マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

入学者増加で校舎を増築
東北ボランティアで福島へ

静岡学園中学校・高等学校(静岡県)

グラウンドと教育棟の間に増築される、新しい教育棟。3教室増えることになる


2年連続で静岡学園の人気が止まらない。昨年の高校の入学者は418名と定員を上回る人数に。この春も単願者が増加し、400名を超える新入生を迎えた。こうした生徒の増加に対応すべく、新教育棟と特別教室の増築が決定。環境を整えて、生徒を迎える準備が進んでいる。
入学者が増えている理由の一つは、夢を持つ意識の高い生徒に刺激を受け、生徒同士が切磋琢磨し合う校風が出来上がり、その広報が周りに浸透してきたこと。また、震災の翌年から始まった「東北ボランティア研修」を今年再開。今年は初めて福島を訪問するなど、幅広い学びの場を提供している。


新教育棟と多目的教室の
増築がスタート

新しく建てられる教育棟は、現教育棟とグラウンドの間の通路に建設される予定。4階建てで1階はピロティ、2〜4階に1教室ずつの合計3教室が入る。

増築する多目的教室は、食堂や図書館が入る図書館棟の屋上。新教育棟の完成は2022年度末、多目的教室は2022年度5月を予定している。

鈴木啓之校長は「昨年3月、学校の敷地内に教室を増築できることがわかり、計画を進めてきました。ありがたいことに、今年も中学・高校ともに入学を希望してくれる生徒が増えましたが、対応できそうです」と話す。

今年の高校入試では、寮のキャパシティの関係から、県外からの単願数を絞った。しかし、県内の単願生が増え、単願希望者総数は215名とほぼ昨年と同数に。併願生を合わせると400人を超える新入生を迎えることになった。

この人気の理由について、鈴木校長は「本校の教育内容をよく理解していただき、『静学に入ったら、何か面白いことができそうだぞ』と思ってもらえているのではないでしょうか」と話す。


制服のバリエーションにスラックスとプリーツ・キュロットが追加され、それに合わせて、ネクタイも選ぶことができるようになった。自転車通学の生徒からも好評だ

意識高い生徒から刺激
生徒同士で高め合う校風

「だけじゃないチカラ。」をスローガンに、勉強はもちろん、部活や学校行事、ボランティア活動など、何でも全力で取り組む生徒を応援している同校。全国レベルで活躍するサッカー部、柔道部、卓球部などの運動部、文化部も活発に活動しており、学校全体が躍動感に満ちている。

学校評価アンケートでも、意識の高い生徒が増えていることが明確になった。「他の生徒の目標に向けた努力や姿勢に刺激を受けて、自分も頑張れる」と回答した生徒は、昨年の82%から89%と増加。目標に向かって頑張る生徒から刺激を受け、生徒同士互いに成長していこうという気運が高まっている。

同校の特色の一つ「SGT(SHIZUGAKU GOLDEN TIME)」では、幅広い学びの場を提供している。陶芸や和文化体験などの教養講座のほか、企業人や大学教授を招いての専門的な講座も開講。棚田に行って田植えをする農業体験も用意されている。

SGTは、生徒が好奇心の赴くまま自由に講座を選べるのが特長だ。大学入試が変わり、大学が求める学生像も変化している。これからの時代に求められる力(思考力・判断力・表現力)を育むには、SGTのような多様な学びが強みになる。

「卒業生や在校生からの『静学を選んでよかった』という声も、入学者増加の後押しになっているのかなと思います」と鈴木校長。校舎増築で学習環境を整え、さらなるステップアップを目指す。


(左)2016年の研修で、りんご畑での農業支援を行った生徒たち
(右)2018年には震災遺構として保存されている、陸前高田市の旧道の駅高田松原(タピック45)も訪問した

福島の発電所周辺へ
生徒が企画を考え、行動

東日本大震災の翌年から数年おきに実施してきた「東北ボランティア研修」。ここ数年コロナの影響でできなかったが、今年8月、2泊3日の予定で行われることになった。参加できるのは高2、3の希望者約20名だ。

第1回は、同校で使わなくなった机や椅子を被災した岩手県立大槌高校に寄付した縁から、岩手県内を訪れた。第2回、第3回も岩手県だったが、今回初めて訪問先を福島県に変更した。

生徒会ボランティア担当の齊藤史門先生は「岩手ではハード面での復興が進み、良い意味で震災の記憶は風化しています。今、震災の名残を強く感じられるのは福島の原子力発電所周辺であると判断し、目的地を変更しました」と話す。今回、生徒は相馬市内の民宿に宿泊。大熊町や双葉町、浪江町を訪問する予定だ。

このボランティア研修では、宿泊先やNPO法人への最初の打診は教員が行う。しかし、その後は生徒がどんな活動をするか決め、自分たちで交渉していく。パッケージツアーのようにお膳立てをしてしまったら、生徒の成長にならないと、齊藤先生は考える。

「福島で今、何が求められているかを、生徒たちで考えないといけません。たとえそれが、教師が意図しているものと違ってもいいです」と齊藤先生。実際これまでも、1、2回目とは違うことをしたいという生徒の要望から、3回目は農業支援と大槌保育園訪問になった経緯があった。

9人の園児が津波の犠牲になった大槌保育園。そのことを描いた絵本「あの日〜おおつち保育園3.11〜」の挿絵を描いたのは、静岡学園の美術講師・森谷明子先生だった。こうした縁を生徒が自主的に調べ、訪問を実現。保育園では生徒が「さるかに合戦」の劇を演じたり、一緒に遊んだりして園児を喜ばせた。

齊藤先生は「自分たちで考えて行動した経験は、自信につながります。自信を持つと人間は驚くほど成長します。高校時代にこうした経験ができると思うと、ワクワクしませんか? これがきっかけで人生が変わるかもしれません」と話す。

もちろん楽しいだけの研修ではない。宿泊するのは津波の被害を受けた民宿。現地の方の生々しい話は、生徒にはショックが強いかもしれない。

「静岡県には浜岡原発があり、決して他人事ではありません。原発を止めた場合、エネルギー需給はどうなるのか。火力発電の二酸化炭素排出の問題など、危険だから原発を止めようという単純な話ではないのです。福島のことを自分たちのこととして、考えてほしいと思います」と齊藤先生は語る。

この他にも、ボランティア活動を自主的に始めた生徒がいる。他校の高校生と一緒に、ボランティア団体「つばめ」を設立し、代表に就任したのは高校2年生の青野るいさん。使い終わった参考書を各学校の生徒から回収し、静岡市内で学習支援をしている団体へ譲渡をする予定だ。

生徒が自ら考え、のびのびと行動している静岡学園。新しい世代のリーダーの芽がすくすく育っている。

静岡学園中学校・高等学校 https://www.shizugaku.ed.jp/


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