マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

延長教育プログラムがスタート!
未来のために、自発的な学習を通して「学ぶ力」を培う

玉川学園

新設されたラーニング・コモンズ(自習室)には個別学習・グループ学習・スタンディングデスクのエリアがある


創立者・小原國芳が「学問・道徳・芸術・宗教・健康・生活」の6つの価値を調和的に創造する「全人教育」を唱えてちょうど100年。
玉川学園は国際教育、探究型学習、STEAM教育の先駆者として中等教育界をリードし続けてきた。幼稚部・小学部に続き2021年春、中学部にも学習支援の場「延長教育プログラム」を開設。放課後の「学び」をより豊かにするこのプログラムは、大学の学修に必要な資質・能力を早期に準備し、将来の選択の幅を広げて、子どもの成長を促す効果が期待されている。


一画多い「夢」を継ぐ重み

玉川学園の創立者・小原國芳による「夢」の書。「夕」の部分が一画多いのは「大きな夢、一つでも多くの夢を持ってほしい」という願いが込められているという。「教員はこの『一画の重み』を肝に銘じて日々指導しています」と中学部長・中西郭弘先生は語る。


(創立者・小原國芳は一画多い夢の文字に「他の人より一つでも多くの夢を持ってほしい」という願いを込めた)

「生徒が多くの夢を持てるように、どの学校より色々な体験や学びを提供しています。本物に触れる、世界的な視野を拡げる経験を積み上げて、多くの引き出しから新しい発想や将来の進路が生まれる。『一画の重み』とは、枠を超えるという意味でもあります」

「枠を超える」は、いち教師だった小原氏が、人間文化のすべてを盛り込んだ全人教育を玉川学園で実現した歴史そのものだ。「どんな思いで、何をやりたいか――将来の進路が決まっている子も、決まっていない子も、色々な未来の可能性を探ることができる玉川学園で、夢の実現に必要な力を身に付けてほしいです」

深みのある、協働できる人に

中学課程は、高校・大学・社会活動の基礎となる「学問」に踏み込む時期だ。中学部では生活目標に「深み・丸み」、高校では「究み」を掲げている、と中西先生。
「中学では『深みのある大人になるために、触れて・感じて・表現する』。『五感』を使って物事を立体的に捉える思考力、表現する力を養います。そして『丸みのある大人になるために玉川しぐさ』。気が利いた行動力、相手に恥をかかせない、社会全体を考えられる、粋な玉川っ子の行動様式を身に付けられるように」

智恵の体得はもちろん、言葉・非言語のコミュニケーション力や表現力、発信力、多様な経験が培う共感力を駆使し、自分自身とチームをマネジメントできるリーダーシップの養成を目指す。豊かな国際経験と、主体的・対話的な探究型学習の実績を積んできた玉川学園の生徒たちは、大学入試での学校型選抜や総合型選抜で強みを発揮するという。

「大切なのはバランスです。全人教育はあらゆる価値を調和させて行う教育。創立から続く自由研究は『個人でより深く』が基本ですが、自分の能力や考えをみんなと共有、協働して、さらに良きものに創り上げていきます。今後ますます1人で『枠を超える』ことが難しい時代になっていきます」

ESで個別最適化を極める
学びのスタイルを追究する

今春から中学生対象にスタートした延長教育プログラム(Extended School・以下ES)にも、「個」と「グループ」の学習スタイルが導入されている。放課後に展開するESは、自学自習の「Study Hall(以下SH)」と、国際・言語・資格・PBL・スポーツなど大学や社会で求められる能力の育成につながる「講座」から成る(ともに有料)。新たにつくられたラーニング・コモンズ(自習室)は天井が高く、温かな室内灯が広がり、思考活動が捗るカフェのような落ち着いた空間だ。個別学習エリア、グループ学習エリア、スタンディングデスクが置かれ、SH専任教員と大学生メンターが生徒たちの自学自習をサポートする。ESを担当するアカデミックサポートセンター長・伊部敏之先生はSHの目的をこう語る。

「生徒が将来の夢を確実に掴めるように、中学段階で基本的な学習習慣の定着を目指します。玉川学園は『自分で計画を立てて勉強する』自学自律の学習姿勢を創立以来大切にしています。そして、個別最適化による柔軟な学びを提供することで、生徒一人ひとりが夢の実現へ向かいます。放課後の時間を活用し、安心・安全な学習環境と上質な教育プログラムの提供を考え、開設しました」

最初の申込みは50名程度。入室したら「学習シート」にその日の学習計画を書き込み、退室時に振り返りを行う。入退室時間と学習シートは保護者にそのつど送信される。玉川学園出身の東大生を含む大学生メンターたちは、長期的な学習プランの立て方を指南し、エリアを巡回して質問には最小限のヒントを与えて「自習」を促す。一人で勉強が進まない時はグループ学習エリアで考えを出し合い、教え合い、協力して解決していく。自由研究についての疑問も質問できるので、発展的な学びが深められそうだ。


生徒たちはさまざまな行事を体験
一人で取り組むこと、みんなで頑張ること。行事を通して生徒たちは努力する心や協調性を身につける

勉強でつながる人間関係を創出

「SHは新しい学びの環境となります」と語るのはアカデミックサポートセンターES推進室課長・島 健太郎氏だ。SH専任教員は、正課授業の教員と情報を共有し、メンターと連携する。「そこに事務を担う我々も加わるのが他校との違いです」。アカデミックサポートセンターには多様なキャリアをもつ職員が結集。大学の入試広報やキャリアセンターを担当していた島氏は、高校生が抱える問題点を指摘する。

「大学選択を目前に『文理両方じっくり勉強した上で、進路を考える時間がもっと欲しかった』と悔やむ高校生が、玉川学園に限らず多いです。情報も多すぎてわかりにくい、気づいた時には選択肢が限られていた、という話はよく聞きます。友達同士でも進路や就職の話はタブーです」

SHがそんな孤独な状況を変える、と島氏は期待を寄せる。メンターは、子どもたちが憧れる難関大学に籍をおく大学生を揃えた。
「彼らは大学進学への具体的なアドバイスを伝授してくれます。勉強について話し合える友達の輪が広がれば、周囲の生徒も巻き込まれる。放課後に『ちょっとESで勉強しよう』という会話が増えたら、本当に嬉しい」

伊部先生は「少し手を差し伸べるだけで、ぐっと変わる生徒を底上げできる」と手応えを感じている。「新しい学びのスタイルを我々も研究していきたい。玉川学園の学びはさらに充実していくと思います」

玉川っ子たちは、未来へと続く確かな轍を、いま自らの道に刻み始めている。

玉川学園  https://www.tamagawa.jp/academy/lower_upper_d/