新校舎を生徒自らアレンジ
新たな融合で教員力も進化
昨年秋、新校舎が竣工。仮校舎から3年ぶりに高校生たちが戻ってきた。
新しい図書館には生徒の希望通り、自習室を増設、座席の争奪戦となっている。
最新設備の化学実験室・壁一面に水槽や植物が並ぶ生物室と理科室は2つに。高い天井から柔らかな光が差し込む図書館棟のアトリウムは、中学生と高校生が行き交う導線の中心部だ。
ここを生徒たちは実にフレキシブルに活用していると感心するのは、伊東充生徒募集対策部長。
「中1から高3の縦割りで組織されている委員会の打ち合わせ場所になっています。一斉会議には円陣を組んで話し合っていますよ」
文化祭のモニュメントを制作したり、雨の日には体育や部活動の軽い運動も可能という。新校舎の隅々に居心地の良い場所を見つけては、生徒自らレイアウトを工夫して活用している。
「近年、自分で考えて行動できる生徒が増えました。『できるかどうかは君たち次第だ』と投げ返すと、大人が納得するレベルで、生徒同士が協力し合い、事を成し遂げる。ここ数年は驚きの連続です。中学校は今年から体育大会の単独開催にも挑戦します」
進化は教員にもと伊東部長。新築を機に中学校と高校の職員室を分けた。教員力の結集と逆行するかに見えるが意外な化学反応が起きているという。
「中学・高校それぞれの取り組みに対し、解釈に微妙な差異が現れる。改めて説明したり、話し合う機会が増えました。すると隠れた疑問が顕在化して、思わぬ角度からの提案を受けたり、内容が精錬されていくんです。教科指導では、多くの教員が中学・高校の両方を担当して、6学年のクラス・生徒を複数の視点から見守る環境が再び整いました。担当に学年差があるほうが、生徒の発するサインをキャッチしやすいですね」
高い希望を持つ集合体が
個から未来を引き出す
今春333名の卒業生の現役合格者は、国公立大学68名、早慶上智ICU東京理科大131名、GMARCH285名と過去最高の実績を打ち立てた。その理由を、共学化から20年来培ってきた教科指導力のレベルの高さと、モチベーションの高い入学生がそのまま「諦めない」気持ちを維持し続けた成果と伊東部長は分析する。
「本校を併願受験する皆さんには、最高に背伸びして、第一志望校に挑戦してくださいとエールを送っています。叶わなくても『青稜でリベンジしよう!』と心意気を持つ入学生が年々増えて、同級生も先輩も上昇志向です。何より教員の言葉を素直に受けとめます。大学受験でも『この程度でいい』と弱腰な生徒や保護者には、本人が真に望む最高の志望先に精一杯立ち向かえるよう、バックアップします。チャレンジできる子は必ず伸びる。それは在校生と卒業生が証明しています」
昨年度は併願優遇受験制度の内申基準を引き上げた(5科の評点合計23以上かつ9科41以上)にもかかわらず、高校入試では受験者数が1,000人を超えた。中学入試も約1,500人の志願者を集めた。公立中学より735時間多い授業時間数、宿題は毎日2時間だが、苦手科目には指名制の基礎講習もありフォローは万全。何より面談が手厚く、多い生徒では高1・2で年間10回、高3は20回にのぼることも。
「進路を絞り込むまで大勢の先生が多方面からかかわり、可能性を引き出します。答えは生徒の中に必ずある。難関大に合格する子もガリ勉ではなく普通の子。専門や相性の良さで面談や添削を受ける先生を自ら選び、授業や講習も含めて学校を上手に利用しつくした子が想定以上の合格を勝ち取っていきます」 |
中学生の海外研修スタート
人をつなぐ青稜ブランド
ハードを整えた青稜がソフトの充実に力を注ぐのが英語研修プログラムだ。高校生対象の「海外英語研修」を今年度から中学生にも門戸を広げた。中2〜高1対象の「セブ島英語研修」(3週間)はマンツーマン授業のほか、環境学習・日本企業訪問などアクティビティが充実。高校生対象の「イギリス英語研修」(2週間)では古都のホームステイを通して異文化交流・体験を深める。短期留学プログラム(2ヵ月)も参加人数を増やす予定。応募者が多く、セレクションや抽選を行う状況と伊東部長。
「実践的な英語力の獲得以上に重要なのが異文化体験です。その経験をどんな進路に反映するのか楽しみですし、生徒が大きな夢を持ったときに、即対応できる体力を我々も身に付けておきたい。そこで今年度からネイティブの講師を一人、学校の専任にしました」
センター試験全員受験の同校が、大学受験改革にどう対処していくのか。
「試験の形態がどう変わっても、全員受験と『基本となる知識』に重きを置く指導は変わりません。教科を超えて教員の仲が良いので、他教科のエピソードを盛り込み『すべての教科はつながっている。社会にもリンクする』と生徒には日常的に伝えています。すでに『合教科型』といえるかもしれません」
卒業後も、同級生や教員とのつながりが深い。年輪を重ねるように交流の輪が広がる人間関係の展開力を「青稜ブランド」と伊東部長は考えている。
「青稜生は、人との接し方や関係を紡ぐ意味を6年間で深めていきます。学校にも『家族』を作っていく。卒業生が安心して帰ってこられる学校であり続けなければならないと思います」
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