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中学・高校受験:学びネット

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大谷中学校・高等学校

 
  時代と社会の変化に柔軟に対応しながら、
142年変わらぬ樹心の教育を未来へ
大谷中学校・高等学校は1875年に東本願寺が設置母体となって創立された京都の伝統校である。学校理念である「樹心=人と成る」は、「今、ここ」が安心していられる「時間・空間」となり、それが「心を樹(た)てる」ということを意味する。一人ひとりの存在そのものを認め、人間的成長を促す教育方針は、時代を超えて受け継がれ、生徒が自分らしく伸び伸びと育つ豊かな土壌を作りあげている。今年からは大規模な施設リニューアル計画がスタート。体育館を手始めに、ハード面においてもさらに快適な学習環境を整えていく。

校 長: 飯山 等
住 所: 〒605-0965 京都市東山区今熊野池田町12
電 話: 075-541-1312
交 通: JR奈良線、京阪本線「東福寺」駅より徒歩5分
学生数: 中学校 284名
高等学校 1,483名 (2017.9.1現在)
ホームページ: http://www.otani.ed.jp/

 

過去と未来を含む今
自分を育てる

 「この大谷で、自分を素敵に育てあげられていますか」

 飯山等校長が生徒たちに語りかける。

 この日は、高校の1学期終業式。体育館を埋め尽くすおよそ1,500人が耳を傾ける。

 「育つ」ということから、飯山校長は自身の孫を例に取り上げて話を続ける。

 「2週間ほど前に孫に会いに行きました。孫は1歳8ヵ月。目の前にあるものを指されたら、『あいあい』や『わんわん』などが言えるようになっています。孫の母親、つまり私の娘が私を指したとき、初めて『じいちゃん』と呼んでくれました。家内にも『ばあちゃん』と呼びかけました。

 それから1週間後、娘から動画が届きました。孫の好きな歌がどこからか聞こえていて、孫が誰もいない椅子を指して『ここ、ばあちゃん、ここ』と言っている。どうやら、「この前ばあちゃんがここにいて、この歌を歌ってくれた」というようなことらしい。

 1週間前まで、彼にとって『今』は『今』でしかなかった。しかし、ほんの数日で彼の『今』は過去を含むようになった。人間になっていくのだなと思いました。

 君たちにとって『今』は、過去だけでなく明日や来年という未来も含んでいる『今』です。豊かな過去を含んでいることで、未来が開いていきます。

 今この終業式は、どのような過去や未来を含んでの終業式であるのか。ここにいる私たち皆が、それぞれより良き世の人になっていくために心に問いかけ、胸に刻みたいと思います。皆にとって素敵な9月が始められることを願っています。」

 1学期の終業式で、こう語り終えた飯山校長は、少しの間を置いて「大谷の将来計画」について切り出す。生徒たちの間に一瞬ざわめきが起きる。

 計画の第1期は、体育館建設。面積は現在の2倍で、高さは12メートル。バスケットボールコートが3面とれる広さと、バレーボールの公式戦ができる高さを兼ねそなえている。柔道場や剣道場、トレーニングルーム、部室も併設する。その後グラウンドも人工芝化する予定だ。完成は2019年7月。さらに第2期、第3期工事が行われ、多目的ホールや講堂などの建設が続く。多目的ホールには大学にあるようなお洒落なカフェも入るとのこと。

 発表後、飯山校長は高校2・3年生に向けて、体育館完成が彼らの卒業後になってしまうことを詫びたうえで、生徒から要望が出ていた体育館や校舎内の洗面所を夏休み中に一新することを報告。さらに、「できるだけのことをしたいので意見を聞かせてください」と述べた。最後に「元気な姿で9月に会いましょう」と呼びかけると、生徒たちは大きな拍手で応えた。

発想を転換しチャンスをつかむ

 中学と高校の普通教室が入る西館は、約10年前に建てられた。その外壁中央に、びっしりと漢字が彫り込まれている。

 入試広報センター長の梅垣道行教諭は、「当時の在校生たちが、それぞれ好きな漢字1文字を板に彫って型を作り、コンクリートを流し込んで壁を作りました。校舎の完成前に卒業してしまう高校3年生にとっては、彼らの存在を形にして残す作業となったのです」と説明する。

 西館の5階部分に校章が刻まれ、その周りから2階部分に至るまで漢字が並んでいる。その数は約1,000文字。1文字1文字目で追っていくと、「夢」「信」「友」「楽」「魏」など、その漢字を選んだ生徒の思いが伝わってくるようだ。「蹴」を彫ったのはサッカー部の生徒だろうか。中には横向きの文字や、版画と勘違いしたのか反転した文字もあり、面白いアクセントとなっている。

 漢字を残した生徒たちの最高学年はすでに30代。

 「学校に戻ってくると、ここに来て懐かしそうに見ています。当時、高校3年生だった卒業生もこの校舎で過ごすことはできなかったけれど、思い出深い場所になりました」と。

 今回も同じ状況である。終業式で飯山校長が最後に生徒たちから意見を募ったのは、こういうことだったのだ。新体育館の恩恵にはあずかれないが、自分たちのモニュメントを残すことはできる。

 「学校の将来構想は自分たちには関係ないと切り捨てずに、自分たちにも何かできるのではないかと思ってもらいたい。いわばピンチをチャンスに変える発想です」

 ただし、漢字を彫るという二番煎じはNG。

 「斬新なアイデアを期待しています」と梅垣教諭は笑顔で話す。

 今の高校2・3年生が、これから先、何十年も受け継がれていく体育館に、どのような足跡を残していくのか。楽しみである。

100キロ駅伝もコンビニも
排除しない教育

 今年創立142年目の同校では、先輩から後輩へ多くのものが継承されている。

 その代表例が京都最大規模といわれる学園祭である。クラスごとに長い時間をかけて準備したステージや教室での出し物は、楽しさ満載。毎年多くの来場者で大変な賑わいを見せる。

 「先輩から受け継がれてきた遺伝子のようなものです。皆に楽しんでもらいたいという『おもてなしの心』が昨年より今年、今年よりも来年と学園祭を進化させてきました」

 そう話す梅垣教諭も同校の卒業生。自身の高校3年の学園祭では、3代前の先輩から、「この教室に入ったクラスはパロディ映画をつくること」という指令が残されていた。

 その先輩とは、越前屋俵太氏。越前屋俵太氏らが高校時代にパロディ映画のVol.1と2を制作し、続く学年がVol.3、4と繋ぎ、梅垣教諭のクラスがVol.5をつくることになった。そこで、映画のシーンに取り入れるために、朝日放送「おはよう朝日です」という番組の中継現場に乗り込み、テレビに映ることに成功。さらにスタジオにも呼ばれ、番組に取り上げられた。それも映画の中の1シーンとして入っている。

 「最高の学園祭になりました」と、高校時代に戻ったような笑顔を見せる。

 20数年後、梅垣教諭が担任した高校3年生が学園祭での「100キロ駅伝」を企画した。スタート地点は福井県敦賀市。学園祭が終了する16時までにゴールするため、企画書には「午前3時に出走」とある。普通なら安全面を考慮してとても許可できない。しかし、生徒の思いを実現させたいと先生方や保護者が協力。学園祭当日、クラスの一人ひとりがたすきを繋いで100qを走りきった。

 「生徒がいつの間にかKBS京都に電話していて、テレビ局の取材が入りました」

 それも先輩から受け継いだ遺伝子のなせる技に違いない。

 生徒の要望や意見をできるだけ掬いあげるというのが、大谷のスタンスだ。そのために生徒会が「目安箱」を設置している。

 2013年にオープンした学内のコンビニもそもそもは生徒のふとした意見が発端。

 「日本の教育は、学校に必要のないものは持ってくるなという『排除の論理』が入っています。しかし、子どもたちがルールやマナーを守って利用できることが一番の理想です」

 いまの社会から、コンビニや携帯電話が消えることはない。ならば、その社会のなかで共存していけるように導き、良き世の人への成長を見守っていきたい。これもまた、伝統として受け継がれてきた教育方針である。

伝統を受け継ぎ
未来に確かなメッセージを

 今春の高校入試で大谷高校は、前年を上回る3,168人の志願者を集めた。京都・大阪・滋賀・奈良で最多である。

 同校は、1997年に男子校から共学校へと移行。2007年には高校のバタビアコースに国公立大学進学を目標とするマスタークラスを新設。時代の変化に柔軟に対応し、教育システムのリニューアルを進めてきた。いまや関西で最も人気ある私立進学校のひとつである。

 ICT教育やグローバル教育といった新しい流れに対しても取り組みが進んでいる。

 ICT教育は、すでに学内全域にWi-Fi環境を整備し、生徒はレポート作成などにストレスなくノートパソコンやタブレットを活用できる。

 グローバル教育に関しては、高校の選択授業に「グローバルスタディーズ」を開設。水の問題など、いま世界で課題となっているテーマを研究し、国際人としての基礎を養う。希望者は夏休みにボストンで合宿。英語コミュニケーション能力を鍛え、「模擬国連」に参加する。

 中学校では今年入学した学年から校外学習の行き先が沖縄からシンガポールに変わる。5泊6日の日程で、現地の学校と交流し、在留企業を訪問する。

 「現地で活躍するビジネスパーソンに、外国の人たちと協働するために何が必要か、日本人として何を大切にすべきか、ということについて生きたアドバイスを期待しています」

 しかし、こうした取り組みが生徒募集の場面で大きく広報されることはない。

 「興味のある人が、先輩たちからの口コミ等で、そこにたどり着くことに意味がある」と梅垣教諭は言い切る。

 今、ここにいる生徒が、安心して自らを育てあげられる場所であることが大谷の教育である。目の前にいる生徒に、教師陣がどのような思いで関わっているのか、生徒たちがどんな笑顔を見せてくれているのかが大切だという。

 梅垣教諭は、「伝統を受け継ぎながら、未来に確かなメッセージを送る学校でありたい。生徒たちにも、今を生きると同時に未来にどんなバトンを渡すのか常に考えられる人であってほしい」と願っている。

 
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