人気の秘密は「チームはつとん」
一人ひとりを伸ばす教育に評価
この春の中学・高校入試での人気について平井校長は「中学受験の志願者・受験者が過去最高という状況にスタッフ一同、改革の成果を感じています」と語る。
多くの保護者や受験生に支持された一番のポイントは「期待値」と「成長度」であり、その根底にあるには集団指導体制によるカリキュラム・マネジメントだ。同校では、組織的運営を『チームはつとん』と表現しているが、〝生徒ファースト〞を主眼においたその取り組みが大きく評価された形だ。
2019年度から平日の授業時間を6時限までとし、「大学入学共通テスト」対策となる基礎・基本を徹底、7〜8時限は校内予備校「はつとんゼミ」による大学受験対策としている。同ゼミはオプションではあるが、1000人以上の生徒が登録して受講するという。
加えて、5教科教員の自主的な企画・立案による「超進学校化プロジェクト」も昨年スタート。「EnglishRoom」の設置(英語)や、ビブリオバトル(国語)や「観光甲子園」(社会)などの多彩な活動を展開し、〝学びの選択〞を可能にしている。ビブリオバトル全国大会で優秀賞に輝いた生徒や、歴史能力検定1級を取った生徒も出てきている。
また、ICT化を全教科で行っているが、数学ではAI型教材「Qubena(キュビナ)」を全学年に導入、EdTech 教育を推進している。AIが生徒一人ひとりの理解度に応じて問題を出題し、個別最適学習(アダプティブ・ラーニング)ができるようにもした。どの生徒にもマッチする学び方で「はつとんなら、学力を伸ばしてくれる」という期待が大きく膨らんでいる。
明るく楽しい進学校
文化祭や部活動も活発に
もう一つ、同校で大事にしているのは「生徒の自主性」だ。『超進学校化宣言』の下、生徒個々の「進路満足度100%」を目指して、アダプティブ・ラーニング(個別最適学習)に定着を進めつつ、「明るく楽しい進学校」創りをモットーにしているとのこと。2019年からは生徒会を発足(同校は開学以来、生徒会がなかった)。地元・寺内町でボランティア活動を行うなど、積極的に活動を行っている。平日に開催していた文化祭「初富Festa!」も土日の2日間の開催に。保護者会にも協力してもらい、来場者は倍以上に増えた。
部活動も新しく、ダンス同好会と茶道同好会が誕生、今年からクラブに昇格する。また、理科部と情報科学部を統合して「データサイエンス部」も発足。クラブ加入率は30%から70%にアップ。教員からも「生徒の表情が明るくなった」という声が上がっている。生徒が生き生きと、学生生活を謳歌できるようになったことも人気のカギとなっている。
来年度から3コースが始動
進路満足度は97%にアップ
平井 正朗 校長
今年からコースを改編し、「S特進探究コース」(S特)、「特進探究コース」(特進)の2コースとなった。さらに再来年からは「グローバル特進探究コース」(G特)も設置する。
S特は大阪府立・大阪市立・大阪教育大以上を目標とし、さらには東大・京大、医学部を目指すコース。G特のカリキュラムはS特と同じだが、英語に特化した課外でのオプション講座を用意し、中学卒業でCEFRA2レベル(英検準2級〜2級程度)以上、高校卒業段階でB1レベル(英検2級〜準1級程度)以上を目指す。特進は和歌山大レベルの国公立大と、関西大学や近畿大学などをターゲットとしている。
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昨春、東大3名をはじめ国公立大学や有名私大への合格者が増えたが、この春の大学進学実績では、それを上回る結果を打ち出した。国公私立大学に計1000名以上(711名→766名→1039名)が合格。大学の指定校推薦枠も500名以上(約100名増)となり、84名が利用。34期生(327名)の進路先は約9割が進学、「進路満足度」(担任報告)のクラス平均は97%(前年88%)。国公立大学の合格者総数増加(63名→76名→86名)に加えて、現役合格者の増加(49名→56名→66名)、医歯薬系の大幅増加(41名→37名→72名)、大阪府立+市大+教育大の合格者総数(11名→18名→24名)が3年間で2倍以上になり、有名私大(関関同立、産近甲龍)の合格者総数(294名→300名→377名)が大きく飛躍したこと、Ⅰ類に入学した生徒13名が国公立大学に合格している。
「本校のキャリア教育の根幹は生徒一人ひとりの夢の実現につきます」と平井校長は語る。
グローバル教育にも注力
超進学校へ、時代に合わせて変化
グローバル教育へも力を入れる。中3でのロサンゼルス語学研修はスタンフォード大学やシリコンバレーへ訪問も組み入れた。高1でのオックスフォード大学への短期留学に加え、ケンブリッジ大学にも行けることに。昨年からは系列大学である立命館アジア太平洋大学への「国内留学プログラム」も用意している。
実は今回の取材は新型コロナウイルスの影響で、W E B 会議ツール「Zoom」で行われた。すでに1人1台のタブレットPCを導入していた同校。緊急事態宣言による休校中も、生徒は朝制服に着替え、タブレットPCの前でホームルームや授業に参加。さらに隙間時間には「スタディサプリENGLISH」で英語の4技能5領域を勉強していた。
今後のグローバル教育についてもオンラインを活用して〝新しい生活様式〞に対応できる仕組みづくりを校内プロジェクトで検討していると平井校長。
「コロナ・ショックに対応するために政府・府の要請を遵守しつつ、オンラインによる授業や進路面談等を実践しています。同時にオンライン授業の課題も見えてきました。担任はより一層、生徒の自学自習の進捗状況を把握することが大切になりました。担任はティーチャーでなくファシリテーター。生徒の心情を聞き取り、勉強への道筋をつける役割が求められました。このパンデミックの期間、まさに答えのない課題に直面しましたが、最適解を求めるには、我々自身が日々変わっていくしかありません。それをリードするのが自分の役割だと思っています」と平井校長は語った。
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