タブレットを
アウトプット学習に活用
園田学園中学校高等学校は、2020年に予定されている「高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革」を見据え、今年度より中学1・2年生全員にタブレットを配付。ICT教育を推進している。
石井稔校長は、「大学入試でコンピュータを使用して出題や解答を行うことが検討されています。これからは、ICTを『道具』として使いこなしていかなければなりません」と話す。
来年度は中学生全員、3年後には中高生全員がタブレットを所持することになる。
タブレット導入に当たっては昨年度より各教科で研修を重ねてきた。現在は全教科の授業に導入している。プリントの代わりに問題を配信したり、英語の音読練習や数学の立体図形の学習。体育の実技は録画して本人にフィードバックなど、さまざまな場面で活用し、授業効率をアップさせている。生徒も、タブレットを利用して気軽に先生に質問したり、グループ学習の調べもの、家庭学習など、自由自在に使いこなしている。
さらに、石井校長が期待しているのは、タブレット導入によりアウトプット学習がやりやすくなることだ。
「従来は知識を貯め込むインプット学習が主体で、アウトプットする力が弱かった。今後は基礎学力をしっかり鍛えたうえで、プラスアルファの多様な知識を組み合わせてアウトプットできる力が求められます」
昨年度の中学1年生は「世界遺産」をテーマにグループ学習を行った。ただし、単に各地の世界遺産を調べるのではなく、世界遺産を別荘あるいは別荘地として売り出すためのプレゼンテーションである。そのために、立地やアクセス、眺め、建物の豪華さなど、何をセールスポイントにするのかという視点が必要となる。生徒たちはベルサイユ宮殿やタージ・マハルなどを別荘に仕立て上げ、宣伝用のポスターを制作してプレゼンテーションを行った。
中学3年の最終段階ではディベート大会が開かれる。テーマは、「動物園での野生動物の飼育」、「安楽死」など。生徒はグループに分かれ、それぞれテーマごとに議論をたたかわせる。動物園否定派が「動物園のほとんどが赤字であり、動物にとっても不自然なことはすべきでない」と主張すると、肯定派は旭山動物園の例を挙げて反論する。自分の意見を主張するためには、充分なデータを用意して根拠を明らかにしなければならない。今後はタブレットを活用して情報を収集し、さらに深い議論が期待できそうだ。
「自分たちで考えて、様々な知識を取り込み、融合させて再構成する。情報のコピーではなく、どれだけ自分のものにできたかを見たいですね」
一人ひとりの未来へ
「女性学」の可能性を追求
園田学園のめざす女性像は、社会の中で自立し、知性と豊かな情操、品性を身に付けた女性である。そのための独自の取り組みが、「女性学−女性の学び」だ。中高を通して日本の伝統文化や社会で役立つ実践的マナーを学ぶ。
中学1年生ではお辞儀や言葉遣いなどのマナーと茶道、2年生は華道・短歌・俳句、3年生は着付け・書の作法を履修する。習うだけでなく、学校説明会やニュージーランド研修などで披露する機会も多い。これほど伝統文化を総合的に体験できるのは園田学園ならではのこと。生徒たちは、一つひとつを身に付けて少しずつ成長を遂げていく。中学3年になると浴衣をきれいに着付けるだけでなく、立ち居振る舞いにも落ち着きが見られるようになる。
しかし石井校長は、「女性学は、まだ発展途上。伝統文化は独立して存在しているものではありません。一つひとつの作法を身に付けるだけでなく、それぞれが生徒のなかで相互に作用し、自分がどのように生きていくのかというところまで深めさせたい」と話す。
「茶道で教えられたこと、マナーで学んだこと、着付けでの振る舞い、全部関係していると思います」と、日本文化の底に流れる精神性に気づいている生徒もいる。この気づきを生徒たちの未来にどう活かせるか。
「『女性学』を本校の1本の柱として、可能性を追求していきたい」と石井校長。
そのため、いま園田学園では、トータルとしての「女性学」をさらにブラッシュアップする議論が行われている。 |
部活も勉強も団体戦で
文武両道を貫く
園田学園のモットーは「文武両道」。中高ともにクラブ活動が盛んだ。中学校は全員、高校生もほとんどの生徒がクラブに加入している。相対的に運動部の部員数の方が多い。陸上やバドミントン、テニスなど全国大会レベルのクラブが揃う。特徴的なのは、高校の特進クラスの生徒も強豪クラブで活躍していることだ。
「バドミントンのエースペアも特進の生徒。選抜で全国8位に入り、強化合宿に参加しています」と石井校長は誇らしげだ。
特進クラスは毎日7時間目に特別講座を設けているが、部活の時間と重なってしまう。そのため19時から同じ講座を用意し、部活と両立できるように配慮している。
「部活の後で勉強に集中しています。皆も頑張っているから自分も頑張れる。『部活も勉強も団体戦』は、本校の伝統です」
女性学を身に付けて、文武両道。まさにこれからの社会を凛として生き抜く女性像といえる。
さらに、いま高校生有志による「挨拶プロジェクト」が活発に活動している。「未来のあなたは挨拶できていますか」をキャッチフレーズに、生徒総会で全校生徒にアピール。自分はどんな挨拶ができているかを自己評価するチェックシートも作成した。
「立ち止まって会釈してくれる生徒が目につきだしました。感じの良い挨拶は将来の自分の可能性を広げます。自然に挨拶が出るような学校にしていきたい」と石井校長。
来春には6階建ての新校舎が完成。プロジェクターや専用回線などICT環境を完備しながら、全体的に木の温もりが感じられる設計だ。4月からは全生徒が新校舎に移り、伝統のうえに、いまを生きる女性として新たな歴史を刻んでいくことになる。
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