最新の耐震設計を誇る校舎が完成
質量とも期待に応える授業で受験を支える
大阪北部に位置する豊中市にあり自然豊かな緑地公園に隣接している。まわりは閑静な住宅街という抜群の学習環境を持つ履正社。この春、新しい校舎が完成し、話題を集めている。最新の耐震設計に基づいた4階建ての建物は、吹き抜けやガラス張りの空間、中庭を設け、光が降り注ぐ明るい校舎になっている。500人収容のホールを始め、100席の自習ブースを備えた図書館、オープンテラスのある食堂など、最新の設備が整っている。中学、高校ともに新校舎で学んでおり、9月には人工芝を敷き詰めた新しいグラウンドも完成する予定だ。
「3年もしくは6年間、生徒が安心して通えるように、最新の耐震設計で建てました」と話してくれたのは、就任11年目の小森重喜校長。四條畷高校や北野高校など、府立の進学校で勤務されたベテランの教育者である。
新校舎以外の設備も充実しており、アリーナや柔剣道場、トレーニングセンターを備えた総合体育館の他、隣接する茨木市には野球場やサッカー場も所有している。
高校は、3つのコースがある。2018年度から新たな教育システムを採用し、コースごとに一人ひとりが思い描く高校生活の実現を後押しする。東大、京大などの難関大学を目指す「集約文理コース・T類」は、早朝の15分間テストに始まり、平日は7時限、土曜日は5時限まで授業を行う。加えて放課後には100分間の進学講座を実施。3年間で117単位の基礎学習をこなす。
難関私大を目指す「集約文理コース・U類」は、平日は6時限、土曜は4時限の授業に加え、週に3日100分間放課後進学講座を実施。他の3日は課外活動として、授業で学んだ箇所を見直し疑問点を解決する「復習・演習講座」、気の合う仲間と気分転換する「クラブ活動」、自宅学習や習い事など自由な時間を過ごす「帰宅研修」のいずれかを選ぶことができる。今春は両コースを合わせ、京大、阪大、神戸大、東京医科歯科大、防衛医大を始めとする国公立大に54名が合格を果たしている。また、早稲田大、慶應大、同志社大などの難関私大にも多数が進学している。
強豪のクラブ生も勉強には手を抜かず
ほぼ全員が大学への進学を目指す
クラブ活動と学習を両立しているのが「普通コース・V類」。この春の選抜高校野球大会で準優勝を果たした野球部を始め、創部3年目にして全国優勝に輝いた女子硬式野球部、サッカー部、剣道部、テニス部など9つの強化クラブに所属する生徒が学んでいる。スポーツの強豪クラブが多い履正社だが、他校のような寮生活ではなく、ほぼ全員が自宅からの通学生である。
「本校では、特待生制度は設けていません。野球部は放課後にバスで茨木市のグラウンドへ行き、8時まで練習しています。その後、電車やバスで帰宅しますので、大変だと思いますが、V類の生徒もほぼ大学へ進学するんです。それも一般入試を受験する場合が多いので、学習面も他のコースと遜色のないカリキュラムになっています」。
クラブで忙しいからと言って妥協はしない。わずかな時間でも勉強をして受験に備えている。ちなみに、ドラフト上位でプロ野球へ入団した生徒も多いが、彼らもテストではほぼ満点だったそうだ。
一方、中学校には2コースが設けられている。外部の難関高校への進学を目指す「3ヵ年独立コース」からは、灘、洛南、東大寺、西大和、北野などの進学校へ多数の生徒が合格を果たしている。「6ヵ年特進コース」は、内部進学を前提に、長期スパンで難関国公立、難関私大を目指しており、京大、阪大、神戸大などへの進学実績を出している。両コースとも10から20名程度の少人数教育を行っており、2、3年次における英語と数学の授業は習熟度別で行われる。平日、土曜日とも放課後には進学講座(5教科)を開催しており、生徒は無料で受講できる。 |
人間性を育むための厳格なしつけ教育
地域に愛される学校でありたい
学習に対してだけでなく、履正社は厳格なしつけでも知られている。
「本校を志望すると、中学や塾の先生から『履正社へ行ってついていけるのか?』と心配の声があると聞きますが、確かに学習もしつけも厳しいです。これは、親御さんからお預かりする大切な生徒に、満足できる結果を出してもらいたいからです。教育は人間性を養っていくもの。社会で生きていくには、何より人格が重視されます。その基礎を形成するのが学校の役割だと思っています。どんな社会でも通用する人間を育てていくのが本校の信条です」。
そんな履正社には、地元の豊能エリア(豊中、池田、箕面、能勢、豊能)から通う生徒が多い。何より地域を大切にするという方針を掲げているためだ。豊中市との連携も密にしており、校舎の建替え時には、グラウンドが使えなくなるので体育の授業ができない、と相談を持ちかけたところ、市が保有するグラウンドを貸してくれた。また、工事中も近隣の住民は温かく見守ってくれたという。地元に愛される学校でないと、発展していかない。小森校長はそう断言する。
校名のもととなった「履正不畏(りせいふい)」は、自ら正しいと信ずることを、何ものにも畏れずに勇気と責任をもって実践するという意味である。この言葉を基軸にして、生徒の可能性を伸ばす教育を実践していると感じた。
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