マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

CHALLENGE(挑戦)、CHANGE(変化)、CONTRIBUTION(社会貢献)
「3C」を体現する学校が未来をつくる

青稜中学校・高等学校(東京都)

「子どもたちの笑顔のために」昨年度は教員と生徒が様々な制限をアイデアとバイタリティで克服し、多くの行事を復活させた


 「教員や広報が魅力的な青稜をつくるのではなくて、受験生・保護者の方には、いまの学校そのもの、生徒たちの姿から的確に評価をしてもらいたい」と語る募集広報部長・伊東充先生の言葉には、青稜中学校・高等学校は教員・生徒が一緒にCHALLENGE(挑戦)し、共にCHENGE(変化)してつくり上げてきた、という自負が垣間見える。正解のない世界・不確かな未来に向けて青稜が掲げる「希望進路」というワードにこめられた、CONTRIBUTION(社会貢献)のあり方に迫る。


楽しくなければ学校じゃない
宿泊行事を復活した理由

昨年の初夏、グラウンドに歓声が湧き起こった。学年限定の小規模ではあるが体育祭が復活。秋には、膨大な制約のもと青稜祭が実施された。生徒たちの行動力、結束力に伊東充先生は青稜の新たな時代の到来を見たようだ。

「新型コロナの影響で、子どもたちはどんどん発想を変えて動いていました。アイデアでぶつかり合いながらも、バイタリティやサービス精神も旺盛で、来場者の方々と一緒になって楽しんでいましたね」

今春には、バスの台数や部屋を倍にすると青田泰明校長が即断して修学旅行・スキー教室など宿泊行事が復活。教員間に反対・危惧する声がなかったわけではない、と伊東先生。子どもたちにも「スタートを切る君たちがきちんと行動すれば、次の代にも道が開けるんだよ」と責任感をもたせた。

帰ってきた教員・生徒は一様に「すごく良かった!!」と大喜び。リスクを抱えてなお宿泊行事を経験させたかった教員たちの思いの深さを尋ねてみたところ、返ってきたのはシンプルな言葉だった。

「子どもたちの笑顔です。コロナ禍のなか緊張感を持ちつつ生活し、明らかにエネルギーがあり余って充実していない様子が目に見えていた。旅行後、生徒同士そして教員とのつながり、学校における居場所感が深まりました。『非日常の経験から得られる云々』みたいな目標よりも『学校での日常』の方がウチには大事なんです」

楽しくなければ学校じゃない――青稜が「普通の学校」にこだわる所以だ。


(左)青田校長が担当する「青稜のゼミ」ではSDGsを切り口に、企業とのコラボレーションから次代の社会貢献のスタイルを生み出した
(右)部員100名を集める生物科学部。入部を目指して受験する生徒がいるほど大人気。大学との共同研究など活動は本格的

中学生を一気に成長させた
「青稜のゼミ」の知的世界

もう一つ、宿泊研修先で教員たちを驚かせたのは、現在の高1なかでも内進生の、先回りして思考できる行動の速さ、スムーズさだという。

例年「高入生より内進生は精神面で幼い」が定説だったが、今年は逆転現象が起きたという。伊東先生は「青稜のゼミ」の効果と分析している。週2時間の「青稜のゼミ」は、SDGs活動や探究、文学や音楽史や気象の研究、料理やスポーツにプログラミングと、各教員が好きなテーマで展開する14講座が設けられている。教科や学年の枠を越えて集ったメンバーが、発想の豊かさや鋭さ、表現の巧みさなど特性に一目置きつつ、共に学び、協働する。

「高1の内進生は、このゼミを2年間受講しました。年齢や立場を超えて意見をぶつけ合い、テーマを掘り下げるので『思考する』機会が格段に増えました。講座によってはプレゼンテーションも行われるので他のゼミ活動も見えるし、得たものをフィードバックして自分も変わっていく。結果、多種多様な資質を持った集団が形成され、組織全体の実力がボトムアップされたのではないでしょうか」

ゼミから派生してクラブに発展したものもある。青田校長のゼミから生まれた「SDGs部」では、CSR活動に熱心な企業とコラボレーションして多くのプロジェクトが生まれている。また、多様なメディアが発信する「物語」から社会的メッセージを読み解くゼミからは、視覚メディアの社会性に着目した「青稜アニメーション」(映像作品の制作を担う。文化祭では、CM制作の依頼を請け負う予定)など、いずれも知的好奇心に火が点いた生徒たちが立ち上げた。

中学入試では、受験者層・入学生ともに偏差値が年々上がり、今年の新入生も「未だかつてなく落ち着いていて大人っぽい」と教員たちは目を見張る。

3年目となる「オンライン帰国生入試」も口コミが広がり世界中で認知されてきて、昨年度はドバイやロシアからの受験者もいた。「優秀な生徒が増え続けているのはデータからも明らか。今後、彼らにどんな知的刺激を与えて、希望進路を見つけさせるかが課題です」と伊東先生は、挑戦の意欲を声ににじませた。


(左)外国人教師による英会話の授業。少人数による分割授業で、積極的に授業に参加しやすい学習環境でコミュニケーション能力の育成をはかる
(右)言語学習において大切なのは基礎の徹底と反復学習。音声・ビジュアル教材等を駆使して生徒の学習意欲を引き出しながら、英語を学ぶ

米国の大学進学への道を拓く
デュアル ディプロマ取得

ゼミは「コロナ禍に、面白いことを教員たちから発信する」ことを目的に始まったが、青稜が命題と掲げる「希望進路」の選択幅が広がることを、伊東先生は期待している。

「未来は決して暗くない、と思うのは、私たちが歩いてきた線路とは完全に違う、多岐に渡るレールが眼前に広がっているからです。『あなたたちは、どこでも歩けるんだ』と伝えていますし、実際、子どもたちはすごい可能性を秘めています」

今年度から本格始動した「DDP」(デュアル ディプロマ プログラム:中3・高1対象)は、青稜に通いつつアメリカ名門進学校の卒業資格が取得できるプログラムだ。

全米ハイランキング18大学を含む200以上の大学への推薦入学、帰国子女枠を設ける国内大学進学が可能となるので、さらに青稜生の「希望進路」の選択肢が増えるだろう。今春の卒業生は332名。うち53名が国公立大学、111名が早・慶・上智・東京理科大、232名がGMARCHに合格、大学への現役進学率87.6%は過去最高だ。学校が仕掛けた様々な取り組みが功を奏した見事な成果といえるが、伊東先生の視座は、そんな予定調和を超えたところにある。

「僕ら大人が、目標や目的を考え尽くして、生徒に提示した企画って、大した効果は出ないんです。それよりも僕らが『やってみたい!』とあたふたと先走った結果、そんな大人たちを見かねた子どもたちが、一緒になってつくり上げていく方が、彼らは伸びる。そうやってつくられたものの方が、僕らの思惑を越えた前衛的かつ素晴らしい作品に仕上がるし、次代で真価を発揮するものになっていくと思うんですよね」

それが青稜の目指す「希望進路」であり、青稜の社会貢献のありかたなのかもしれない。

青稜中学校・高等学校 https://www.seiryo-js.ed.jp/


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