日本大学三島高等学校「国際クラス」14期生の2年生は現在、南オーストラリア州アデレードの公立高校へ1年間(1年次1月〜2年次12月)の留学中だ。同校の留学制度最大のメリットは、留学が2年次の修得単位となり、留年せずに3年間で卒業できること。「国際クラス」を希望する中学生は、進学クラス・特別進学クラスと同じ一般入試を受験、面接で「1年間留学」への意欲を問われる。2年生クラス担任・石川史也先生は「たとえ英語が苦手でも、留学への主体的な姿勢と『だから英語の勉強を頑張る』決意があれば劇的に伸びます」と語る。留学直前(1年生の秋)に英検2級に合格した生徒も、入学以降確固たる意志を持ち、徹底的に努力した結果であるという。留学前に英語力を伸ばす起爆剤が、1年次の「夏季海外語学研修」(5週間)だ。半年後の1年間留学に備え、ホームステイをしながら現地の学校に通う。15歳の高校1年生にとって夏季研修の収穫は「挫折すること」と石川先生。
「彼らは英語が聞き取れないことでの失敗を山ほど経験したんです。帰国後、劇的に変わりました。耳を鍛えよう、質問に答えられるようにしよう、と学習意欲がより高まりました」
結束力も高まった。団体戦で乗り越えようと、半年後の出発に向けてクラスが走り出した。同校では留学中に挫折した生徒は今まで皆無という。
1年間で、何を? どう学ぶか?
世界を舞台に自らを育て上げる
1年間留学は4学期制。1学期(1月末〜)は留学生プログラム(オーストラリア生活のレクチャー、アボリジニなどの歴史、数学や理科実験など簡単な授業を受けて、2学期以降の学校生活に備える)を受講。2学期(4月末〜)から南オーストラリア州政府の教育庁管轄の公立学校に2、3名ずつ分かれて、現地校生徒と同じ生活を送る。
5月に視察した石川先生には、生徒たちが「英語ペラペラで、大勢の友達に囲まれている自分」の理想像と、厳しい現実の狭間で格闘しているように見えた。
「この時期、語学以外に人間的成長の大きなチャンスがある」と語るのは8期生を引率した英語科主任・関根浩子先生。
「親元を離れホームステイ先でホストファミリーと暮らし、現地の生徒に混じって生活していると、自分の意志をどう伝えるかで状況が変わってきます。物事をいい方向に動かすには、語学力だけではなく、何かが必要だということに気付かされる時期だと思います」
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得るものは「生きる力」
現地校生徒と同じ学習・宿題をこなしつつ、3・4学期を過ごすと、リスニングとライティングの能力は飛躍的に向上、語彙力や表現のバリエーションが一気に増えるという。自分の考えをアウトプットするプレゼンテーションや討論型授業が多く、実践的な交渉力を身に付けるべく生徒たちも果敢に参加する。世界中から集う留学生とも交流し、活動範囲が広がる。未熟な自分を笑い飛ばせる「たくましさ」が身に付くと関根先生。「意思表示や自己主張が上手になりますね。世界標準のマナーが身に付き、自分のことは自分でやる、生きる力のようなものが備わってくる。周りの人への感謝や気遣いが帰国後も自然にできるので御両親からもすごく喜ばれます」。
苦楽を共にしたクラスの絆は強く、互いを「戦友」と称え、固い友情で結ばれる。国際クラスの進学先は多岐にわたる。ICUや上智などで語学を磨く生徒もいるが、経済学部・商学部など多様な分野で英語を道具として自分の道を切り拓く生徒も多い。石川先生のクラスの生徒の帰国は12月。「英検準1級に合格する生徒もいますが、英語力は能力のひとつ。将来の人生を開拓するために努力でき、失敗しても自分で立ち上がれる力と積極的な行動力を掴んできてほしいですね」。
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