来春、リーダーとして必要な基礎教養を重視した
アーツサイエンスクラスを設立
近江兄弟社高校では2年前に学校改革委員会を立ち上げ、全教員が参加して討議を重ねてきた。その結果、2017年度を「改革1年目」と位置付け、様々な改革に着手していく構想だ。まず大きく変わるのは、クラス編成。現在、普通科には国公立大や難関私大を目指す「プロミネントクラス」と中堅私大を目指す「グローバルクラス」がある。このうち、プロミネントを「アーツサイエンスクラス」に改称し、授業内容も変えていく。また、2年次から理系・文系に分かれる設定を廃止。文理混合型HRとする。
「アーツサイエンスクラスではリベラルアーツ教育としての基礎教養を重視します。日本でリベラルアーツの最先端とされるのは国際基督教大学(ICU)ですが、その教育内容に習って、しっかりとした教養を身に付けていきます。文理の別を廃止するのは、いろいろな生徒が集まった方が刺激的で良い影響が出てくると判断したからです」と藤澤俊樹校長は意図を話してくれた。
カリキュラムとしては、「ヴォーリズアワー」という「総合的な学習の時間」を新設。広い意味でのキャリア教育を行っていく予定だ。
「歴史の長い学校なので、キャリア教育についても協力してくださるOBが地元にたくさんいらっしゃいます。その力をおおいに借りたい。地元ロータリークラブの支援を受け、高校生が国際交流活動や奉仕・ボランティア活動をする「インターアクトクラブ」も昨年、創設されました。」
高大連携を積極的に行っているのも特徴である。この3月にも、びわこ成蹊スポーツ大学の嘉田由紀子学長(前滋賀県知事)、長浜バイオ大学の三輪正直学長などが来訪し、特別授業を行ってきた。他にも同志社、立命館、龍谷など12の大学と連携を行っており、指定校・協定校推薦枠も、160大学761名、55短期大学197名(2016年度)と充実している。
一方で、国際社会で活躍する真の国際人育成のために2010年に設立された国際コミュニケーション科は、高度な英語教育の実践もあり、受験者が増え続けている。専願のみの入試だが、定員を大きく上回る数の受験生を得た。そのため、2クラスに増やす構想も出ているという。
難関大学を目指す生徒には
個別学習制度で
しっかりサポート
「実は30年前に特進コースを作ったことがありました。受験生が多く詰めかけましたが、同じ敷地に二つの学校があるような状態になり、矛盾に苦しみました。学内で議論の末、10年で閉じることになりました」
今でこそ特進コースの存在は珍しくはないが、30年前に新設するのは、相当の英断だったはずだ。
「本校は、いわゆる上位層から中間層まで幅広い生徒さんが通う学校です。本校生徒の保護者の多くは、どの大学へ進学するかももちろん大事ですが、それ以上に大学で目を輝かせて学び、自立した人生を送ってほしい、そのために高校でしっかり勉強してほしいと願っておられます。」
特進コースを設けてないとはいえ、生徒の一人ひとりのニーズには懸命に応えるのが、同校の方針。学内には5教科を中心とした「土曜講座」、ネイティブによる英会話・中国語講座、パイプオルガン、デッサンなど、30分1コマの「レッスン制度(個別学習制度)」がある。難関大学を目指す生徒には、学内外の専門講師によるハイレベルな特講も用意されている。基礎的な勉強は月〜金の平常授業として行い、希望する生徒には、放課後や長期休暇のエクステンションプログラムで志望する大学入試へのサポートを行っている。 |
保護者の信頼も厚い中学校
ここ20年間
人気は右肩上がり
近江兄弟社中学校は、最近、大変な人気を集めている。滋賀県は、今も私立に比べて公立高校が圧倒的に強いエリアだ。難関校へ進学するために、あえて同校を選び、高校は外部受験をする生徒も少なくない。
「本学の中高の関係は『一貫』ではなく『連携』なんです。外部の高校を受験するのは自由です。中学はうちへ来て、高校は難関の県立高校などに通い、東大や京大に合格する生徒もいます」
2015年4月、近江兄弟社学園は、創立者ヴォーリズの没後50年を機に、「ヴォーリズ学園」と法人名を改称した。小中高の学校名も同様に改称する予定だったが、それを知った卒業生が大反対。校名は、旧来の近江兄弟社のままとなった。
「新聞発表をした後でしたので混乱もありましたが、正直に言うと、うれしかったですね。母校の名前にそこまで愛着を感じていてくれたのかと」
近江兄弟社という名は、ヴォーリズとその仲間(同志)たちという意味である。彼らは様々な事業も展開し、得た資金を社会に還元するなど、地域の発展にも貢献してきた。その精神に立ち戻り、時代をリードする教育を再構築していこう、というのが学校改革のコンセプトだと藤澤校長は話す。
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