マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

生徒主体の力で一致団結した体育祭
学びを止めないオンライン授業・ハイブリッド化

学校法人盈進学園 東野高等学校(埼玉県)

体育祭団長の皆さん。
上段左から橙:檜垣晧さん、黄:小山歩翔さん、青:川崎成路さん
下段左から桃:成内大恭さん、緑:林勇太さん、赤:鈴木結衣さん


6月23日、コロナ禍で学校行事の開催が難しくなっている中、生徒と教員が力を合わせ、思い出に残る体育祭を行った東野高等学校。団結力を発揮したのは、6つの団をそれぞれ率いた団長だ。2人の団長と実行委員の志村翔平先生に、どのような思いで体育祭に臨んだのかインタビューした。
また、体育祭の翌日には、1年生を対象にしたオンライン授業を実施。新型コロナの感染予防だけでなく、自然災害時にも授業が行えるよう備える学校の取り組みを、教務部長の樋口雅浩先生に伺った。


教室からでも、熱い応援!
新種目でどの生徒も輝く

アナウンサーのような実況中継と、生徒による英語と日本語によるヒーローインタビュー。まるでスポーツ中継さながらの臨場感で、大いに盛り上がった東野高等学校の体育祭。

新型コロナウイルス感染予防対策として、全生徒がグラウンドに集合するのは開会式と閉会式のみ。競技に参加する生徒以外は、教室で応援するスタイルとなった。

昨年から地元ケーブルテレビの協力を得て、競技の様子をリアルタイムで各教室に配信。今年はテレビクルーと綿密に打ち合わせをし、スポーツ観戦をしているような迫力の映像をつくり上げた。その映像を見ながら、生徒たちは熱い声援を送った。

体育祭実行委員の一人である志村翔平先生は「今年は団長の個性を打ち出して、団の結束が高まるようにしました」と話す。

体育祭の団は3学年の縦割りで、全部で6つ。各団の団長は赤:鈴木結衣さん(陸上部)、青:川崎成路さん(サッカー部)、緑:林勇太さん(野球部)、黄:小山歩翔さん(サッカー部)、桃:成内大恭さん(軽音楽部)、橙:檜垣晧さん(サッカー部)の3年生が務めた。

鈴木さんは唯一の女性団長。「昨年、私の団の団長が女子で、カッコいいと思って見ていました。なので、今年は私が団長に挑戦しました」と鈴木さん。文化部から団長に立候補したのは成内さんだ。「最後の体育祭なので思い出をつくりたかったのと、少しでも体育祭を盛り上げられたらと思い、立候補しました」と話す。

新種目である「東野怪力王」とは、20キロの砂が入った麻袋を頭上に持ち上げている時間を競うシンプルな種目。団代表の力自慢の男子のパワーが炸裂した。「『走るの、あまり得意じゃなかったけれど、この種目で優勝できた』と、生徒に言ってもらえたのが嬉しかったですね」と志村先生は話す。

団長たちは体育祭前に「あいさつ運動」と連動し、各クラスを回って団結を呼びかける機会があった。

成内さんは「一番最初に入ったクラスでは、静かな雰囲気を考えず『頑張るぞ!』と勢いよく声を出したら、思い切りスベってしまいました。クラスのテンションを見てから、どういう掛け声にするか、気をつけるようにしました」と話す。

団長をやったことで「皆の前で、自分の意見をわかりやすく伝える事の大切さを学べました」と成内さん。成内さんは生徒によるアンケートで、一番リーダーシップを発揮した団長にも選ばれている。鈴木さんは「私も、自分と団のみんなが同じ気持ちになるにはどうしたらいいか、よく考えて話すようになりました」と話す。

将来は数学の先生になるのが夢という鈴木さんと、家業を継ぐため大学で建築の勉強をしたいと考えている成内さん。「この学校の素晴らしさは、先生方が生徒の意見をしっかり聞いてくれるところ。学校全体の雰囲気がとても良いです」(成内さん)。鈴木さんも「部活の環境も運動部・文化部ともに整っていますし、進路指導も親身になってくれる学校です」と、東野高校の魅力を伝えてくれた。


左から鈴木結衣さん、成内大恭さん

家だからこその学び
ユニークなオンライン授業

体育祭の翌日、東野高等学校では1年生のみオンライン授業を行った。これまでもコロナ時にオンラインで授業をすることがあったが、いつもと同じ時間割通りに行うのは今回が初めてだった。

教務部長で物理の教員の樋口雅浩先生は「新型コロナだけでなく、自然災害で登校ができない場合などを想定し、通常と同じスタイルで授業を行いました」と話す。

教員は学校の教室で授業を行い、Zoomを使って配信。通常授業時間は45分だが、画面を見続ける負担から40分に短縮し、休み時間は多めにとった。

「体育祭の後だったので、実技教科の体育では、体をほぐすストレッチにするなど、家でできる内容に切り替えました。一方、家でしかできないことをしようという逆転の発想もありました。地歴の授業では、家の中にある様々な産地の食べ物を探すなど、生徒が興味を持てるように工夫もしました。オンライン授業をマイナスに考えるのではなく、前向きに捉えていけたらと思っています」と樋口先生。

同校では今年度に入ってから、オンライン授業の研修をさらに強化。各教科の教員が集まり勉強会を行うなど、教科の特性によってどのように授業を進めたらわかりやすいかブラッシュアップを重ねている。


オンライン授業を行う教務部長の樋口雅浩先生。今年度からさらに、それぞれの教科の特性に合わせて、工夫を凝らしたオンライン授業を展開している

樋口先生はオンライン授業を「ネットリテラシーを学ぶ機会」にしたいとも考えている。「本校では、オンライン授業は顔を出して受けるルールにしています。これにはいろいろな意見が出ましたが、一般的にはZoomで打ち合わせをする時には、顔を出すのが当たり前。そうしたマナーやリテラシーも身につけてほしいという思いもあります」

今年の目標は「どんな時でもすぐに対応できるよう、全学年でのオンライン授業を確立すること」と樋口先生。実際、後日新型コロナの感染者が出て、急遽そのクラスはオンラインにする必要があったが、スムーズに移行できたという。

「オンライン授業と対面の授業、どちらもメリット・デメリットがあります。どちらかに偏ることなく、時代に合わせてICTのスキルを使いこなせるようにしていくのが大事だと考えています」と樋口先生。

ウイズコロナの時代、東野高等学校は新しい発想で学びを止めない工夫を続けている。

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