ニュージーランドの文化に触れ
大自然を満喫
「環境が人を育てます。生徒が育つ環境と機会をつくることが私たちの仕事です」
こう話すのは、杉江光平国際交流室長。
園田学園は20年以上前の1993年に、ニュージーランドの国立クライストチャーチ教育大学(現・国立カンタベリー大学教育学部)と共同で大学の敷地内に「そのだクライストチャーチキャンパス(SCC)」と名付けた学生寮を設立した。全160室あまりの個室のうち30室を園田学園の学生・生徒が年間を通して利用している。総合大学であるカンタベリー大学には海外からの留学生も多く、ビレッジ風の広大なキャンパスはインターナショナルな雰囲気に満ちている。
中学3年生は11月にSCC研修に出かける。ほとんどの生徒は初めての海外だ。
「事前にニュージーランドの地理や歴史、文化を学習していきますが、現地に到着したときは『外国って本当にあるんだ』というのが率直な実感だと思います」
10日間の間、牧場での羊毛刈り体験や乗馬体験、ジェットボートなど、大自然のなかで多彩な異文化体験に参加する。姉妹校でマオリ語の授業を受けたり、ゲームを楽しむこともある。
中学3年生の英語力では会話もままならない。その分、初めて片言の英語が通じたときは感激だ。毎晩夕食をとる大学の食堂で、大学生と接する機会も多い。ラウンジで一緒にテレビを観たり、卓球やビリヤードを楽しみながら少しずつ英語に慣れていく。
「中学生は驚くほど早く成長します。ホームシックにもならず、自分たちでしっかり生活していました」と杉江室長は目を細める。
毎日が楽しくて仕方がない生徒たち。帰国前日には「帰りたくない」と泣き出す生徒もいるという。
しかし、帰り道にはもうひとつの楽しみが待っている。シンガポールで7時間のトランジット※を利用して観光できるのだ。マーライオン公園で記念撮影し、観覧車に乗り、中華料理を楽しむ。
日本から南半球のニュージーランドに行き、帰りはほぼ赤道直下のシンガポールで寄り道。気候の変化や風景の違いを肌で感じることで、生徒たちに見える「世界」は広がっていくに違いない。
高校進学後も希望者は3週間、または6ヵ月間のニュージーランド留学を体験できる。SCC研修の楽しい思い出から、高校でも留学を希望する生徒もいるという。
東日本大震災の日
太平洋上でUターン
毎年3月、高校2年生が3泊5日のハワイ修学旅行から帰ってくると、学校宛にメールや手紙が届く。どれも一様に、ホノルルフェスティバルでのダンスに感銘を受けたという内容だ。今年届いたメールには、「見る者を圧倒するパフォーマンス」、「同じ日本人として大変嬉しく思う」と賞賛の言葉が連ねられている。しかも、往復ともに同じ飛行機だったらしく、「機内での礼儀正しい振る舞い」にも言及していた。
ホノルルフェスティバルは、1995年に始まった文化交流イベント。毎年3月に3日間の日程で開催される。最終日にワイキキのメインストリートを通るパレードが行われ、ハワイや日本、オーストラリアなどから多くのグループが参加し、見事なパフォーマンスを繰り広げる。
園田学園が初めてパレードに出演したのは2006年。以来、高校2年生の修学旅行として定着している。
しかし、2011年は参加が叶わなかった。出発日は東日本大震災が起こった3月11日。飛行機は関西空港から予定どおり飛び立ったものの、途中でUターンした。津波による万が一の事態を避けるための判断だった。
杉江室長は、「教員も旅行会社の担当者も、何とかしてもう一度生徒をハワイに連れて行きたいと手を尽くしました」と当時を振り返る。
その結果、4月中旬にホノルルフェスティバルと同じコースを通る高校生マーチングバンドフェスティバルに参加できることになった。生徒たちは、「がんばる日本」と記した横断幕を先導車に掲げ、力いっぱいのダンスを披露。沿道の人々から大きな拍手を受けた。 |
感動と感謝のバトンを後輩へ
今年3月8日、抜けるような青空の下、高校2年生230人がパレードの出発地点に立った。隊列は、横4列。長さは100メートル近い。前日まではダイヤモンドヘッド登山やワイキキビーチ他でハワイ観光を楽しんだが、いよいよ本番。昨年の10月から練習を重ねてきたダンスを披露するときがきた。生徒たちの表情は少し緊張気味だ。
先導車に積んだスピーカーから音楽が流れ、園田学園のパレードが始まった。ゴールまで約2q。ジャンプしたり、跪いたり、数人で円を描いて回ったりとハードな動きが続く。最後尾にワゴン車を走らせ、体力に不安のある生徒を1曲終わるごとに車の中で休憩させる。
笑顔を見せる生徒たちにも少しずつ疲労の色が漂い始めたとき、先生方が水を持って走りながら声をかける。沿道からも応援の手拍子が聞こえてきた。
パレード終盤はワイキキビーチのすぐ横を通る。心地よい潮風に後押しされるようにゴール地点に到達。全力で踊りきった達成感に、感動が押し寄せてくる。
「230人の生徒が一生懸命な姿に、見ている方も感動させられます」と杉江室長。
実際に、沿道から見ていた人たちによって、生徒の演技が‘YouTube’に何本もアップされている。なかには英語で賞賛のコメントのついたものもある。
帰国後に生徒が書いた感想文には、演技をやり遂げた喜びとともに、支えてくれた保護者・先生方や添乗員への感謝の言葉が並ぶ。
9月に開催される体育祭のフィナーレで、高校3年生になった生徒たちはダンスを再演し、最後には全生徒を招き入れ一緒に踊りだす。この日、彼女たちのホノルルフェスティバルは幕を閉じ、感動と感謝のバトンが高校2年生へと受け継がれていく。
※目的国までの中継として他国の空港に立ち寄ること
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