全国大会に出場し難関大学へ
「文武両道」が養う集中力
国学院大学久我山中学高等学校には、クラブ活動の朝練習がない。遠距離通学の生徒も多いこと、そして「学校は学習が軸足であるべき」と語るのは昨年校長に就任した國清英明先生だ。日々の部活動は3時間程度、高3生は8時間目後のわずか1時間。それでも全国大会に出場できることは、歴代の野球部・陸上部・ラグビー部・サッカー部・男子バスケットボール部の部員たちが証明してきた。
「限られた練習時間の活用を指導者たちが長年工夫してきたことと、生徒たちの集中力です」と國清校長。
集中力の成果は大学進学実績にもつながる。昨夏、甲子園に出場したエースは早稲田・慶應義塾大学を一般入試で合格。サッカー部のレギュラー選手の一人は今年1月の試合に出て東京工業大学に合格した。
「大多数の高3生が引退せずに部活動を続けます。国学院大学は文系なので理系クラスは外部大学を目指す。彼らの存在は文系クラスに大いに刺激になります」と語るのは入試広報部長・三戸治彦先生。
久我山生が「文武両道」を貫ける強さはどこから生まれるのか。三戸先生は分析する。
「最終試合まで貢献し、かつ難関大学に合格していく先輩たちの姿を身近で見て『自分にもできる』と思うんでしょうね」
今春の大学進学実績は70名(内現役は48名)、GMARCH合格者数は全国6位(都内1位)、東京大学に男女1名ずつ(うち女子1名は現役)合格。医学部医学系に進む生徒も少なくない。長年、理系クラスを担当してきた國清校長はこう振り返る。
「外部大学への合格力をつけさせるため、まず自校テキストをつくり、学習内容を精選し、講座や合宿を充実させて来た。その歴史が今日の久我山の進学実績に確実につながっています」
世界的な視野を持ち
日本文化を継承する心を
國清 英明 校長
今春の中学入試では、最終回の2月5日に「ST入試」枠を初めて午前に設定。その回の男子部15名の募集枠は実質倍率12倍となった。「STクラス(男女)」は最難関国公立大学の現役合格を目指す特別進学クラス。一般クラス(男子)・高入生クラス(男女)のほか、来春高校入試では文系志望の女子にも募集枠を設ける。2018年に6 年一貫女子部に新設したCC(Cultural Communication)クラスでは、世界の多様な文化を尊重し合える、時代の変化に対応できる人材を育成する。國清校長には久我山が克服すべき課題が見えている。
「CCクラスの独自科目『GlobalStudies』の探究型学習や留学生との対話などを見ると、生徒たちは非常に明るく積極的。ただ『楽しい』ばかりではなく、海外大学にも進学できる学力を担保しなければならない。生徒がより良い人生を生きる方策を見つけるための必須条件として、全校で中学から高1の間に、揺るぎない基礎学力を身につける学習を更に徹底する必要性を感じています」
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久我山には教科以外に「文化の継承」「心身の成長」を促す多様な講座がある。男子部では「武道」(柔道・剣道が必修)、女子部では「話し方・華道・茶道・日本舞踊」を学年ごとに習い、男女ともに能の謡や舞を通して礼儀作法や所作を学ぶ。
「挨拶、話し方、マナーに厳しい学校です。こうした『鍛える教育』は、男子校時代から続く学習・生活における根幹。教養的な講座は、平成3年に女子部を創設した当初の賢母育成から、現在は国際人として身につけるべき自国文化の習得へと目的が変化しました。求められる人材像が時代で変わっても、社会でくじけることがないように、心身きちんと鍛えて送り出す。それが本校の使命です」
卒業生と家族で埋まる応援席
未来に真価を発揮する学校
女子部では、キャリア教育シリーズ「働くということ」を中2から高3まで継続的に受講する。男子も中3生が「職業調べ」に取り組むが、両方の数学を担当する三戸先生はこう語る。
「女子は、将来を考えるのが男子より早いんです。中2男子はまだ友達とじゃれ合っていますから(笑)。学びのタイミングをずらせるのが男女別学の良さです。逆に全学年対象の夏期・冬期講習は男女混合とする年もあります。数学など女子にとって男子は良きライバルで、彼らに勝つと大きな自信になります」
一方、夏の校外合宿講習では、休憩時間にランニングをした後にハードな講習に没入する男子に、女子は一目置くという。國清校長に久我山生の良さを伺った。
「一歩外に出れば、多くの生徒が社会の一員として節度ある行動ができる。在学中は立ち居振る舞いを厳しく注意されて不満でしょうけれど(苦笑)、後々『久我山で多様な学びができて良かった』と気づいてくれれば」
就職報告に来る卒業生からは「面接でマナーや話し方などで困ることは何もなかった」「久我山の同級生の方が早く内定が出ている」という内容をよく聞くという。
「甲子園の応援スタンドにこれほど卒業生やその父母の方々が多いのは珍しい、とよく言われました。あの卒業生の多さを見ると、我々が培ってきたことは間違いではなかった、と思います。野球部OBに限らず、大勢の在校生・卒業生の家族も応援に来てくれた。女子部の保護者が『まさか娘の母校を甲子園で応援できるなんて』と喜んでいました」
時空を越えて関わる人すべてに居場所がある。それが「学校」なのかもしれない。
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