マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

解なき時代を生きるグローバルな視座
多様性を受け入れる人間力と
自ら問い、学び続けられる力を創る

学校法人静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校(静岡県)

中学校の体育祭は、中学生自ら企画し、運営するのが開校からの伝統。集団を動かす自信と一生の仲間との絆が生まれる


「グローバルな先進教育を行う学校」として地域の熱い期待を背負う星陵中学校・高等学校。今春卒業した中高一貫6期生は高校生活の大半を新型コロナ流行禍のなかで過ごした。そんな逆境にあっても校内外に活躍の場を広げ、部活動や探究活動を頼もしくリードし、自らの使命を携えて東京大学をはじめ全国の国公立大や早慶など難関私立大へ進学していった。
先生方をして「変化に強い星陵生の真骨頂を見た」と言わしめた生粋の星陵生たちは、どのような学習環境で成長していくのか。星陵中学校は12年目の春を迎える。


「学び」を楽しみ
全能力をかけて「挑戦」する

「ワクワクしながら学校生活を楽しもうよ」――星陵中学校に入学した12期生に、渡邉一洋校長はそう呼びかけた。そして激動に揺れる世界で「学校」に求められるのは「子どもたちに『圧倒的な行動力』を育てることだ」と決意を語る。その証拠に、在校生たちはコロナ禍で様々な制限がある中「できること」を考え、提案し、実行してきた。校外にも探究学習の成果を積極的に発信し、科学・文化のコンテストで入賞するなど底力を見せる。

「驕り高ぶるでもなく、常に謙虚。謙虚だけど自信を持てる。プレゼンテーションでも各々の職責を全うしようと努力する。そういう生徒が確実に増えました」

渡邉校長は「リーダーの素質がさらに養われた」と太鼓判を押す。

「ICT機器の使い方を習熟する吸収力が、今までの生徒たちとは格段に違います」と語るのは橋本正中学校教頭。オンライン星陵祭で中1生が制作したCM映像「SDGs記者会見:昆虫食」の映像や編集の巧みさは圧巻だ。だが「肝心なのは中身」と高みを目指す。「昆虫食」は、先輩から代々受け継がれ、大切に深められてきた探究テーマだという。橋本教頭は「自発的にトリガークエスチョン(探究の引き金となる有益な問い)を提示できる生徒を育てたい」と語る。

星陵の中高一貫生らしさを先生方に尋ねると、「独自の興味関心の世界を持っている」「勉強だけではなく学校生活を楽しんでいる」そして「将来やりたいことがある」と異口同音に語られる。進路選択も「偏差値による学校選び」ではなく、「やりたいこと」がブレないまま、能力を最大に生かした入試に臨んでいく。特徴的なのは、一般選抜で受けるよりワンランク上の大学を総合型選抜・学校推薦型選抜で合格する生徒が多いことだ。卒業生の将来に橋本教頭は期待をふくらませる。

「1期生は23歳。理系の大学に行った子の多くは大学院へ進学、文系の子たちは住友生命・三井不動産・楽天など一流企業に入社しています。彼らが何を成し遂げるかは先の話ですが、中学で培った力が生かされているなぁ、と勝手に喜んでいます(笑)」


(左)臨海学校では、水生動物の現物を実際に観察し、生態から地球環境まで探究を深める
(右)水力発電所を見学する「エネルギー研修」では、富士・富士宮市の水資源の価値を多角的にとらえる

星陵流STEAM教育「美育」
SDGsの視点で世界を知る

科学・芸術・文化あらゆる分野の研修を通して、「本質を見抜く思考力」を育てる星陵流STEAM教育「美育」プログラムは、「まさに『興味関心を引き出す』目的で始めました」と橋本教頭は振り返る。「生徒が興味を広げて選んだ分野が進路につながるように生かしていかなければ、と思っています」と使命感をにじませる。

美育プログラムを精錬させてきた11年間の中で2019年に大転換があったという。それは「SDGs」の視点を土台に組み込んだことだ。以来、「美育」のほかフィールドワークや探究学習、文化祭などあらゆる局面をSDGsの切り口で思考することで、星陵生はよりグローバルな視座を得たようだ。

「下田臨海学校(中2)では、単なる生物研究から海や水の環境へテーマが広がり、コロナ禍前のハワイ修学旅行(中3)では、太陽光発電などエネルギーの観点でフィールドワークを行いました。国際問題も環境やエネルギー抜きでは語れないとウチの生徒たちは知っています」

ICT・探究学習の先進校だが、価値を重く置くのは、リアルな体験を五感で感じる「ピア・ラーニング」、そしてヒューマンネットワークの広がりだ。研修前には必ず事前学習で疑問を調べ、フィールドワークで検証し、プレゼンテーションを行う。体育祭の自主的な企画運営も1期生から続いている。

「すべての過程にチームワークが必要です。人の意見を聞くし、自分も発言する。パワーポイントで資料をつくり、プレゼンを皆で考えて役割分担する。堂々としたパフォーマンスや発言力には、歴代先輩たちのDNAを感じます」


(左)学校生活のあらゆる場面でディスカッションが活発に行われる。「生きる力」となるコミュニケーションスキルの向上に
(右)星陵ラボ「小水力班」は、小水力発電を効率的に利用する地産地消のエネルギーミックス・分散型社会モデルを提案する

進学実績は自然についてくる
未来を生きる力を育む学校

昨年度の入試では、定員60名に2日間の日程で約180名の受験生が集まった。2教科型・4教科型・創造力型と多様な形態を揃えており、受験生は2回チャレンジできる「2日型入試」。約9割の生徒が両日受験するという人気ぶりだ。入試対策は「普段から社会で起きている事象に目を向け、文章に慣れ親しむこと。基本問題は確実に得点できるように」と橋本教頭。

「星陵中にフィットするのは、自分の興味関心に素直で、自分でどんどん調べて、人にも尋ねる探究心旺盛な子。探究学習を行うので基礎力をしっかり持って入学してほしいです」

教員と生徒が一丸となり、小学生に星陵中の魅力を伝える「学校体験」や「星陵ラボ体験教室」、学校説明会や入試対策講座を精力的に行い、「星陵中学校が目指す教育」の地域への浸透度は高い。子ども3人とも星陵中・高の卒業生で「11年間、星陵に通った」という家庭もある。

保護者が星陵に寄せる期待と信頼に橋本教頭も自信を見せる。

「卒業生の保護者からよく言われるのは『学力だけではない、生きる力も育ててくれる学校』という言葉です。1学年2クラス、6年間過ごす仲間はほぼ家族。それでも他者の多様性を受け入れながら付き合っていく人間力が、『生きる力』につながるのではないでしょうか」

そうした仕掛けが随所に散りばめられ、それを校風として生徒が受け継いでいく。12年目を迎える星陵中学校の「伝統」はすでに始まっているのかもしれない。

学校法人静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校 http://www.starhill.ed.jp/


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