マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

留学中止に負けない高い進学率
辛い経験を越えさらなる進化を目指す

桐陽高等学校(静岡県)

ネイティブ講師のもとで考え、言語化することで英語脳をつくるアカデミックスキル


ここ数年国公立・難関私立大学への合格者をコンスタントに輩出し続けている桐陽高等学校。中学の成績からは考えられない大学に進学するケースもあり、保護者の期待もどんどん高まっている。一昨年コロナ禍により渡航がかなわなかった「留学進学コース」の生徒たちが、この春高い進学率を置き土産に卒業していった。それには7年前からスタートしていたICT推進委員とその設備投資が、一助を担っているという。彼らを見守り、共に悩んだ先生方に、当時の様子と今後の桐陽高校についてお話を伺った。


渡航はできなくとも後悔させない!
生徒の成長を願い模索した2年間

留学コース30年の歴史の中で初めての事態となった、緊急事態宣言の発令。2年生の1年間を留学期間とする「留学進学コース」の生徒たちは、出発するはずの4月に登校すらできず自宅待機となった。先が見えないながらも、「現地に行かせたい!」と願う先生方は、次のチャンスを掴むべくアンテナを張り、いつでも留学に送り出せるよう準備を整え、ギリギリまで可能性を探った。

その間、副教頭兼国際交流課長の杉澤博文先生と、留学進学コース担任の大谷葵先生は、保護者の方々へ進捗状況を報告し、情報共有に努めたという。もともと保護者からの信頼が厚い同校、保護者の方々も様子を窺いつつ、温かく見守ってくれた。

クラスでは留学と同程度の英語力をつけるべく、2年の二学期より『アカデミックスキル』、『GEMオンラインプログラム』の2つのプログラムを開始した。留学準備コースとして1年次から組み込まれているアカデミックスキルは、ネイティブ講師を迎え、海外マインドを学びながら英語力を磨くプログラム。今回特別に、より深い内容でオリジナルのコースをつくってもらった。

一方、GEMオンラインプログラムは海外の講師とオンラインでつなぎ、出された課題をチームで考え、まとめ、プレゼンテーションする。英語でのインプットとアウトプットをひたすら繰り返し、思考力、協調性、表現力などすべてを鍛えてゆく。

「課題は段階を踏んで自分自身を掘り下げていく内容になっており、最後は『将来どんなことをやりたいか』をテーマにします。自分が何に興味を持っているかを自身で掘り起こし、『こうなりたい!』というプレゼンテーションにつながっていきました。前向きに取り組む子たちが多く、たとえ留学に行けなくても、違う方向性やさまざまな考え方があるという事を、講師の方から学ぶことも多かったと思います」(大谷先生)

結果、英検準一級の合格率が6割を超え、留学は叶わなかったが、英語力は確実に身についた。


留学の可能性を探り続けた副教頭兼国際交流課長の杉澤博文先生(左)と、涙を滲ませながら当時の様子を語る留学進学コース担任の大谷葵先生

教師と生徒の深い信頼関係が
高い進路実績を打ち出した

例年国公立大学・難関私立大学への入学者数が80名を超える同校。今春、早慶上理をはじめとする難関大学進学率は、留学進学コースだけで例年の2.8倍となった。

留学中止が現実となったが、それでも最後には納得して卒業してもらいたい。そう考えた先生方は、生徒一人ひとりのやりたいことや行きたい進路先を、コミュニケーションを重ねて絞り込んでいった。例年との違いは、法学部など社会的な学部に進んだ子が多かったこと。自分の特性を探りながらシフトしていった生徒たちだ。

「クラス全体として『諦めない!』という雰囲気があり、各教科担当の先生方も最後まで伴走してくださいました。卒業式には『後悔していない。桐陽に入ってよかった』と言ってくれる生徒たちが多くて。本当に嬉しかったです」(大谷先生)

大谷先生は同校・同コースの卒業生でもある。例年にない状況で初めて3年生を担当し、周りの先生方に助けられながら、生徒たちの芯の強さを感じ続けた2年間だったという。


(左)iPadを駆使し、海外の講師とオンラインで対話、課題を掘り下げていくGEM
(右)各クラスの動画作品を視聴し、投票が行われた第1回February Festival

第1回TOYO February Fes.開催
iPadで生徒たちの表現力を強化

7年前にICT準備委員会を発足、着実に校内のICT環境を進めてきた同校。昨年度より1人1台iPadを持たせており、来年度で全学年に行き渡る。コロナ禍でも校内すべてのICT環境を駆使して、留学進学コースのオンラインでの学びを支えてきた。そして今年初めて、タブレットを使ったイベント「第1回TOYO February Fes.(通称T.F.F.)」を開催した。

各クラス自由な発想で15分ほどの作品をつくり、発表するこのイベント。敢えて授業時間を割かず、生徒だけで計画し、部活動や勉強と両立しつつ進めてもらったという。

コロナ禍を経た現在、全国的に学校行事も縮小されていく中で、「ICTを使えば授業に影響を与えず新しいことができると考えた」と松本日出年教頭先生。「来年以降も生徒の自主性に任せて続けていく予定です。将来的には1日かけていろいろなチームが発表・上映するという、文化祭のような規模にしたいですね」

また、今年度より初めて学習ツールとしてのアプリ『Monoxer(モノグサ)』を導入。「記憶定着に特化した内容で、会社でも英語検定などのスキルアップ用に使われています。検証の結果、このアプリで結果が出ることがわかったので、本格的に導入となりました」(ICT推進委員長 山梨貴正先生)。新しいものを積極的に取り入れ、学びの環境を充実させていく同校の姿勢には、生徒第一の姿勢がうかがえる。

コロナ禍でこそ、学校の存在意義を知ったという同校は、T.F.F.の開催に加え、今年度から2つの部活動を新たにスタート。「勉強はオンラインでも結果が出ることがわかった。じゃあ学校でしかできないことはなんだろう? と考えた時に、同じ年齢の子たちが集まって切磋琢磨できるのは、学校行事や部活動だと思ったんです」と、松本教頭。

新しい時代に向けて、こうした細かな進化を繰り返しつつ、着実に結果を出し続けていく桐陽高校。生徒たちの思いを先生方が熱意で受け止め、その相乗効果で生徒たちは想像を絶する成長を遂げていく。

桐陽高等学校 https://www.toyo-numazu.ac.jp


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/east/toyo-numazu/