日から12月31日までの1年間の所得と売上高のランキングではない。その上データ収集の関係上、なかには前年からのもの、次年に渡るのものもかなり含まれている。しかし、それがここでの分析に甚だしい影響を与えることもないと思われるので、ひとまずこれを01年度1年間の法人所得及び売上高とみなして論を進めていくことにしたい。

一、拡大に転じた塾数と市場規模
 
 2001年度の塾業界にどんな変化が起きたのかを考える前に、その前提として現在の塾業界の全体像を一瞥しておくことにする。 

 まず、塾の数であるが、最新の総務省統計局「平成13年事業所・企業統計調査」によれば01年10月1日現在で、全国には5万1120カ所の「学習塾を主業とする事業所」があると報告されている(表1)。同省では5年おきあるいは3年おきに全国全産業の実態を調べる「事業所・企業統計調査」を実施してきた。この調査で「学習塾を主業とする事業所」が初めて取り上げられたのは1981年のことで、全国の事業所数は1万8683カ所であった。それが86年3万4367カ所、91年4万5856カ所、96年4万9586カ所と増えてきて、99年に4万8656カ所と初めて減少、塾ももはやこれまでかという印象を与えたが、01年には再び2476カ所の増加をみた(図1)。この不況下、一度減少に向かいながら一転増加に転じ、おそらくは現在でも増加し続けている塾という産業の底力には驚嘆させられるが、それはさておき「事業所」という場合は分教場を含んでの数で、われわれが普通言う「事業体」としての塾のことではない。

 では、単独もしくは複数の事業所を経営している「事業体としての塾」は全国に一体、いくつあるのか。

 同調査をもとに算出された数字を示しておくと、全国には「学習塾を主業とする企業」が4286社あり、「学習塾を主業とする個人業主」が3万4740人いる。つまり総合すると01年10月1日現在、全国には3万9026の「事業体としての塾」があったことになる。あったことがあると書いたのは、この調査からすでに2年も経っており、現時点では多少なりとも数が変わっていると推察されるからである。ちなみに同調査の1999年版では企業が4497社、個人業主が3万3787人の合計3万8284塾であった。01年までの2年間で企業塾は211社減り、個人塾は953塾増えているわけである。もしこの傾向がそのまま続いているとすると、現時点では全国に4千強の企業塾、3万6千弱の個人塾、合計では約4万の塾があるとみて間違いない。ここでは一応事業体としての塾数を4万、分教場をも含めた教場数を5万2千ととらえておくことにしよう。

 次にこの4万の塾が経済活動を行っている全国の塾市場の規模である。これについては(株)矢野経済研究所が毎年市場規模を算定しているので引用させていただくことにする。同研究所が昨年9月に発行した「教育産業白書2002年版」によると、塾の市場規模は96年度まで急激に増加していたが、同年度の1兆53億円をピークに減少を始め、00年度には9215億円まで落ち込んだ。だが、翌01度年には再び増加に転じ、02年度さらに増加して9726億円(予測値)にまで回復してきているという(図2)。

 ここで注目しておきたいのは、市場が回復してきたということもさることながら、なにゆえに市場規模が回復してきたのかというその理由である。市場規模が増えたということは、顧客対象の人口が増えたか、通塾率が上がったか、顧客1人当たりの単価が上がったかのどれかか、あるいはその組み合わせないし全部のいずれかにほかならない。

 では、今回の場合はそのどれなのか。表2、図(3)はここ10年数年のわが国の小中高校生の数を示したものだが、すぐにわかるように対象人口は増加どころか減少の一途をたどっている。従ってこれは理由にはなりえない。また表(3)、図(4)は、長野県教育委員会が県内の児童生徒を対象に毎年5月1日に実施している通塾率調査の結果を示したものだが
、ご覧のように通塾率も高校生を除いて96年、97年をピークに減少するばかりで01年、02年に回復した形跡は示していない。ということは、通塾率も理由にはなり得ず、結局、市場規模回復の主要な要因は1人当たり客単価の上昇と考えるよりほかなくなることになる。

 このことは実は塾業界にとってかなり重要な意味を含んでいる。というのも、それはすなわち塾の顧客が低料金を支払う不特定多数の一般庶民層から、大げさに言えばいくらでもお金を出すある水準以上の特定の集団に移りつつある、それも従前よりも市場規模を大きくするほどの勢いで、ということを物語っているとも思われるからである。

 先に02年の小中学校への新教育課程の導入について触れたが、ここに至るまでの一連の1990年代以降の教育改革――初等中等教育改革と大学改革――には「一律平等的教育施策からの脱却」と「特定エリートの育成」という一貫した方向があったと言われている。 そうした見方によれば、少なくとも80年代までのわが国の公教育は、かなり高い教育水準に達した国民を一律に、大量に輩出することを目標にしていた。それを、大方の水準が多少低下する犠牲を払ってでも一部、とくに理数系の一部を超世界最高水準にまで引き上げることを目標とする教育に変えるのが改革の目的であり、その証拠が一方における一般初中等教育レベルでの指導内容の削減と指導時間の削減、他方における中等教育学校、公立中高一貫校、スーパーサイエンスハイスクール、飛び入学、21世紀COEプログラム大学院の設置だというのである。あながち誤まった見方ではあるまい。

 それでは公教育がこうした方向で定着すれば、塾はどうなるのか。結果として招来するのはおそらくは顧客層の変質であろう。なんとなれば、そこで行われる児童生徒間の進学競争は、数少ない「超世界最高水準」コースへエントリーする資格を与えてくれる学校への早期からの入学競争であり、これは事実上学力水準や家庭の文化資本が一定以上の富裕層を対象にした狭い範囲の競争にならざるを得ない。必然的に塾の主要客層はそうした富裕層の子女に限定されてくると考えられるからである。注目しておきたいと述べたのは、今回の市場規模の拡大がその兆しの一端とも思われるからである。

 以上、長くなってしまったが、まとめておくと現在の塾業界は塾数において増加傾向、市場規模において復調基調、さらに客層において変質の方向にあると言って間違いあるまい。

 
二、申告所得トップは(株)さなる
 
 本題に入っていくことにする。初めに(表1)(表2)にある「法人申告所得」と「利益」の説明をしておこう。「法人申告所得」について言うと、企業の毎期(毎年)の売上(「年間総売上」)から、人件費や賃借料や原・材料費などの「売上原価」と広告費や役員報酬などの「販売費及び一般管理費」(以上まとめて「営業費用」)を差し引いた「営業利益」に、金利や株式運用などで生じた「営業外損益」を加減して求められるのが「経常利益」、これにさらに固定資産の処分や災害などで生じた「特別損益」を加減して求められるのが「税引き前利益」であり、法人申告所得はほぼこの税引き前利益に相当する。「ほぼ」というのは税引き前利益が商法上の会計処理方法で算出されているのに対し、申告所得の方は税法を基礎にして計算されているので、両者が必ずしもピタリと一致するわけではないからである。が、普通はたいした違いはないので、一応同じものとみてよかろう。

 一方、表中の「利益」は、この税引き前利益から法人税や住民税を差し引いて得られた「当期利益」のことで、これは各企業がその期の最後に残したお金ということになる。株主配当はこの中から出る。

 さて、法人申告所得のランキングであるが、9月号掲載の(表1)は「2002年1月期から12月期までの1年間に到来した決算期を対象にして、全国の税務署から公示された非各種学校の学習塾(日本標準産業分類)を主業とする法人」に、塾ジャーナル編集部が独自調査を行った上で学習塾を主業とみなして追加した法人を加えた85社を、申告所得の多い順に並べたものである。

 全体的にみた場合、01年度申告所得のランキングに大きな動きはみられない。公示対象となったのは85社で、前年度の86社から1社の減。ただし前々年度は85社であったから、変動も誤差の範囲といえる(表(4))。

 少しばかり気になる変化を探せば、売上高別で30億円以上と10億円以上30億円未満の双方が減少し(前者99年度33社が01年30社、後者30社が27社)、10億円未満が増えた(22社が28社)ことと、地域別で中部が増え(12社が17社)、近畿と四国が減った(前者18社が13社、後者3社が0社)ことくらいか。

 公示された法人を個々にみても、前年度1位の「四谷学院」(株)ハーバード才能開発が姿を消した以外、上位陣に大きな動きはみられない。トップは愛知の(株)さなる(佐鳴予備校、前年度2位)で所得金額は30億円を超えた。大阪進出を果たした同社はいま、東京進出を準備中とのことだが、これだけの資金力を懐にしてやって来られれば関東陣営もうかうかとしてはいられないだろう。2位は静岡の(株)秀英予備校(前年度3位)、3位は神奈川の(株)城南進学研究社(前年度6位)、4位は北海道の(株)進学会(前年度5位)、5位は東京の(株)東京個別指導学院(前年度4位)、6位も東京の(株)明光ネットワークジャパン(前年度12位)で、ここまでは東証1部、ジャスダックの株式公開組が並ぶ。7位は東京の全研本社(株)(全進予備校・全進スクール等、前年度17位)、8位は兵庫の(株)アップ(開進館・研伸館等、前年度11位)、9位は大阪の(株)学育舎(第一ゼミナール・第一高等学院等、前年度7位)、10位は東京の(株)サマディ(早稲田塾、前年度10位)。アップと学育舎も公開組である。

 余談になるが昨02年8月、進研ゼミの(株)ベネッセコーポレーションが(株)アップ(東証2部)の発行株式の24・8%を取得して同社の筆頭株主になった。株主の移動が激しい大阪の(株)ウィン(大証2部)、東京の(株)修学社(ジャスダック)ともども気になるところではある。

 
三、市場規模の4割は上位100塾で
 
 年間売上高を概観して、改めて強い印象を受けるのは寡占の進行状況である。
個別の売上高からみていくと、最も多いのは前年2位の埼玉の(株)栄光で売上額は249億円であった。2位は千葉の(株)市進(前年3位)で175億円。3位は東京の(株)ナガセ(前年4位)の130億円。以下、4位が大阪の(株)ワオ・コーポレーション(前年5位、127億円)、5位が神奈川の(株)日能研(前年6位、119億円)、6位が東京の(株)東京個別指導学院(前年7位、116億円)、7位が大阪の(株)学育舎(前年8位、108億円)、8位が愛知の(株)さなる(前年9位、101億円)。ここまでが100億円以上の売上を上げた8社で、100億円以上が8社という数は00年度と変わらない。それぞれの順位が一つずつ繰り上がっているのは、202億円の売上を上げて前年1位だった東京の全研本社(株)が92億円で10位に後退しているからで、同社を除けば順位は安定している。ちなみに上位8社のうち日能研とさなるを除く6社はいずれも株式公開組である。また、資本系列はどうなっているのかわからないが、「日能研」を冠する(株)日能研、(株)日能研関東、(株)日能研関西、(株)日能研九州の4社を合わせると売上高は236億円にのぼり、一挙に1位の栄光に肉薄する。

 ところで、ここで触れている年間売上高は、9月号と本号に分載された(表2)の「売上高ランキング」400社に、9月号掲載の(表1)法人申告所得ランキングにランクインした85社を加え、合計485社の売上高をもう一度順位付けしたものだが、この485社の売上高を一列に並べて眺めてみると非常に興味深い事実がみえてくる。100億円以上の売上をあげた8社にもう2社足した上位10社の売上高を合計すると1314億円になるが、これは(株)矢野経済研究所が算定した01年度の市場規模9630億円(図2)の13.6%に相当する額である。同様に上位100社の場合は3793億円で39.4%、上位200社の場合は46.2%、上位300社の場合は49.9%、上位400社の場合は52.1%、上位485社の場合は53.3%(表5、図5)。

 このことは何を意味しているのか。先にみたように01年10月1日現在で全国に塾は3万9026あった。そのうちの10塾といえばわずか0.0256%である。100塾でも0.256%、485塾で1.243%。これだけの塾で市場のそれぞれ13.6%、39.4%、53.3%をおさえているわけである。ものすごい寡占状態であるといっても過言ではなかろう。

 しかし、全国単位でみた場合、その寡占の進行も一息入ったようだ。いま一度表5を眺めていただきたい。「〜100位」欄の「市場規模での占有率」をみると1997年度は34.1%であった。それが00年度の39.5%まで上昇して01年度は39.4%。「計」欄をみても、97年度48.0%が00年度54.5%まで上昇して01年度は53.3%。明らかに止っている。

 だが、この停止状態が長続きすると判断するのは早計であろう。次節でみるようにこれらの売上高上位塾のうち、これまで売上が減少していた塾の多くが増加塾に転じている。来年度、再来年度になれば再び激しい寡占の進行が始まると考えて間違いあるまい。

 売上高上位485塾の地域分布もみておこう。ランクイン塾が最も多いのはもちろん関東で230塾、47.4%を占めている。2番目は近畿で84塾、3番目は中部で68塾。最も少ないのは東北の11塾である(図6)。

 1999年度に比してランクイン塾の増加が目立つのは中部と九州で、中部は12塾、九州は7塾増えた。逆に関東は14塾減り、近畿も8塾減った(表6、表7)。子どもの数の割りにランクイン塾の少なかった中部、九州に、中堅塾が増えてきたということであろうか。

 
四、売上増加塾が急増して4割に!
 
 01年度の変化の中で一番大きな変化は、売上プラス塾が急増したことだろう。

 データの関係で9月号掲載の(表1)には売上の増減の資料がないが、9月号と本号とに分載された(表2)には増減の資料が掲載されている。この資料をもとにして、400塾を売上プラス塾、±0塾、マイナス塾に分けてみたのが表8と図7である。一見してわかるように、これまで増加していた売上マイナス塾がちょうど40%と前年度比11.3ポイントも減り、プラス塾が39.5%で7.8ポイントも増えている。細かくなるが表(9)、図8をみればおわかりのように、前年度まで「売上伸び率▲2%以下▲5%より大」「▲5%以下▲10%より大」あたりにいた塾がプラス塾に転じたことが要因なのであろう。

 しかし、この400塾で売上プラス塾が急増したからといって、全国のほかの塾にも同じような傾向があるとはとても思えない。なんといってもこの400塾は、全国3万9026のなかで最も売上の大きな400塾であり、その400塾のなかでさえ売上高別にみれば6億円未満はプラス塾が35.0%、マイナス塾が41.6%とマイナス塾のほうが多い(表(10)、図(9))。あとは推して知るべしで、年間売上が1億円にも満たない残り3万数千の塾は、その90%以上が相変わらずマイナスを続けているか、あるいはその割合がさらに増えているとみてよかろう。

 表(11)、図(10)に地域別売上増減塾の比率も示しておいた。北海道と中国のプラス塾増が目立つが、標本数も少ないので特に意味があるとは思われない。

 最後にランキングとは直接関係ないが、株式公開各社の動向にも触れておこう。21ある株式公開塾は、2、3の例外を除いてすこぶる堅調な動きを示している(表(12))。とくに目立つのが(株)東京個別指導学院、(株)リソー教育(トーマス等)、(株)明光ネットワークジャパンの個別指導専業3社で、96年度から02年度の6年の間に東京個別は150%、リソー教育は128%の売上増を果たし、明光は5年の間に95%の売上増を果たしている。集団指導のなかでは(株)秀英予備校、(株)早稲田アカデミー、(株)京進の売上増が顕著で、同じ6年間にそれぞれ94%、114%、113%も増加している。いずれも驚異的な伸びと言うべきであろう。なお、01年度の21社の売上高を合計すると1663億円となるが、これは市場規模の17.3%に相当する。

 
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