大成初のオリンピック出場
活気づく在校生や関係者
大成中学校・高等学校を訪れて8年、記者は同校の成長を目の当たりに見てきたが、これほど短期間で成長した学校はない。もともと愛知県は公立志向の強い地域。追い討ちをかけるように国の施策である公立高校の「授業料無償化」が実施され、私立への影響が懸念されていた。だが同校ではその影響は少なく、逆に教育方針「学力としつけ」に注目されて、生徒数は増加する一方だ。
取材当日は、卒業生のロンドンオリンピック初出場が決まり、校内は沸き返っていた。同校の卒業生で、中高と柔道部に在籍していた中井貴裕選手(流通経済大学4年・81キロ級)は柔道男子出場選手の中では最年少での出場だとか。
「柔道部総監督の神谷先生と柔道部後援会長でもあるPTA会長の猪子さんと一緒に、最終選考の試合に福岡まで応援に行きました。最後は大外刈りの大技で決まり、本当に嬉しい思いをさせてくれました」と足立誠校長は喜びを露に話した。
相乗効果は多大で、柔道部部員はもちろんのこと、在校生たちも「やればできる」と士気が高まった。壮行会には350人ほどの関係者が集まり、中井選手の一挙手一投足に見入ったという。彼の現役時代を聞くと「二番手に甘んじていて、悔しい思いをずっと持ち続けていたと思います。大学で開花しましたね」と神谷兼正総監督(中学第二教頭)は当時を振り返る。毎年、報告を兼ねて、柔道部の後輩たちを訪ねてきていたというから、面倒見の良さは先生方から受け継いだのだろう。
ステューディアコースに
全国区の生徒が。特別選抜入試で
中間層のレベルアップ
中高一貫のステューディアコースは、今年「特別選抜入試」を実施、7人が入学した。成績上位者を対象とした特待制度とは別枠で選抜試験を設け、合格者は6年間授業料が無償という待遇だ。
「一般入試の問題よりも少し難問にしています。8割以上の得点が条件ですが、それらをクリアした生徒がきてくれました。じっくりと育てたいですね」と杉浦和彦中学部長。ただ、特別選抜を設けた要因のひとつには、トップ層を厚くすること以外に、中間層のレベルアップもあると神谷教頭は話す。実際、過去には中間層が下位層に引っ張られ、成績の伸び悩みが起こった時期があった。よく言われる、上位2割の層が頑張れば、中間層は上位に引っ張られ、成績の底上げができると。同校でもそれを期待してのことだろう。
現在、7人の生徒たちは、3クラスの中で早くもリーダーシップをとっているという。杉浦中学部長は、「春休みの宿題を毎年出していますが、進んでいる生徒には2倍ぐらいの量を出しました。彼らはすぐに提出してきましたし、別の生徒も何人かつられてやってきました。中間層も触発されています」と話す。
一方、受験者層に大きな変化があった。全国区の同志社やラ・サールなどの受験生が、併願校として本校を受験してきたことだ。また、学力上位と見られている別中学を合格しながらも、本校に入学してきた生徒もいたというから、大成の進学校としての位置付けは上昇していることは間違いない。受験者数は昨年の202人から313人と大幅に増加。入学者も1割以上増え、愛知県での中学受験が疲弊する中、この数字は立派である。
ラトナディア
プラウディアコース受験者は
過去最高の2,128人
中学に引き続き、高校が今年25周年を迎えた。施設などの整備は早くに完了し、学習環境は充実している。制服のリニューアルも中高ともに実施、グレーのブレザースーツは若々しさと清楚なイメージを感じると生徒からは好評だ。コースについては、普通進学コースがプラウディアコースと改称し、スタートを切った。足立校長が10年近く温めてきた名前だけに感慨もひとしおだろう。大成の伝統を継承し、誇りを持ち、理想を追求するという意味だと聞く。良い名前ではないか。 |
「校長から素晴らしい名前を命名していただいたので、生徒たちも前向きです。名指しでこのコースを希望する生徒も増えて、3クラスになりました」と田村宏昭プラウディア部長はにこやかに話す。今年度の国公立大学へは4人が合格し、プラウディアの存在意義をさらに証明したといえる。ラトナディアコースでも19人の国公立大学に合格している。
3コース全体としては、今年は卒業生214人中、48人の国公立合格者を輩出。私立大学に関しても、早稲田、慶應など難関私大を含め、368人が合格をしている。コンスタントに国公立に合格する要因を聞くと、「生徒一人ひとりにきめ細かく進路指導をするために、各大学の詳細な情報を収集し、先生方と共有しています」と的確な進路指導と豊富な情報が合格につながると可児健史ラトナディア部長は話す。高校の受験者は2,128人となり、過去最高の数字を挙げた。一方で、生徒たちの日頃の取り組みも幅が広い。ボランティア活動として、東日本大震災被災者への募金活動、ポリオワクチン購入のためのエコキャップ運動、毎年の学校周辺の掃除など、地域への貢献も手厚い。
足立校長は「組織も活性化して、いろいろな部署で先生方が、自分の力を発揮してもらっています。初等教育を私学教育の一貫として魅力を感じていますし、生徒のための学校つくりという考えの下、新しい機軸を打ち出していきたい」と新たな挑戦を力強く語った。
生徒数が中学・高校併せて1,000人近くなり、決して小規模校とはいえなくなった大成中学校・高等学校。卒業時の生徒アンケートは、7割以上が「学校に満足している」と解答している。喜ばしいことだ。
|