3月
●指導の中身の再検討
3月の項に記すのはいかがとも思うが、新年度に入る際に1点、考えていただきたいことがある。指導の中身についてである。
集団、個別、自立を問わず、学習塾は指導の中身に応じて大きく5つのタイプに分かれると私は考えている。
①能力開発型……七田式など幼児・小学校低学年が中心の能力・才能開発が目的の塾
②基礎学力涵養型……公文式、学研教室など小学生が中心のドリル塾
③受験目的型……中学受験、難関高校受験、難関大学受験の指導が目的の塾・予備校
④学校成績重視型……在学校での成績上昇を目的とする塾
⑤補習型……学校授業についていくのが難しい児童生徒を対象にした既習事項の復習塾
受験目的型と学校成績重視型との違いは、前者が「学校の進度にお構いなく、難関校合格を目指して学校レベルを超えた内容を指導する塾」であるのに対し、後者は「学校授業に寄り添い、学校成績の上昇を目指す塾」を指す。後者も当然、そうした指導の結果としての志望校合格が目的となる。
1つの塾が複数のタイプ、とりわけ④が受験直前など時期に応じて③や⑤の要素を兼ねることは言うまでもない。が、通常、多くの塾、おそらくは中学生対象塾の9割以上、高校生対象の塾の5割以上は事実上、④の「学校成績重視型」に分類されよう。この型の塾は生徒・保護者受けのよさを考慮し「予習塾」と称することも少なくない。
では、そうした塾は実際に、そうした塾としての機能を果たしているのだろうか。
学校成績を重視する塾であるならば、指導は本来、「教科書に沿って学校授業の準備」「注意すべき事項の確認」↓《学校の授業(メモを取りつつしっかり受講)》↓「メモに基づいて復習(学校授業の想起)」+「学校の宿題の完成」+「アルファ(準拠教材・映像教材・問題集・参考書・IT教材、その他を用いてより深い理解と定着)」の繰り返しがルーティンということになる。学校成績が定期テストの点数や順位のみを意味するのであれば「宿題」は省いてもよい。通信簿の評点を意味するのであれば、もちろん省くわけにはいかない。
ところが、ほとんどの塾はこうした指導を行っていない。予習部分を準拠教材での「学校授業の先取り授業」で済ませ、「復習」部分など触れることもしない指導がまかり通っている。教科書を持参させる塾さえあまり見たことがない。
それで本当に学校の成績が向上するのだろうか。生徒・保護者の期待に応えられるのだろうか。新年度開始を前に、一度指導の中身の再検討をお願いしておきたい。
●高校部への接続
経産省の調査によれば、ここ5年間に高校生部門の売上高は25・7%も増加している。大学進学率の上昇、就職氷河期に大学を出た母親の影響、入試改革騒動などが要因。積極的に中学部門卒塾者の勧誘を。
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