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中学・高校受験:学びネット

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大谷中学校・高等学校

 
  人を尊ぶ心とつながりを大切にし
「智」と「身」を伸ばす京都の伝統校
 創立は明治8年、今年で145年目を迎える。学校理念の「樹心」は親鸞聖人の言葉に由来する。大谷中学校・高等学校は学校法人真言宗大谷学園が運営する京都の伝統校だ。校風浄土真宗の教えに基づく人間教育と国公立大学、難関私大への高い進学実績が信頼され、毎年多くの志願者を集める。自由闊達でクラブ活動や学校行事が盛んな校風も魅力だ。昨年は高校バタビアコースに、国際教育に特化した「グローバルクラス」が誕生。今春は新体育館と新講堂が完成し、学びの環境を充実させる同校が目指す未来を副校長の梅垣道行先生に聞いた。

校 長: 飯山 等
住 所: 〒605-0965
京都市東山区今熊野池田町12
電 話: 075-541-1312
交 通: JR奈良線、京阪本線
「東福寺」駅より徒歩5分
学生数: 275名(中学校)
1,672名(高等学校)
ホームページ: http://www.otani.ed.jp/

 

進学実績を伸ばし続ける伝統校
高校志願者数は関西トップクラス

 JR・京阪「東福寺」駅から徒歩5分。京都市東山区の静かな町中にある大谷中学校・高等学校を訪ねたのは昼休みの時間。中庭を見渡せるウッドデッキで生徒たちが談笑しながらランチタイムを過ごしていた。食堂や各階にあるフリースペースを活用する生徒もいる。晴れた日の屋上も人気のお弁当スポットだ。自由で開放的な校風を実感する。

 「生徒たちが『学校が楽しい』と言ってくれることが何よりの喜び。そういう教育環境を整えることを最優先しています」と副校長の梅垣道行先生は言う。自身も大谷中学校・高等学校で学び、大好きな母校の数学教師に。以前は野球部監督を務め、地元ラジオ局での学校紹介番組を企画し、自らパーソナリティをこなしたこともある。快活で個性豊かな大谷人の一人だ。

 入試広報センター長としても12年目。高校の大学進学実績を強化し、学校の信頼を高めることに尽力してきた。合格実績は着実に伸び続け、2020年は難関国公立大を目指す「バタビアコース・マスタークラス」の76%が国公立大学に現役合格。後述する他のクラスからも関関同立、関東難関私大、薬学系学部に多くの合格者を出した。

 こうした成果が知られ、高校入試の志願者はこの10年余りで倍増。近年は関西の私立高校で最多、または2位を維持している。今春は3344人が志願し、内部進学107人を含む605人が入学した。高校の人気が高まるにつれ、中学校も「実力進学校へつながるコース」として受験者数が増えつつある。

 一方で梅垣副校長は「先取り授業やきめ細かい進学指導に評価をいただきながらも、大谷らしい闊達さが失われないだろうか、という気がかりがありました」と語る。

 生徒が活発に意見を言い、教師は彼らの挑戦を応援するのが同校の伝統だ。例えば校内コンビニ「Yショップ」はそもそもは生徒たちが提案し、開店した。「『大学にコンビニがあるなら高校にあってもいい。マナーやごみ問題と向き合う教材です』なんて、なかなか説得力がありました(笑)」(梅垣副校長)

 そんな自主性や行動力を尊重してきたのだが、梅垣副校長には生徒たちが失敗を恐れて発言しなくなってきたように見え始めた。とりわけ自己を確立していく年頃の中学生たちにそのムードを感じたという。「私たちにとっての『いい子』を期待し過ぎているのではないか。学校が楽しいと思えるように、もう一度、見直そうとしているところです」と語る。

 具体的には、学習を優先して減らしていた中学校の学校行事を復活させ、クラブ活動を活性化したいという。そんな雰囲気の中、生徒からは新規クラブの設立希望が出てきた。予算や顧問のことなどクリアしなければならない課題はあるものの「よう言うた、責任持って頑張りやと後押ししてあげたい」と梅垣副校長は嬉しそうだ。

生徒を見守るバタビアシステム
高校グローバルクラスを新設

飯山 等 校長

 学校理念の「樹心」は親鸞聖人の言葉、「心の弘誓の仏地に樹て」から引いたもの。「一人ひとりが大きないのちの働きかけによってこの世に生をうけ、生かされているという基盤に立って、自他のために精一杯生き切る人になろう」という呼びかけだ。最近は、この願いを現代風に読み替えた「TOBE HUMAN=人となる」を教育目標に掲げている。

 「樹心」にちなみ、同校では中学高校の6年間を植物の生長になぞらえて、根帶期(中1・中2)、幹練期(中3・高1・高2)、結実期(高3)に分けている。生徒が自分らしく根を張り、幹を伸ばし、実をつけられるよう見守るために1960年から導入しているのが「バタビアシステム」だ。

 これはアメリカ・ニューヨーク州バタビア市の学校で実践されていた授業の方法で、担任が生徒と一緒に授業を受け、一人ひとりの学習状況に目を配る。学習の不安や学校生活の悩みごとを見逃さず、生徒が安心して過ごせるこのシステムを「バタ担」と呼び、中学校で受け継がれている。

 高校生活は大谷中学校からの内部進学生と高校編入生の出会いから始まる。内部進学生が高校授業を先取り学習している一方で、高校編入生は激戦入試を勝ち抜いた強者たちだ。公立進学校と併願の末、大谷高校に入学を決めた生徒もおり、学習意欲や理解力が高い。両者は互いに良い刺激を受けながら努力し、仲間意識を育んでいく。

 高校には4つのコース・クラスがある。難関国公立大を目指す「バタビアコース・マスタークラス」、難関私大を目標とする「バタビアコース・コアクラス」、クラブ活動に打ち込みながら現役合格を目指す「インテグラルコース」。そして昨年度、国際教育に特化した「バタビアコース・グローバルクラス」を開設した。

 グローバルクラスは1年次と2年次に4週間の海外留学など、国際人としての基礎を築くための学びが特色。英語コミュニケーションや異文化理解教育に力を入れるのはもちろん、国際交流にはまず自国の文化を知り、発信できることが大切と捉え、伝統芸能や美術工芸、寺社仏閣に触れて日本文化を見つめ直す授業を設けている。昨年は「日本料理を学ぶ」と題して、料亭の板前さんを講師に招き、鱧料理実習を行った。

 さらに「模擬国連」を授業に取り入れている。模擬国連では生徒たちが一国の大使となり、議決採択を目標に議論を重ねる。さまざまな国の課題や事情を知り、各国の利益と世界の調和を考えることでグローバルな視野を養う。

 新設クラスのため最初の卒業生が巣立つのは来年度。留学体験や独自の授業で培ったプレゼン力は推薦入試での国内進学や海外大学への進学の強みになりそうだ。やがては世界の課題解決や国際平和に貢献できる人材が育つことが期待されている。

クラブ活動と学習の文武両道
国際交流や学校行事も盛ん

 活発なクラブ活動は同校の魅力の一つ。クラブ加入率は高く、高3まで活動を続けながら希望の進路を実現する生徒もいる。8割近い生徒がクラブ活動に打ち込むインテグラルコースでは放課後補習講座で学習をフォローしており、充実した指定校推薦や協定校推薦を中心に多くの生徒が4年制大学に進学する。

 ユニークなのは高校にしかないクラブ活動に中学生が加入できることだ。中学生を指導することは高校生にとって良い経験になり、先輩と後輩の絆も深まる。現在は競技かるた部、柔道部、写真部に中学生が参加している。

 海外体験や国際交流の機会は多く、中学校ではシンガポールでの校外学習を実施する予定。多民族国家であり、各国の企業が進出するビジネスの要衝を訪ね、現地で活躍する日本人の職場を見学し、現地中学生と交流する。

 高校の研修旅行はハワイ、グアム、ケアンズ、北海道、沖縄から選択し、現地の豊かな自然と文化に触れる。さらに自由参加型のニュージーランド、アメリカでの語学研修を実施。また、姉妹校の韓国・水原女子高等学校とは互いの生徒が訪問し合っている。

 「韓流カルチャーに慣れ親しんでいる世代なので韓国の生徒とすぐに仲良くなるんです。最終日は涙で別れを惜しんでいますよ」(梅垣副校長)

 学校行事にも全力で取り組み、盛り上げる。中学校の演劇コンクールはクラスごとに台本から衣裳まで生徒たちの手でつくりあげて上演する。高校の学園祭は来場者が5000人を超える、京都一、盛大な学園祭として知られている。

新体育館と新講堂が完成
安全で快適な集いの場所に

 今年度は新型コロナウイルス感染拡大予防のため6月7日まで臨時休校が続いた。休校期間中はオンライン授業を実施し、先生たちは生徒が提出する課題に学習指導とメッセージを書き添えて返送し続けた。

 「手探りの作業でしたが、登校できない生徒を励まし、学習習慣を維持しようと教師たちが頑張ってくれました」と梅垣副校長は振り返る。課題の提出・採点のために構築した先生と生徒間の個々のネットワークは学校が再開した今も、学習相談に活用できる。

 「コロナ禍で得た新しいつながりです。これを介して今まで以上に親身なアドバイスができます。ピンチをチャンスに変えていきたいですね」

 全国の学校が休校の遅れを取り戻すために夏休みの短縮や学校行事の中止を決めたが、同校では協議を重ねた上で、海外研修以外の学校行事は減らさずに授業日数を確保する予定だ。このため1学期の終業式は8月12日。

 「学校行事は仲間との絆を強くし、一生の思い出が生まれる大切な機会。安全にできる方法を考え抜いて、対策をした上で催行したいと考えています」

 幸いだったのはこの春、新体育館「智身館」と新講堂「樹心閣」が完成したことだ。智身館はバスケットボールコートが3面とれる関西最大級のスケール。樹心閣はエアコン完備で換気ができる。これらの新施設を活用して、ソーシャルディスタンスを保ちながら演劇コンクールや室内イベントを開催できそうだという。

 現在はグラウンドの人工芝化が進行中。次いで新図書館建設、旧体育館跡にホール新設を予定している。これらは回廊でつながり、回廊に立てば学校の全景を見渡せるようにする計画だ。

 「生徒が自分らしく成長するには安心して過ごせる土壌が必要です」と梅垣副校長は言う。同校には先生方が温かく見守り、学校行事の折には保護者やOBが手弁当で応援に駆けつける恵まれた土壌がある。多くの人のつながりが次の大谷人を育てているのだ。

 「与えられた命に感謝し、自他のために生き抜く」という理念に基づき、常に時代が求める力を育んできた。社会の国際化、多様化が加速する今、新時代に貢献できる次世代が育っている。

 
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