マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

生きる力を育む「園芸」
個性を認め、協力し合う心

恵泉女学園中学・高等学校(東京都)

電子黒板で白い品種のイチゴを紹介する園芸科 清水香織先生


自然に親しみ、仲間と協力しながら植物を育てることで、生きる力を育む「園芸」。恵泉女学園の特色ある教育の一つだ。中学1年生のイチゴに関する授業ではジャムづくりも体験。授業を担当したのは恵泉の卒業生でもある清水香織先生。自分で考えて行動することにも重点を置く授業の様子をリポートする。


イチゴの果実はどこ?
どうしてジャムはできる?

教室中に漂う甘酸っぱいイチゴの香り。「すごくいい匂い」「まだ、サラサラしているよ」。生徒たちはイチゴを煮ている鍋を覗き込み、変化していくイチゴの様子に興味津々だ。

中学1年生の梅組の生徒がイキイキと取り組んでいるのは「園芸」の授業。この日は2時間続きの授業で、最初に植物としてのイチゴについて学んだ後、グループに分かれて、クラスで育てたイチゴなどを使ったイチゴジャムづくりを行った。

「イチゴは、種子だと思われている粒の部分が果実で、赤い部分は『花床(かしょう)』と言います。あのつぶつぶ一つ一つにリンゴなどの果実が1個ずつ付いているイメージですね」と、わかりやすく説明するのは、授業を担当した清水香織先生。

この授業の狙いは、それぞれの果実の違いやその保存・加工方法を知り、ゲル化の様子を観察すること。イチゴはただ煮るだけではジャムにはならない。イチゴに含まれるペクチンと、糖(砂糖)と酸が反応することでジャムができる。

3つの材料を入れた鍋の中身は、温度が下がるにつれ、サラサラからトロトロへと変化。ビンに詰める頃にはゲル化し、とろりと粘り気が出ていた。

生徒たちは、鍋をかき混ぜる役、糖度を測る役など、それぞれ役割を分担しながらジャムづくりに挑戦。協力して作業することで働く喜びも学んでいた。

ジャムが完成したら、他の果実でのジャムづくりの映像も視聴。最後は授業の内容をプリントにまとめて終了した。


焦がさないように慎重に、交代しながらイチゴを煮詰める生徒たち

「わかった!」が楽しい
自分で考える姿勢

清水先生が授業で大切にしているのは、「自分で考え、行動する姿勢」だ。

「生徒から質問が来たら、すぐに答えを教えず、考えるための材料を提供するようにしています。『こんなヒントもあるよ、こう考えたら、どうなるかな』と伝え、生徒自身で結論を導き出せるよう心がけています。こうした体験が学んでいて一番楽しく、『わかった!』という純粋な気持ちにつながると考えています」

清水先生は、一人の生徒の疑問を、他の生徒にもシェアするようにもしている。

「生徒には、いろいろな人の意見を聞くことで、考え方の多様性を知ってもらいたいと考えています。恵泉は個性を大切にする学校です。自分と考えが違っていても、まずは他人の意見を受け止める。そして、賛成できなくても相手を傷つけない形で、自分の意見を伝えられるようになってほしいと思っています」

高校生の園芸では、カリキュラムはあるが、天候や育てている作物の状況によって、今日は何の作業をするか、自分たちで決めることが求められる。

「畑の雑草も取らないといけないし、苗の定植もしないといけない。限られた人数で決まった時間までに作業を終えるにはどうするか、自分たちで考えないといけません。草取りの方法も抜くのがいいのか、刈るのがいいのか、最後に作物が実ってからわかる。それも園芸の面白いところです。上級生になったら、さらに主体的に考え、協力しながら動けるようになることを目指していきます」


でき上がったジャムをレードルで瓶に詰める。「食べたい!」と生徒たち

酪農体験がきっかけで
大学の進路を決定

清水先生は恵泉女学園中高の卒業生。動物や植物が大好きで、大学は畜産を学ぶために東京農業大学に進学。その後母校に戻り、園芸の教師となった。

東京農大を目指したのは、中学2年生の「清里ファームワーク」での酪農体験がキッカケだ。「牛が草を食べ、乳を出し、糞をし、それが堆肥となって、再び大地に草が生える。その循環がなんて素晴らしいんだと感じました」

生徒たちにも中高時代に様々な体験をし、将来の糧にしてほしいと清水先生。土や動植物に触れる豊かな体験が、生徒の視野を広げている。

恵泉女学園中学・高等学校 https://www.keisen.jp/


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