横浜にムーブメントが起きる
静岡に通学という新発想
静岡サレジオ中・高等学校が上智大学と結んだ教育提携協定。その目的は2つある。ひとつは上智大学のイエズス会、静岡サレジオのサレジオ会が共有する「キリスト教ヒューマニズムの涵養」だ。
「これは世界の人たちと等しく手をとっていける心を育むことですが、単に世界を股にかけて活躍するということではなく、差別観なく世界の人たちと働けるための精神ベースを育成します」と、末吉弘治校長は語る。
それに対するもうひとつの大きな柱は「グローバル・コンピテンシー(国際化社会に対応することのできる能力の涵養)」だ。国際社会で必要な英語能力を精神ベースと同時に身に付けていく。
「まさに心を持って技能を磨く。言葉でいうのは簡単ですが、人間性の育成にも通じるこの2つの教育には小・中・高と、小さな頃からそうした環境の中で育つことが重要です」
他者を思いやる心と高い知識を持った学生の育成に、上智大学も積極的に協力をしている。教授による英語の授業は、生徒だけではなく、教員も対象。教員にも上智メソッドを伝授するため研修を実施している。また、神学部の教授も来校。生徒に向けて、わかりやすくキリスト教の授業を行う予定だ。
さらに大きな話題となっているのが、30人もの上智への特別推薦枠が設置されたことだ。通常の指定校推薦とは違い、8学部28学科すべてに適用されるのが大きな特徴。同校の一貫コースは1学年80人。つまり一定の学力をクリアすれば、40%近くの生徒が上智大学への進学することができる。推薦枠30名の対象となるのは、今年入学の中学1年からだが、2017年度には上智大学進学者(最大30人)を輩出することになる。
「もちろん、誰も推薦できるわけではありません。しかし、本校の中で一生懸命勉強をしてくれれば、真の学力をつけて、上智大学に送りだすことができます」
上智大学への推薦には、同大学が日本英語検定協会と共同開発する英語テスト「TEAP」で一定以上の点数を取ることが条件とされる。高度な英語運用能力の基礎を測るための試験で、同校ではこの試験に対応できる力を付けるため、さまざまな英語教育カリキュラムを用意している。
小6では全員がオーストラリアにホームステイ。小5からステイ先の学校や先生が出てくるオリジナルテキストを使った授業を2時間、中1レベルの英語の文法、ネイティブの教員によるヒアリングも各1時間ずつ実施する。文法を指導するのは、高校でも教鞭をとっている教師で、大学受験を見据えての密度の濃い授業を展開する。
さらに中3では1年間ニュージーランドに語学留学(希望者から選抜)も可能。休学扱いとならないので、帰国後は当該学年に戻ることができる。
こうした取り組みが注目を集め、同校には浜松、名古屋などの東海地区はもちろん、横浜からも問い合わせが来ている。神奈川県内から都内の私学へ1〜2時間かけて通学することを考えると、新幹線を使えば、新横浜から同校のある東海道線の草薙駅までの通学時間も1時間10分程度。十分通学が可能だ。中学受験の視点を少し変え、首都圏から静岡まで視野に入れることで、子どもたちの可能性はさらに大きく開かれると言えよう。
末吉校長は「静岡から横浜にムーブメントを起こしたい」と力強い。
すべて生徒の希望を叶える
「進路保障」
上智大学への提携を機に、小・中・高の12年間を4−4−4の3つのステージに分ける「サレジオステージ制」に一新した同校。小1〜小4が「プライマリー」、小5〜中2が「ミドル」、中3〜高3が「カレッジ」で、カレッジからコース分けが行われる。 |
コースは上智を目指す「ソフィアコース」の他に、医学部等難関大学志望の「EXEコース」、120大学240学科の指定校推薦枠を持つ「フロンティアコース」の3つ。中高一貫校に入学する場合、ミドルステージの中1からスタートする形になる。
上智大学との提携がクローズアップされている同校だが、2008年からスタートした中高一貫生は著しい学力の伸びを見せている。2期生にあたる23年度大学合格実績は、医学部10人、国公立12人が合格した。こうした実績を受け、フロンティアコースにも指定校枠が増加。関西学院大学からも8人と、同校の信頼が増していることがわかる。
「1学年の人数が少ない本校が3コースに分けているのは、どの生徒にも進路を保障したいからです。私たちの学校に入学してもらったら、医学部対応のカリキュラムもありますし、上智大学へは特別推薦枠もあります。すべての生徒が希望する進路に対応できる体制を整えているのです」
同一キャンパス内に幼・小・中・高があり、同じ教育理念で学んでいる同校。
「『中学から入学して、ハンディはありませんか』と質問されることもあります。しかし、本校には勇気を出して正しいことを言った生徒に対し、拍手を持って認める校風があります。相手の真剣で赤裸々な言葉には、真面目に対応しなければなりません。その精神があれば、中学から入ってきても一貫生と同じようにやっていけます。人間として素養は長い時間をかけて一貫教育で培っていくものですが、中学からでもそうした素養を育んでいけると思います。こだわりや一生懸命さを持っている。そんな生徒にぜひ入学してもらいたいですね」と末吉校長は話してくれた。
※静岡サレジオでは、全国の塾と特別提携などの制度を検討中だ。同校に興味のある方はぜひ問い合わせいただきたい。説明に伺うことも可能。
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