平和のためにできることは
教科の勉強意欲も向上
創価高等学校がSGHAとして掲げているのは「対話からTAIWAへ TAIWA力のあるグローバルリーダーの育成」。従来からコミュニケーション(対話)を重視している同校。さらに発展させた「TAIWA」とは「Toughness(粘り強さ)」「Accordance/Acceptance(協調性/受容性)」「Initiative/identity(率先力/アイデンティティ)」「Wisdom(英知)」「Activeness(行動力)」の頭文字だ。グローバルリーダーに必要な力として、これらの力を高めていきたいと考えている。
SGHAとして取り組むのは「GCP(グローバルシチズンシッププロジェクト)」だ。全校生徒を対象に、「世界を知る 私を知る 世界平和のために私は何ができるのか」をテーマに月に1度「グローバルセミナー」を実施。これまで元イラク特命全権大使で創価大学客員教授の山口寿男氏ら著名人を招いて講演を行っている。
もう1つ「GLP(グローバルリーダーズプログラム)」では全学年から選抜された24名が活動している。今年度は「戦争を知らない私たちの世代は戦後70年をどのようにとらえているか」をテーマに、各国の歴史教科書を取り寄せて学んだり、日本にある平和に関する博物館をグループに分かれて訪問した。そこで、生徒たちは同じ平和博物館でもさまざまな観点があり、平和の捉え方の難しさに直面した。
「戦争とは各国それぞれの正義対正義の争いであることを感じたようです」と創価学園東京学園長の中川恵夫先生。創価高校教頭の久保泰郎先生も「英語だけではなく、数学や科学、歴史等すべて学ぶことがグローバルリーダーには必要だと気付き、教科の勉強への意欲も高まりましたね」と話す。
夏休みには広島、新潟、京都、大阪などの遠方に行き、各地の平和博物館を訪ね、罹災者にインタビューをした。事前に国連軍縮会議が広島で開催されることを知った生徒は自分たちで一般傍聴券を申し込んだ。平和に対して、いまできることをしたい。生徒は進んで行動を起こせるようになっている。
2学期にはこの体験をまとめて英語化し、3学期にはSNSで発信する予定。GLPの生徒の英語力は全員英検2級以上。帰国子女は一人もいないが高い英語力を誇る。英語で発信することで世界と意見交換し、「TAIWA」することを目指している。
一人も残らず
グローバルリーダーに
関西創価高等学校がある大阪府交野市。古来、渡来人がこの地に移り住み、大陸文化を日本に融合させた土地だ。同校は「TRY人の郷・交野から平和の創造に挑戦するグローバルリーダー育成プログラム」をテーマにに掲げている。
同校はこれまで「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」という信条の下、世界市民の育成に取り組んできた。SGHではそれを国レベルに引き上げて考えられる人材を育成すべく、異文化・思想的背景も理解する「共感力」、多くの人や組織の力を結集して問題解決を図る「創造力」、遠い世界のことでも当事者意識を持ってかかわろうとする「使命感」の3つを身に付けさせたいとしている。
SGHのプログラムは大きく3つ。全校生徒を対象の「GRIT(Global Research and Inquiry Time)」では「環境・開発・人権・平和」の4分野をチームに分かれて研究する。昨年の夏休みには身近な人の中から4テーマにかかわる人にインタビューし、ポスターセッションで発表した。「環境問題の専門家から戦争体験を語るおばあちゃんまで、多種多様な内容に感動しました」と関西創価高校の中西均校長は話す。国際宇宙ステーションのデジタルカメラから写真を撮影するNASAの教育プログラム「アースカムプロジェクト」にも全員が参加。宇宙から俯瞰し、かけがえのない地球を大切にする心を育んでいる。 |
「海外の大学・大学院で学びたい生徒が40%から74%に、将来、海外で活躍したい生徒は31%が68%に増えました」と中西校長は生徒の成長に目を細める。
希望者対象の特別授業プログラム「SP(SOKA Progress)クラス」では、上級英語や数学、統計学の授業を放課後に実施。今年から始めた「UP(University Partnership)クラス」では大学や国際機関から講師を招いて講義を行っている。
さらに選抜メンバーによる「LC(Learning Cluster)」は国際機関と提携したプログラムに取り組んでいる。今年は高2・3生から16名を選出。このプログラムは基本英語で行われる。JAXAの筑波宇宙センターでのフィールドワークではすべて英語で解説を受け、質疑応答も英語だった。3学期には地球的課題の解決方法をプレゼンし、最終的には国連に提言することをゴールとしている。
中西校長は「将来、国連や国際関係の組織で活躍したいと志望している生徒も全校の36%まで占めるまでになり、職業として世界の平和に貢献したいと思ってくれるようになりました」と話している。
創価大学
アメリカ創価大学と連携
SGHの活動にあたり、大きな役割を果たしているのが、創価大学とアメリカ創価大学との高大連携だ。国際的なサミットにも参加している創価大学4年生の鬼木生子さんの講義では「こんなすごい先輩がいるのか」と創価高校の生徒は目を輝かせた。関西創価高校のUPにおいても、アメリカ創価大学の教授が、3日間の英語集中講義で生徒たちを鍛えた。
関西創価学園の武田豊学園長は「私たち教職員自体もSGHの取り組みを通し、大きな啓発を受けています。教科指導でもアクティブラーニングを実施できるよう、全教員が取り組んでいく。教員も生徒と一緒に変化・成長していきたいと思っています」と語った。
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