ICT環境充実の高校新校舎が完成
画像・通信を活用する授業が始動
重厚な昭和の名建築である旧校舎。通りを一本挟んだ場所に、上宮学園中学校・上宮高等学校の高校新校舎が完成した。全教室に電子黒板とプロジェクターを設置し、本格化するアクティブラーニングとICT教育のための環境を整えた。なかでも教室は近年の学校建築に増えている正方形に近いデザイン。後ろの席でも先生や黒板との距離が遠くならないメリットがある。
同時に講堂、図書館、食堂も完成した。講堂での催事は各教室にライブ中継ができるため、学校祖・法然上人を偲ぶ例月の式典「御忌式」などに活用していく予定だ。図書館では旧館で使われてきた無垢材の書架と椅子・机を使い続けることにし、木の温もりのある新空間になっている。また食堂運営は冷凍食品を使わず、旬の食材でメニューを提供する業者と契約。育ち盛りの生徒たちの健康をサポートする。
こうした設備の最新化とともに、数年来進めてきたのが新しい授業への取り組みだ。ディスカッション形式の授業でコミュニケーション能力や課題発見力を伸ばすアクティブラーニングについては、(株)アクティブラーニング社の羽根拓也代表が同校の卒業生という縁から、教員が同社の研修を受けている。
また、デジタル教材の「みらいスクールステーション」を導入し、電子黒板やプロジェクターを活用。授業にゲームの要素や動画を取り入れて生徒を引き付け、疑問や意見を話し合う能動的な学びが始まっている。
ICT教育には学習支援ツールを生かしている。中学では「スタディサプリ」、高校では「クラッシー」を導入。生徒の端末に宿題やテストを配信して家庭学習をさせ、その進捗状況や集計を管理する。情報機器を使いこなす力を養い、学習指導の効率化も狙う。また、これらのツールで学校から保護者への情報発信も行っている。
なお、昭和レトロの雰囲気をたたえる旧校舎は名残惜しいが解体し、跡地はグランドに整備する。
英語力重視のグローバル教育
豊富な海外体験プログラムも
山縣 真平 校長
本校では日常で使いこなせる英語教育を重視してきた。中1からネイティブ講師による英語授業を行い、英検対策講座を受講できる。中3の修学旅行はシンガポールでホームステイを体験させ、ほかにもイングリッシュキャンプ、海外語学研修など、生きた英語学習の機会を用意している。
高校では任意で参加する海外語学研修がある。行き先はカナダ、フィリピン・セブ島、オーストラリア、イギリス。いずれもハードに勉強するプログラムで体験者の満足度は高い。そして、国公立大学進学クラスの「パワーコース」はアメリカへの勉学旅行、「英数コース」「プレップコース」はオーストラリアへの修学旅行でファームステイを体験し、生きた英語と異文化に触れる。また、放課後のオンライン英会話教室は、ネイティブ講師とネットを介してコミュニケーションできる人気の教室で、中学・高校とも多くの希望者が受講している。
進学実績では、今年、国公立大に35名、関関同立に85名、産近甲龍に127名が現役で合格した。大学進路指導の方針は、一人ひとりの将来を見据えた進学をかなえることだ。
「大学合格はゴールではなく、その先のキャリアへのスタートです。偏差値で輪切りにして、入試のテクニックだけ教え込むのではなく、生徒が描いている将来像のために、どんな大学や学部へ進むのがいいのかを一緒に考えます」と山縣真平校長。
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そのうえで、志望大学に向けて補講や放課後学習で実力を強化。高大連携枠で進学を目指す生徒はキャンパス見学でイメージを固める。また、指定校推薦で早くに進路が決まった生徒の気を引き締める狙いで、日本の有名大学で学ぶ留学生を招いて話を聞くエンパワーメントプログラムを実施している。「国づくりのために日本に勉強しに来た」という留学生たちと出会い、大学生活への自覚が高まるという。
こうして、新時代に国際的に活躍できる人材を送り出す教育に取り組みながら、仏教の学園として人間的な成長も支える。校訓の「正思明行」は物事を正しく見つめ、明らかに実行すること。この指針を具体化した「一、掃除 二、勤行 三、学問」を「学順」と呼んでいる。学順を実践できているかを振り返り、自身で5段階評価するのが「上宮ルーブリック」だ。生徒、担任、保護者の三者面談で確認しながら、高校卒業時にオール5に到達することを目指す。人としての成長を可視化した、上宮人の通知表と言える。
最新ニュースは2020年度から中学・高校の制服をリニューアルすること。中学男子の詰襟はグレーから黒に、首回りがV字型に開き、活動しやすいデザインに。中学女子はブレザースタイルから丸襟ブラウス・ノーカラージャケット・フレアスカートに変更する。高校男子は詰襟からブレザースタイルに。高校女子はスカートの色柄を一新し、リボンを大きくする。いずれも上品で清潔感のあるスタイルで、受験生たちの注目を集めそうだ。
「受験生の保護者のみなさんは男子校だった時代の硬派なイメージをお持ちかも知れませんが、今、高校は4割が女子生徒で明るく楽しい雰囲気になっています。安心してお子さんを預けていただきたいです」(山縣校長)
男子校から共学になり8年。その後も学校統合、新校舎設立を進めながら、国際化・IT化する社会に応じた教育改革に取り組んでいる。一方で、建学の精神を130年間、受け継いできた。変わらない理念と、挑み続ける姿勢が息づいている学園だ。
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