今春の国公立大合格者は昨年の2倍
私立中フェアでは保護者からの質問が
上宮太子はこの春、進学実績を大きく伸ばした。高校には「特進」と「総合進学」の2コースがあるが、特進の半数(24名中12名)が神戸大、大阪市大、大阪府大、大阪教育大などの国公立大へと合格。これは前年比186%の伸び率。私大を見ても関関同立は183%、産近甲龍は138%と躍進を見せている。こういう好実績が呼び水となり、6月に行われた大阪府私立中フェアでは、ブースへの来場者が倍増。入試や教科に関して質問をする保護者が詰めかけた。現在の生徒男女比は7対3。「女子は3割と少ないですが、実に存在感がありますよ」と話すのは進路指導部長の漁野篤史先生。
同校では、学習指導要領の約2倍の授業時間を確保しており、中1は7限、中2以上は8限(週2日)、高2になると月?金まで8限授業を行っている。様々な独自教育を採用しているのも特長だ。まずは「全国模試最終目標偏差値」を設定している点。特進は偏差値65、総合進学は55。年に3、4回行われる模試で、この数値を目標としている。
「生徒には常に高い志を持ってほしい。だからといって寝る間を惜しんで勉強をさせているわけじゃありません。あくまでも一つの目安。具体的な数値目標を定めた方が生徒も意欲が出るんです」
「国際理解教育推進プロジェクト」は、国際社会でたくましく生きていくための課外授業だ。中1から高3まで様々なカリキュラムが用意されている。例えば、中1では英単語を正確に書く力をつけるためのスペリングコンテストを実施。中2になると協定校である近畿大学の英語村(英語研修施設)を訪問。毎年、春休みには希望制でオーストラリアへ2週間の語学研修を行っている。今春は定員35名のところ、48名が参加を希望し、留学への関心が高まっている。また、英語で一定の成績を収めた生徒には、「ACEプログラム」と称するイギリス語学研修も実施してきた。
来春から中学校入試に適性検査を導入
思考力、表現力を重視する方向へ
学校行事では「縦割りの活動」を行っているのも伝統だ。校外学習や体育大会では、全校生が学年を超えて4つのチームを結成。校長、教頭、生徒会顧問以外の教職員もチームに参加する。
「入学した時から同じチームで6年間を過ごします。メンバーが変わらないので、継続性をもった活動できますし、先輩後輩の絆も強くなる。見ていると、応援合戦などにチームの個性が出ていて楽しいですよ」
学年やクラスの垣根を超えた交流を目指して始めた縦割り活動だが、活動を通していつしかリーダーシップが養われ、主体性や協調性も育むようになったという。2020年の大学入試改革では、こういった能力を重視する試験に変わっていく予定だが、期せずして将来を見据えた取組みになっていたわけだ。
中学はこれまで2コース制であったが、今年度から「選抜特進コース」のみに改編。そして来春の入試から、従来の国語・算数に加え、作文を課す適正型入試を導入する予定だ。これも論理的思考力、表現力が重視される2020年大学入試を見据えての変革である。また、学科試験のみの学力検査型入試、自己推薦型入試もこれまで通り行うので、生徒は自分の能力に応じた入試を選ぶことができる。
進路指導面では、「ガンバリシステム」も行っている。例えば、長期休暇には博物館や美術館へ行き、そこで見聞したことを紹介する。定期試験では特にがんばった生徒を表彰。結果だけに注目するのではなく、がんばった過程を評価する。また、読書も奨励。読んだ本は感想文を添えて「読書おすすめカード」として掲示している。 |
アクセスの良い立地環境
周囲には貴重な史跡が点在
上宮太子の歴史は、1899年(明治23年)に大阪市天王寺区に設立された浄土宗大阪支校にまでさかのぼる。現在、同地には系列の上宮中学校・高校があるが、系列校という位置付けで、1991年、正式に上宮太子中高としてスタートを切った。
「当時は、大阪市内から離れた場所で実験的な教育を試行したいという意向があったようです。こちらは環境が良い分、生徒も伸び伸びしていますし、いろいろなことができます」
同校のある太子町は、飛鳥時代から「近つ飛鳥」と呼ばれた歴史的に重要なエリア。町には日本最古の「官道」である竹内街道を始め、推古天皇陵、聖徳太子の墓、小野妹子の墓など基調な史跡が点在している。そんな長閑な環境にありながら、学校へのアクセスは便利である。近鉄長野線の喜志駅、南大阪線の上ノ太子駅、大阪線の河内国分駅、南海高野線の金剛駅からスクールバスが出ており、他に路線バスもある。記者も今回初めて訪問したが、予想以上に短時間で学校に到着したことに驚いた。
「アクセスが良いので、地元の富田林、羽曳野、河内長野、堺はもちろん、奈良から通学する生徒も少なくないんです。環境に関してはどこにも負けないと自負しています」
環境もさることながら、仏教精神を軸に据える学校だけに、宗教行事も多い。中高とも入学後に浄土宗の総本山、知恩院を訪れる。夏休みには法然上人が修行した比叡山の青龍寺を参拝。毎月25日には御忌式が行われ、全校生徒が法然上人の残した念仏の教えを暗誦する。こういった習慣のおかげか、他者への思いやりを持つ生徒が多い。
取材を終えて帰る道すがら、野球部の生徒が帽子を取って「こんにちは!」と元気な挨拶をしてくれた。こういうささやかなところにも、法然の教えがしっかり受け継がれていると感じた。
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