マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

進化への挑戦を受けて立つ生徒たち
寄り添って高みへ導く教員たち
驚異的な成長を実現する熱き3年間

桐陽高等学校

国際進学コースは、海外からの留学生やショートステイを受け入れ、ホストファミリーを務めるなど国際交流の中心となるコース


創立38周年を迎える桐陽高等学校では、一学年約300人、目標もコンセプトも多様な5コースを設置している。いずれも3年間で希望進路に導く計画的かつ丁寧な指導力が地域から高く評価されているが、教頭の松本日出年先生は、生徒と教員の努力の相乗効果、と語る。「『まさかこんな大学に行けるなんて』と本人も親御さんも驚く進路を切り拓いていきますし、『自分もそうなりたい』と意欲的な生徒が集まってくる。彼らのやる気に触発されて教員も奮起する、それが今の桐陽をつくっています」


メンターは北米の大学生
海外の高校と同じ授業を展開

桐陽が「世界に通用する日本人を育てる」使命のもと設置しているのが、2年次の1年間に留学できる「留学進学コース」、3ヵ月留学ができる「国際進学コース」だ。コロナ禍ではいずれも渡航がかなわなかった。「2年生たちはショックを受けていました。この1年間、懸命に準備をしてきましたから」と無念を滲ませるのは副教頭兼国際交流課長の杉澤博文先生だ。

「私たち教員も、生徒たちに寄り添いながら一緒に悩んできました。そして、留学に代わる同程度のレベルの授業や講座を提供するべく模索し続けた一年でした」
2学期には「GEMオンラインプログラム(3週間)」と「アカデミックスキル(年10回)」が始動。北米の大学生がメンターとなるGEMでは、レクチャーやディスカッションを通して生徒は表現力・発信力を高める。プレゼンテーションに向けたチームでのリサーチ、メンターとの一対一の対話など、非常にフレキシブルな活動になったという。さらに海外の高校とほぼ同じ内容の授業を、ネイティブの先生が対面で行う「アカデミックスキル」では、文学や社会科学などリベラルアーツの多彩なジャンルの文章や対話に触れることで、未来に通用する単語力と教養を高められる。受講後、留学進学コース2年生21名のうち7名が英検準1級ホルダーになっている。

「GEMプログラムが終わるとき、生徒からは『このプログラムを用意してくれて本当に嬉しかった。ありがとうございました』と言ってもらえました」と杉澤先生は声を詰まらせる。
「この1年間の困難を経て、生徒たちはより強くなったと思います。実際の留学体験には及ばずとも、将来の進路を見出したり、自分自身を知るキッカケになることを願っています」

難関大学合格者が急増中!
推薦入試にも強い桐陽へ

近年、国公立大学の合格者数は20〜30名台を堅持し、今春の早慶上理・GMARCH・関関同立・日東駒専への延べ合格者数は100名を超えた。9年前に設置された英数進学コースでは徐々に理系進学者が増え、京都大学や浜松医科大学、今春は東北大学や九州大学などの旧帝大の理系学部へ進学する生徒も現れた。難関私大の合格者も年々増え続けている。初めての「大学入学共通テスト」に向けて、配点が高くなったリスニングに力を入れてきた、と語るのは進路課長・石川雅敏先生だ。

「ネイティブの先生による授業を強化し、河合塾『KJET』(テキストとIBT形式の測定テストがセットになったICT教材)の導入、『エンパワーメントプログラム』(海外の大学生や留学生とのディスカッションによる課題探究)や、他のコースでも英文読解の土台になる知識・教養の拡充を意識して題材選定を行ってきました。結果、例年同様の得点を獲得できて、ひと安心です」
桐陽は、令和2年度現在、約541の大学・学部・学科から指定推薦枠を得ている。特別進学コースと普通コースでは、面接・プレゼンテーションで受験する生徒が年々増えている。それが本校の目指すICT教育の実践につながっています、と石川先生。

「思考力・判断力はもちろんですが、今後はより表現力が重視されます。学校生活の中で自然に培われ、大学入試の面接の場で発揮できる表現力を身につけさせたい。そのためには生徒が自発的に表現活動に取り組める『仕掛け』を、いかに我々がつくっていくかだと思っています」


(右)自分の意見や考えを表現できる生徒は、進路の可能性が大きく広がっていく
(左)吹奏楽コンクール(B編成)東部で地区大会 7年連続 金賞 同県大会金賞(令和元年度)

新入生は1人1台iPad
表現力を高める桐陽のICT

この春、桐陽ではいよいよ新1年生全員がiPadを持つことになった。ICT導入の検討が始まったのは6年前。学力向上ツールとしての活用を目指したが、「学力の幅も広く、目的も様々な5コース各々の生徒たちの学びを個別最適化できる理想的な方策がなかなか見つからず、導入に至っていませんでした」とICT推進委員長・山梨貴正先生は振り返る。それが思いがけない方向に「桐陽ならではのICT教育」が一気呵成に動き出す。突破口を開いたのは生徒たち自身だ。一昨年の文化祭で、各クラスの模擬店のCMをタブレットで作製させると、教員たちの予想を遥かに超える作品が続出。そのレベルの高さに衝撃を受けた松本日出年教頭先生はこう振り返る。

「短い準備期間かつ限られたCM時間内で、商品の特徴をうまく紹介していて、映像センスもあるし、笑いも取っている。潜在していた発想力・独創性が可視化されたんです。『自由にやらせたら、ここまでできるんだ!』と本当に驚きました。これは『表現活動を促進させる発表ツール』として1人1台iPadを持たせる意義は十分にあるな、と」
1年生は一学期から、タブレット内のアプリを自由に駆使して「1分間スピーチ」を行っている。来年2月にはプレゼンテーション大会「TOYO February Fes.」を初めて開催する。

「場所や時間の制約を超えて協働する力、相手の考えを理解し、自分の考えも相手に伝えられる力を養っていきたい。今後の社会で求められる力を、本校の生徒は卒業までに身につけて大学や社会に進出する。それは非常に有利なことだと思います」

中学時代には学力に自信がなかった子も、やればできる、できるから自信がついて更に高みを目指す、という非常に良いサイクルが生まれてきている、と松本教頭。「それは厳しい道でもあります。それでも生徒たちは『学校が楽しい』と言ってくれる。教員としては『この学校で良かった』と最後に感謝される学校でありたい。加速度的に変化する時代の要請に、生徒とともに『受けて立つ』気持ちで、これからも挑戦し続けます」

桐陽高等学校  https://www.toyo-numazu.ac.jp/