高校の入学者は9割の専願生
授業時間削減で英数特進も
部活可能
人口40万人都市の枚方市は、大阪・京都・奈良のほぼ中心の位置にあり交通の便も良い。
その枚方市にある東海大学付属大阪仰星高等学校中等部(以後:大阪仰星)は、枚方市駅から支線に乗り換え4分で到着する村野駅が最寄りとなる。この4分の違いで環境は大きく変化する。勉強や部活に心置きなく集中できる、緑豊かで静かな環境なのだ。特に2018年に人工芝化されたグラウンドは「真の文武両道」を体現させるためのベンチマークとなっている。
生徒募集対策室長でありサッカー部のコーチでもある渡邊紀尚先生に高校や中等部の現状を伺った。「今年、高校は390名が入学し9割が専願生でした。9割というのは大阪府で1位だったようです」
人気の一つは活発なクラブ活動(加入率87・9%)だという。近年、ラグビーやサッカー部等が全国で活躍し、女子では吹奏楽やバレー部などが追随している。受験生にとっては、それらがきっかけとなり、保護者にとっては大学実績も含め、文武のバランスを評価してくれたのだろうと話す。
大阪仰星の中高一貫教育には、国公立大や東海大医学部を目指す「英数特進コース」と、難関私立大や東海大、その他の大学を希望する「総合進学コース」がある。中1から高1までは共通カリキュラムで学び、高2からは英数特進では文系・理系を選択。総合進学では高2からⅠ類(国公立大・難関私大型)、Ⅱ類(私大型)に分類され、進路希望によってクラス編成が行われる。
高校の英数特進は、これまで月金水と8時間授業だったためクラブ活動をすることができなかった。しかし、今年度からは部活を可能にするため月曜日から金曜日までを7時間授業へと変更した。
「8時間授業の終了は18時。生徒たちの下校時間が19時ですから、部活の時間が取れなかったのです。国公立大を狙いながら、部活もできる環境を提供するために授業時間の削減に踏み切りました」
授業時間削減による教師陣の声は力強く、ICT教育の充実で授業の効率化が図れることや、一時間一時間のクオリティーを高めて行こうと言うことで一致している。
中等部2年のマレーシア海外研修
総合進学では授業時間増へ
中等部では野球・サッカー・ラグビー部が昨年の大阪大会で優勝を果たした。そのためメディアの露出も多く、今回の中学受験では良い意味でも悪い意味でも影響が出たという。
「90名の入学でした。保護者の中には伸び伸びと過ごさせたい、生徒の中でもハードルが高いのではと敬遠された感がありました」
だが、入部への条件や人数制限(加入率92・3%)もなく、「多くの中等部生は部活に勉強にと学校生活を満喫しています」と渡邊先生は話す。
一方、今年度の中等部では、これからの時代によりマッチした学習ができるように教育活動を展開している。その一つが、中2対象の6月17日から21日に3泊5日で行くマレーシアへの海外研修だ。本校では中3でハワイにある東海大学の施設を利用した語学研修を行っている。しかもオールイングリッシュのため、生徒にとっては容易ではない。
「ハワイ研修に向けて、語学の勉強や海外の経験を持たせようということです。今後、アジアの人たちとかかわることが多くなると見据えてマレーシアに決めました。国際社会で生き抜く力を少しでも身につけてくれればと期待しています」
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現在、生徒たちは現地の学校との交流がメインとなるため、日本の文化を伝えるためや英語でものを教えるための準備にかかっている。
二つ目の展開として。一般に英数特進コースは勉強に力を入れているという認識は持たれているが、総合進学コースは部活がメインとなって、勉強が二の次になっているイメージがある。それを払拭するために英語の授業時間を逆に1時間増やし、生徒たちの勉強への意欲を高めようということだ。また、英数特進に関しては高校での授業時間数を削減したことから、バランスを取って中等部の授業時間数を減らしている。よって中等部でも部活可能となった。
学びの考えとICT教育
大学実績にも影響大
大阪仰星が考える教育は"中高一貫教育の中学課程での学びは急ぐ必要はない。基礎をじっくりと指導することで高校での学びに成長が現れる"というもの。こういった考えは中学入試にも反映されており、「総合進学と公立中学の進度はほぼ同じです。勉強に対するプレッシャーはそれほど感じる必要はないのです」と渡邊先生は話している。
本校では6年前からICT教育に取り組み授業は大きく進化した。各教室にプロジェクターが設置され、中1から高3まで全員がiPadを所持しての勉強が当たり前になった。授業の効率化による時間の余裕も生まれ、生徒の物事をじっくりと考える力や人に伝える力がこれまで以上に付いてきているという。
今年度の大学合格実績も生徒の頑張りで良い結果が出ている。国公立25名、関関同立94名(昨年比22名増)、東海大44名(昨年比10名増)など。国公立に関しては昨年と大きな変わりはないが、東海大への人気は上昇中だ。パイロットライセンスが取れる工学部航空宇宙学科や日本で唯一の海洋学部など特色ある学部があり、98%という高い就職率も人気の要因となっている。
加えて、先述の「中高生徒全員が部活動可能に!」という背景には、もう一つ理由があるという。大学入試が現高2から変更となるが、出願時に"ポートフォリオ"を提出させる大学が増えてきている。高校時代に何をやってきたかといういわゆる、自己調査書のようなものであり、それを点数化し大学合格の一つの指標とするためだ。大阪仰星ではこういったことまで考えて学校教育を実践しているのだ。
渡邊先生は「本校らしさがより、大学入試に評価して頂ける環境になったと感じています。文科省が言う新学力観でいえば、フィットしている学校だとも思います」と自信を見せた。
(5月22日(水)本校にて取材)
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