社会と生徒のニーズに応える
カリキュラム
福祉コースは2007年の開設当初より、NPO法人福祉サポートセンター「さわやか愛知」で活躍する現役のプロが指導に当たっている。講義や実習を通して、教科書を超えた実践的な介護スキルと「こころ」を育てる教育が特色だ。
「さわやか愛知」の丸山冬芽講師は、「担任の先生方とタッグを組んで、生徒と3年間、とことん付き合います」と話す。
指導方針は、「まず自分で考える」。例えば、特別ゲストとして全身性麻痺の障がいを持つ人が車いすで来校したとき、玄関で迎えた生徒たちはとまどった。福祉実習室は3階だが、エレベーターがないからだ。助言を求められた丸山講師は、「わからなかったら、ご本人に聞いてみよう」とアドバイス。生徒たちは、言葉が不自由なゲストから時間をかけて要望を聞き取り、皆でゲストを車いすごと持ち上げ、3階まで移動した。自分たちで解決できたことで、達成感や充実感を味わえる。こうした積み重ねにより、福祉の基本姿勢を学んでいく。
野末恭司教頭は、「福祉は人間とのかかわり。本校ではさまざまな人とかかわる機会を設けています」。
校外実習も介護施設だけでなく、保育所や幼稚園、介助犬訓練センターと幅広い。
「日頃ムスッとしている男子が、ニコニコ笑顔で子どもと接しているのを見て、保育系を勧めたこともあります」と野末教頭。
卒業後に保育系の進路に進んだり、最初から保育系を目指して入学してくる生徒は少なくない。そんな生徒のニーズに応える形で今回の「福祉保育コース」への変更が行われた。
さらに、最近は介護と保育など複数のサービスを1ヵ所で行う多機能型福祉施設の設置が推進されている。
丸山講師は、「将来的には子どもと高齢者の両方を学んだ人材が求められます」と、カリキュラム再編を歓迎する。
ただし、高校には「保育」という教科は存在しない。そのため、家庭科や「こころとからだの理解」「科学と人間生活」などの授業において、保育の学習を取り入れていく。 |
|
幅広い選択肢から
自信をもって選ぶ
福祉コースに入学してくる生徒の動機の多くは、「資格がたくさん取れて就職に有利だから」という。大多数が就職希望だ。ところが、3年後の進路を見ると、大学・短大進学が約半数。専門学校が約2割。就職は3割にとどまる。
野末教頭は、「3年間の学びで視野が広がり、意識が変わっていくようです」と話す。
まず、入学して初めて選択肢の多さに気付かされる。一口に介護や福祉と言っても、その対象や範囲は幅広い。また、校外実習やボランティアなど多くの体験を重ねていくうちに「もっと深く勉強したい」と思い始めるようだ。
ボランティアは、障がい者施設の外出のサポートや介護施設での食事補助などさまざま。もちろん任意である。生徒は自分で探してきたり、学校から紹介されて積極的にボランティアに取り組む。「さわやか愛知」でボランティアする生徒も多い。丸山講師は「菊華の生徒は意欲的」と高評価だ。
菊華高等学校ならではの「福祉」を学び、生徒たちは大きく成長する。進学・就職のいずれにしても、「自分が何をしたいか、自信をもって言い切るようになります」と野末教頭は笑顔で締めくくった。
|
|