英語と学習支援センターで
進路選択の幅が拡大中!
「利用する生徒が増えてきたので、スペースをさらに広くしました」と松下校長の声に熱がこもる。「学力支援センター」では基礎から応用力養成、検定対策、映像授業など、生徒が学習プログラムを自由に選べる。個別指導の「志望校別対策講座」など有料講座は学校が半額を負担。今春、慶應義塾大学商学部に進学した生徒は、支援センターのみで予備校に通わず合格した。将来は国連で働きたいとのこと。
「強制ではないので、センター内は生徒が自主的に学ぶ空気ができてきました。生徒同士が触発し、心に火がつく環境をつくりたかった」と松下校長。今春は四年制大学進学率が80%を超えた。だが「100%にしようとは思いません」と言い切る。面談で教員たちが共通認識で臨むのは、「何を学びたいのか」「何をしたいのか」生徒自身に気づかせることだという。目白研心らしい生徒として松下校長の心に残るのは、ロンドンの美容専門学校に進んだ卒業生だ。2年間で技術と英語を身に着け、現在フリーランスの美容師としてロンドンで大活躍。
「彼女は『世界』が自分のフィールドと気づいた。それが普通になっていく時代に、ふさわしい中等教育を行っていかなければならない」
その言葉を裏付けるのが「ACE(Active Communication in English)プログラム」(4技能すべてをネイティブ教員が担当)など実践的な英語授業だ。約300人が受ける英検は昨年、準1級に12名合格。卒業生の進路も多彩だ。海外大学に5名、国立看護大・防衛医大等の看護系に10名、東京理科大学に合格した生徒は「長崎修学旅行で原爆のことを学んでから、ココで勉強したいと思った」と長崎大学薬学部に進学した。こうした経験からの気づき、生徒自身が人生を決める力は、同校が最も大切に育てていることだ。
多彩な経験を重ねる中で
「自分」の本質を見出す
松下 秀房 校長
夏休みの宿題量は最小限に抑え、面談は1学期の成績が出た後ではなく2学期が始まる直前に行うという。
「生徒は主体的に『オンリーワン』の生活設計をし、学校ではできないことを体験してほしい。その上で二学期に入る直前『どういう心構えで新学期を迎えるの?』と意志を確認するのです」
学校でも外でも、とにかく経験量を増やす。教員は多様な体験の場をつくり、クラス・学年単位に縛られず個々人での活動を奨励している。行事ごとに多層的なグループを組んで経験を重ねる。特進・総合・SEC(Super EnglishCourse)のコース選択の機会を複数回設けて、文系理系から更にクラス構成を複雑にしているのも「自分は何が得意なのか、何が一番気になるのか」と、アピールポイントを自覚できるようになるためだ。そこにはグローバル社会で、文化が違う人たちに対し「皆一様に」という考え方では対応できない、という松下校長の危機感がある。
「経験量と失敗量が多いほど、自分の性格・能力が客観的にわかってくる。コースやクラス、役割を消去法で選ぶのではなく、より積極的に本人が決める機会を増やすことで自己肯定感が高まると思うんです。尖り(アピールポイント)を上手に伸ばして膨らませてほしい。そうすれば世界のフィールドでも自信を持って生きることができる」
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協働できる人間関係構築力
グローバル社会を生きる力
松下校長がもう一つ「中等教育の使命」と語るのは、コミュニケーション能力と人間関係能力の育成だ。
「経験値やコミュニケーション能力が弱いと視野が狭くなる。見えない部分への想像力も含めて。生徒たちが多層的な関係の中で、生の言葉を伝え合いながら、より濃密な人間関係を築ける力を、如何にバランス良く育てるか」
その集大成を見せてくれるのが「合唱コンクール」での高3生だ。高校は練馬文化会館で行い、高3にとってクラス単位でやる最後の学校行事だ。
「相当、燃えます。準備時期になるとクラスで曲を決めて、役割を分担する。リーダーシップとフォロワーシップの協働意識が出来ていて、人間関係構築力も、歌唱レベルも1、2年とは格段に違います。審査員はプロフェッショナルな方たちですが、賞は3年が独占。朝練の様子を毎日目にする中学生、入学間もない高1にも、高3は見事なロールモデルになっています」
SECに続き、今年から高1にも導入したのが、探究型キャリア教育テキスト「エナジード」だ。社会・未来・海外とステージを変えながら問題提起し、自己の内面も探りつつ世界観を広げる。上智大学へAO入試で合格したSEC卒業生は、東南アジアをテーマに探究し小論文コンテストで入選した。
「人やモノの流通が今以上に盛んになると、住む場所や働き方に対して『国』の意識も薄れてくるでしょう。その時に、英語はもちろん幅広い世界史観とコミュニケーション能力、地球規模の自然科学観を持った人間こそ、豊かに生きられるのだと思います」
「21世紀を生きるなら」と松下校長は最後にこう付け加えた。「芸術・スポーツの引き出しを持っておいた方がいいですよ」。そう聞いて、活動盛んな軽音楽部の部員数を聞いて驚いた。「60人くらい。多様なバンドがあるんですよ。今の子どもたちには音楽こそボーダーレスですからね」と微笑んだ。
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