掲載:塾ジャーナル2021年5月号

SDGsをジブンゴトに
鯉のぼりはどれが上かわかる?
塾講師の傍ら、歌手としてシャンソニエのステージに立つ

やまもと俊子(やまもと としこ)

いらかの波と……

「いらかの波と雲の波」と歌っても、今や我が国の建物に甍(いらか)はあまり見当たりません。鯉のぼりを立てる家庭も減っているので、ピンとこないお子たちは多いかと思います。そもそも鯉のぼりは、鯉が激流を上り詰めれば龍に化身するという中国の故事によるもので、まさに登竜門に向かって泳ぎ上がっていく姿。従って厳密には、風になびいて水平になった状態より、風がなくダラリと下がっている残念な姿のほうが、角度的には「鯉の瀧のぼり」に近いような気がします。しかしそんな鯉のぼりじゃ元気は出ませんね。

端午の節句は「こどもの日」と名を変えて、男の子だけの祭りではないことになっていますが、唱歌の3番はこう歌われます。「わが身に似よや男子(おのこご)と」そう、悠然と泳ぐ鯉は「男の子」にだけ呼びかけているのです。この曲が教科書に載ったのが大正12年、「男女7歳にして席を同じうせず」の時代では当然といえば当然。しかし作詞者は、100年後に小学校の名簿が男女混合になるとは思わなかったでしょうね。

こいの順列組合せ

「鯉のぼりはどれが上かわかる?」という謎々があります。黒の真鯉に決まっているだろというのは固いアタマ。「こいに上下の隔ては無い」というのが答です。コイは恋にかけているので、やや大人向けかしら。でも初恋は幼稚園と答える人も少なくないので、恋の基本は小学生でもわきまえておきませんとね。「わきまえ」といえば、これまでは真鯉に譲り続けていた緋鯉たちも、これからはわきまえを捨てて一番上に回るかもしれません。それが当たり前の社会になっていけばいいなぁ。

そういえば、大きな真鯉を「お父さん」とし、やや小さい緋鯉を「お母さん」、青や赤の小さい鯉を「子どもたち」と家族に見立てることも、そろそろ困難になりそうです。小学校の教員をしている友人から「実際のところひとり親の世帯はかなり多い」と聞いたことがあります。私の働いていた塾でも、保護者の呼び方にはとても注意を払っていました。なにしろ「両親が離婚して、父とともに父親の実家で暮らしていたが、父は新たな配偶者を得て別の家庭を持ってしまったため、子どもだけが祖父母と残った」というような例が珍しくないのです。「お父さん」「お母さん」は禁句で、必ず「おうちの人」と言うようにしていました。2人の親と子どもという組み合わせが必ずしも「平均的な家族」と言えなくなる中、夫婦別姓も含めて多様な視点が求められますね。

唐突なようですが、SDGsはご承知の通り17の目標と169のターゲット。国連の目標なんて言うと、妙に大規模なことをイメージしがちですが、鯉のぼりの歌を歌いながら、ジェンダーやらパートナーシップやら教育やらと考えてみたら、私たちの毎日の行動はどこかで必ずSDGsにつながっていることに、改めて気づかされた次第なのでした。

【SDGs17の目標】
1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう
6. 安全な水とトイレを世界中に
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
10. 人や国の不平等をなくそう
11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任 つかう責任
13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさも守ろう
16. 平和と公正をすべての人に
17. パートナーシップで目標を達成しよう



やまもと俊子(やまもと としこ)
ライターと塾講師の傍ら、歌手としてライブハウス、シャンソニエ等のステージに立つ。週刊文春に月2回、コラム「いっぷんでよめるにっぷんばなし」を連載中。余暇のガールスカウトは活動歴50年。保護司でもある。