生徒の要望に応えた
「選抜進学クラス」の新設
今春から新設された「選抜進学クラス」は、いわば特進クラスと進学クラスの間のような位置づけになる。遠藤行巳戦略広報室長は「特進クラスに行きたいが、7時間授業だと多くの時間を部活動に専念できないといった要望に応え、部活もできて、大学もなるべく一般試験入試で挑戦したいという生徒に向けて新設しました」と話す。
2年次からは文コース、理コース、総合進学コースの3つのコースから自分の進学希望に合わせて選択する。文コースは「英語・国語・社会」、理コースは「英語・数学・理科」を中心に授業時間を配分し、総合進学コースは、普通科でありながら簿記の資格取得もでき、付属の千葉商科大学や他大学への進学に備える。「選抜進学クラスは2年次に文コース・理コースで一般試験入試に挑戦していくよう、1年次より指導していきます。進学クラスの生徒も成績と意欲によっては、文コース・理コースを希望した場合、コース変更も認めていきます」。
今春の難関・上位・中堅主要大学への合格者数は昨年実績を上回り、順調に伸ばしている。少数精鋭を実践し、1クラス特別進学クラスで35名程度、選抜進学・進学は40名程度となっている。「商業という名前をずっと使い続けたのも良かったと思っています。いま商業科が見直されていますし、商業科のある大学付属高校が少ないこともあって、東京からの通学生もいますから」。
同校はクラブ活動も盛んで、水泳部と弓道部は特に実績があり、男子バレーボール部はインターハイ出場を果たしている。
キャリア教育と心の教育
長年、「クエストエデュケーションプログラム」というキャリア教育にも力を入れている。これは実際にある「企業」の活動に参加するインターンシップ体験型学習プログラムであり、5、6人にグループ分けして行われる。7年連続で全国大会に出場し、企業賞などの入賞も果たしている。「探求型ですので、自分で調べる力がつき、調べる力がつくと勉強もやる気が出てきて、いい循環が生まれます。中学までの点数教育とは違うプログラムなので、高校に入って学力、または他の能力が開花する生徒もいます」と遠藤室長。
また、同校は心の教育として「エゴグラム」を活用した、人間形成のための特別教育システムを千葉県でいち早く取り入れたことでも知られる。3年間を通して月に1回、ロングホームルームの時間を利用した「グループ体験学習」を実施。コミュニケーション能力や論理的思考力を身に付けるためのカリキュラムとなっている。
「自分を見直すいい機会になります。自分が考えていること、人からどう見られているかなどを知り、自分に足りないところは何なのかがわかってきます」
例えば「電車でお年寄りが立っている。自分は座っている。しかし、自分も具合が悪い。そのとき、席を譲るか?」といった話題で議論し合う。「子どもは吸収が早いので、楽しんでやっていますし、3年間でかなり成長しますね」と遠藤室長。社会を肌で知るという流れから、約150人が登録するボランティア活動も自己発見の入り口となっている。
英語教育、今後の教育方針
「英語がわかればグローバルな人間になれるかといえば、そうでもないかもしれませんが、英語はグローバルな人間になる基本にはなるだろうと考えています」と遠藤室長は言う。特進クラスはさらにその考えを強くしており、中にはロシア、東南アジア等に旅行し、興味を持ち、大学でその国の言葉を専攻する生徒も出ているという。国際交流としては、希望者には毎夏2年生を対象に、ホームステイを奨励している。新設の選抜進学クラスは英語に重点指導もし、大学入試のみならず大学卒業後も視野に入れて指導しているとのこと。 |
また、昨年から週6日制になり、カリキュラムに余裕がもてるようになった。「土曜日に3時間、月12時間授業が増えたことにより、教員も相当な余裕をもってカリキュラムを組めるようになりました。一昨年までは余裕のなかった教科は、進度を速めるしかなかったので、この差は大きいです」。
今後、教育方針、経営方針の改革を5年計画で進めており、そこには脳科学の見地からのアプローチがあるという。「基本的に男女で脳が違うというところから、共学、男女別学をどう作っていくか。現在、科学的に検証されているところを教育に生かしたいと考えています」。
例えば、女性は赤ちゃんの時から人の表情を読み取るが、男性の赤ちゃんは動くものをじっくり見ようとする。「色、音に対する感覚も男女で違います。男性は理系が強く、女性は文系が強いという事実がありますが、そこには教え方にも問題があるのではないか。科学的に明らかになっていることを教育界でも生かすべきだと考え、いま資料を取り寄せ、教員は専門書等を読み、講習会に参加するなどして勉強しているところです」。
また、最近の子どもについて遠藤室長は、「人の話をキャッチしようとする能力が低くなっているように感じます。相手の話を聞いて、何を話そうとしているかを理解しようとする力が落ちている」と危惧し、その上で「そこを教員がどう高めてあげられるか、それが我々のこれからの大事な仕事になってくると思っています。また、小・中の授業では“楽しい”というところに重点を置いている気がしますが、ただ楽しいだけではなく、緊張の中に成果が出てこその“楽しい”だと思います」と話した。
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