自分のペースで学べる授業
英検対策は級別に指導
長瀬 達也 教頭
大阪府堺市、JR上野芝駅から高級住宅街を抜けた小高い場所に建つ賢明学院は、幼稚園、小学校、中学高等学校を有するカトリック教育の伝統校である。「すべての学びたいという気持ちに応えたい」と、通信制課程を設立。校舎は全日制と同じ敷地内に建ち、グラウンド、図書館、食堂などの施設はすべて共用する。さらに、制服を着用することや卒業証書についても全日制と変わりはない。
「現在105人が在籍していますが、その半分は他校からの転入生です。本校の場合、大阪の進学校からの転入が多いのが特徴です。これまで一生懸命勉強してきたものの、高校で思うように結果が出せず、心が折れてしまった生徒もいます。能力はあるのに、自信を失うことで自己肯定感が下がってしまう。そこをしっかりとサポートすることで自己肯定感が上がり、学習への意欲も取り戻すことができます」と長瀬教頭は話す。
一方で、病気など何らかの要因で学校に通えなくなってしまった生徒へのサポートも充実している。同校では、毎週土曜日に平常スクーリングを実施、全員出席を必須としている。水曜・金曜は授業が行われるが、出席は自由。国語・数学・英語などの教科は中学の学び直し、高校1年生レベル、受験対策と大きく3つに分かれ、自分のペースに合わせて選び、出席することができる。
「水曜・金曜は3教室同時に1時間の授業を行っていますが、教室によっては生徒が2〜3人、ときにはマンツーマンで行うこともあります。英語検定の級別対策授業は、少人数で丁寧に指導するので合格率がよく、日本英語検定協会から奨励賞に選出されました」
平日の火曜日〜金曜日は自習室を開放。併設の職員室には常時教員が待機し、質問に来る生徒と個別授業が展開される。
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社会性やコミュニケーション能力を
養う特別活動を多彩に用意
「木曜日は特別活動の日ですが、実は、この特別活動が生徒の自己肯定感を引き上げるきっかけになっています。過去には遠足(アスレチック)や芸術鑑賞、裁判の傍聴にも出かけました。一部を除いて、学年に関係なく自分が希望する活動に参加できます。日頃、同級生でありながら話すことができなかった生徒たちが、アスレチックで『頑張って』『怖いよー』『大丈夫!』など、声をかけたことがきっかけとなり、気軽に話せるようになりました」
また、海遊館を見学した際には飼育員から話を聞き、バックヤード見学でサメを上から見るなど、通常はできない体験に生徒や保護者からも好評だったという。上級生は下級生と接する中で気を配るなどの社会性が身につき、学校外の人から話を聞くことで視野が広がり、コミュニケーション能力も養われる。
「自分に自信が持てると楽しくなって学習意欲も向上します。通常3年間で30別活動に、120時間以上出席する生徒もいました」
ほかにも宝塚歌劇や劇団四季の舞台鑑賞、「ミスタードーナツ」(ダスキンミュージアム)見学ではドーナツづくりにも挑戦するなど、実に多彩なプログラムが用意されている。
不登校になってしまった生徒の中には、学校に行くこと自体が怖いと感じている生徒もいる。そこで同校では、学校説明会、個別相談、入試相談、願書提と、いずれも生徒とともに保護者にも登校してもらうことで「学校は怖くない」と安心してもらえるよう取り組んでいる。
「生徒には学校や先生を自分の
目で見て、入学を決めてほしいと思っています。入試では余裕を持って自分の実力を発揮できるように、入試相談では面接で何を聞かれるかなども話しています。成績を重視しているわけではなく、生徒の『学びたい』という気持ちを大切にしています」
同校は担任制をとっており、生徒全員にきめ細やかな指導ができる体制が整っている。担任はもちろん、通信制課程の全教員やスクールカウンセラー、養護教員、そして長瀬教頭などが一丸となって生徒をサポートしている。進路指導は専門の教員が担当するほか、教科指導は通信制の教員だけでなく全日制の教員も担当する。
「常に生徒一人ひとりに目を向け、極力声をかける機会を増やしています。また、担任には1週間に1回、保護者に電話で生徒が頑張っている様子を報告するようにお願いしています。そして、生徒や保護者の情報は必ず教員全員で共有することも忘れません」
少人数制で生徒一人ひとりに寄り添った指導。整った環境や設備だけでなく、先生方の生徒への思いこそが飛躍的な成長の理由だと感じた。
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