週に7時間の英語の授業を軸に
英語4技能を徹底的に鍛える
昨年度の大学合格実績が創設以来最高を記録した安田学園中学校・高等学校。今春はそれを大幅に更新。国公立31名、早慶上理ICU53名、GMARCH100名で合計184名合格と50名も増えた。
同校はグローバル社会に貢献する人材の育成を目指し、英語教育に注力しているが、学校改革を行う中で、さらに英語力向上に力を入れている。
「中学時から特にリスニングとスピーキングの学習時間を増やしています。中1〜中3では英語の授業を週に7時間、うち2時間をネイティブが担当します。その他にも授業以外でネイティブとのかかわりを増やし、数年後の大学入試改革にもしっかり対応しています」と、安田学園中学校・高等学校の稲村隆雄教頭は語る。
同校では、授業以外での中学生がネイティブ教員と会話ができる機会を積極的につくっている。昼食を共にする「ランチタイム」や放課後に10分間1対1で話す「トークタイム」は、全生徒が学期に1〜2回参加。また、ネイティブ教員は林間学校などの行事にも同行している。
さらに、英語力アップのためのイベント「イングリッシュキャンプ」も行っている。これは、学期末試験終了後の時期を利用し、午前あるいは午後で時間を区切り、英語だけで校内時間を過ごすというもの。そこではネイティブ教員が考案した、楽しみながら学べるアクティビティが行われている。
「内容はゲームなどさまざまありますが、毎回ネイティブ教員がいろいろなアイデアを出してくれます。例えば模型作りでは、疑似紙幣を用意し、部品を買うなど、英語で買物をする実用的な内容も盛り込まれていました」(稲村教頭)。
その他、年1回の英語イベントとして「スピーチコンテスト」も開催。自己紹介や趣味を英語でスピーチし、学年ごとに競い合う。クラス内選考会で代表者2名を決めるなど、なかなか本格的だ。「スペリングコンテスト」として単語テスト(高校からは熟語も)も行われ、その順位を発表するなど、英語4技能のすべてで能力アップが図られている。
人気高まる特英コース
語学研修・海外留学も充実
中学校は、東大をはじめとする最難関国公立を目指す「先進コース」と国公立難関私立の「総合コース」があり、総合コースには希望者から選抜する英語に特化した「特英コース」がある。入学前から特英コースを目指す生徒も多く、今年も希望者が定員を超えた。
「本当に使える英語を学びたい意識の高い生徒が、本校を選んでくれるのは嬉しい限り」と稲村教頭が言うように、特英コースではネイティブの授業をメインに週9時間の英語授業のほか、3年時に約3週間のニュージーランドへの語学研修(ホームステイ)や海外留学など、英語を学びたい気持ちが強い生徒のニーズに応えるカリキュラムが組まれている。実際、中3で英検準2級に合格、高1でTOEIC800点、英検準1級に合格した生徒もいる。
今年1月から始まった海外留学は、高校1年希望者対象で3ヵ月間ニュージーランドに行く。現地では1日1回の留学生用の英語授業以外は、留学した学校の通常授業から選択して受講。4月に帰国する予定の生徒の中で特英コースの2名が3ヵ月延長し、6カ月の海外留学となったケースも。今年は男女共学一期生の特英コースが誕生し、さらなる飛躍が期待されている。
特英コース以外にも、希望者を対象としたカナダ語学研修(約2週間のホームステイ)もあり、中2〜高2まで毎年でも申し込める(先進コースは3年で全員参加)。さらに、高2の修学旅行でもニュージーランドを訪れ、ファーム(農場)ステイする。海外での英語学習の機会がこれだけ用意されていることについて稲村教頭は、「学校でのネイティブとの会話で培われた英語が、海外でも『使えた』という自信を持って帰国させ、それ以降の英語学習のランクアップにつなげたいのです。そのために中学からの英語教育に力を注ぎ、それを海外で試せる機会もできるだけ用意するようにしています」と答える。
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体験学習と探究学習で
21世紀型スキルを身に付ける
同校では、問題発見能力、問題解決能力、積極表現能力の3つの力を身に付けるため、総合コースでは15年前から「ライフスキル」(体験学習)が行われている。生徒が知らず知らずのうちに学べるよう、授業ではなく、林間学校などの行事に取り入れて行われている。班のメンバーで決めたテーマについて事前に調べ、現地で調査。その結果をまとめ、最終日に発表する。
先進コースでは、根拠をもって論理的に考える力の育成を目的に、探究プログラムが行われている。野外に出て自然や生き物を観察し、疑問や課題を見つけ、そこに仮説を立て、実験などを繰り返して検証していく。同校の探究プログラムの特徴は、訪れる現場でその分野の専門家や研究者に話を聞き、指導を受けられること。これまで上野動物園や東京海洋大学の研究所、奥多摩の「都民の森」など、さまざまな場所を訪れ、貴重な体験を積んでいる。
「探究授業4年目の今年は、これまでの3年間の経験を進化させ、個人探究として論文をまとめる段階へ進みます。最終段階となる来年には、それを英語に翻訳し、英国オックスフォードにある大学で発表する予定です。成長した生徒の姿が今から楽しみです」と稲村教頭。
英語教育とともに、国際社会で活躍できる人材に求められる21世紀型スキルを身に付けられる教育も、同校の大きな強みだと言えるだろう。
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