「面倒見が良い学校」の
生徒が生き生きする理由
「『教員の面倒見が良い、生徒がのびのびしている』校風が、板についた感じです。自然体で学校生活する中で、目的意識を持って実力をつけて、最終的に結果を出せる土壌が青稜にはある、という評価のされ方も、虚像ではなく、現実になってきた実感があります」
伊東充生徒募集対策部長はそう語る。昨年度の中学校入試は5回実施で志願者1,981人、受験者1,252人を集めた。2月1日の午前入試の倍率は一昨年の2倍に伸び、「同校が第一志望の受験生が増加したのでは?」と聞いてみる。
「『上位校にも果敢にチャレンジしてください』と言い続けているので、実際の志望順位はわかりません。でも『青稜が大好き』というファンとの対話も大切にしたい」という思いから、今年度入試は2月1日・2日の4回入試を決定した。変更の背景は2月4日の5回目に「青稜を受け続けた受験生が合格を占める」現状があり、早目に合格を出して受験生の精神的・経済的負担を減らしたいとのこと。
ファンが増え続ける要因は、同校の大学進学実績の高さにあることは間違いない。今春は医学部医学科に現役で5名合格(うち2名は国公立)、現役合格率も8割を超えた。
「面倒見が良い学校、と言われますが、その実態は『コミュニケーションの時間の多さと深さ』です。“本心から望む第一志望校にきっちり行くんだ”という教員と生徒の明確な意志の賜物。最近は、明るく前向きな入学生、安心して素直に『こっちを向いてくれる子』が増えました。学習面でもそれ以外でも、家族のような深い信頼関係が築ける。それがすべての原動力です」
生徒と教員がもがき合って
創る学校、それが「青稜」
昨年、新校舎を得た青稜で始まったのが「生物室のジャングル化計画」だ。楽しくなければ学校じゃない、ワクワクすることを理科から発信しようと、現在50種類を越える動物を自然科学部が飼育する。専門家の指導を仰ぎながら約1年、設備のメンテナンスも生徒自身が行うまでに。教員は生徒の発想や希望を引き出し、話し合いながら、できることを判断しつつ挑戦もさせてきた。理科担当の伊東対策部長は、生徒のポテンシャルの高さに驚いている。
「毎日欠かせない哺乳類の飼育も、爬虫類の扱いも慣れ方が尋常じゃなく早い。課題をどんどんクリアして、3年後の予想図を半年で完成させてしまいました(笑)。可能性が広がると、生徒自ら考え、動いて急速に成長する。彼らに触発された大勢の生徒が生物室に入り浸り、生き物を愛でてくれます」
中学校の体育祭も生徒主導の運営が昨年から始まった。先輩の後ろ姿を見ながら「自分たちもこんな体育祭をやらなければ」と自覚を高めてきた今年の中3生。先輩の進め方を踏襲しつつ、次の動きを読める、求心力が育ってきている、と伊東対策部長は目を細める。
「中3がすごく張り切って盛り上げています。ここ数年、本校の生徒像は圧倒的に変わりました。『自分たちの学校の色』を作り始めている。基本は素直なので、困ったらすぐ相談しにくるところは変わりませんが、こちらからボール(動機づけ)を上手く投げて好奇心をくすぐると、教員が想像しない豪速球が返ってくる。すごく面白いです」
生徒の生き生きとした姿こそが「いま」の青稜最大の魅力として、受験生家族や近隣の人々に浸透し始めている手応えを、伊東対策部長は感じている。
「帰国生入試」高校にも新設
青稜スタイルで国際化に挑む
「新校舎の中心・アトリウムを国際色豊かな、経歴のさまざまな生徒でごった返す空間にしていきたい」と、今年、高校に帰国生入試枠を新設する。併願優遇など一般入試と同じ優遇・出題レベル・面接なしの3教科入試だ。
「本校では帰国生の『経験』を買いたいんです。英語力は入試でも入学後も問いません。他の生徒と同様に、国内の大学への進学指導を行います」
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「特別視されたくない」帰国子女が、昨年新設した中学校の帰国生入試に相当数集まったという。伊東対策部長は、青稜の国際教育のテーマをこう語る。
「語学力以上に、異なる文化や考え方への順応性を高めたい。異質なものに対し、構えない、拒絶しない、余裕を持てる器を身に付けることで、自分自身の特性が見えてくると思うんです」
多様な英語研修プログラムが整い、中2・中3・高1対象「セブ島英語研修(3週間)」、高1・高2対象「イギリス英語研修(2週間)」、「カナダ・オーストラリア短期留学(2ヵ月)」はセレクションを行うほど多くの希望者を集める。
創立78周年、共学化から20年。良くも悪くも「これをせねばならない」伝統が本校にはない、と言い切る。
「決まった形のない学校像を、教員と生徒が一緒にゼロから創り続けてきました。『経験』と『発想力』で対等に話し合える校風が最初からあるのは偶然の奇跡。職員室や教室で誰かが『こうしたい』と言ったら『説明できる意味』が必要で、やると決まれば全員総出で足りない部分を補う。教員も生徒も人間の『素』の部分でぶつかってモノを考えてきました。『素』で創り合う信頼関係だから深く、強いつながりです」
まさに学校生活そのものが「アクティブ・ラーニング」になっていますね、と伊東対策部長は笑った。
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