掲載:塾ジャーナル2021年7月号

授業作りへのアプローチ
『現代文基礎』の授業――教材はこんなのを使う

仲国語ゼミ 塾長 仲 光雄

高校生と既卒生対象の小さな国語塾をやっている。年によって人数も生徒層も大きく変わる。昨年は、共通テストの初年度だった影響で、国公立志望者がほとんどだったが、今年は生徒層が多様になった。
今月のコラムは、低学力層対象の現代文の教材の紹介をする。


〈まとめを覚える〉だけの生徒

短大志望の高校3年の女子生徒が、「現代文」だけを習いたいという。

Aさん:入試科目を調べたら、「英語」と「現代文」だけです。今まで、まったく勉強していません。
仲:高校で「現代文」を習っているでしょう。
Aさん:高校の「現代文」は、先生がまとめてくれたものを考査の前に丸覚えします。学校の成績はよいのですが、「模試」になると手も足も出ません。
仲:授業で、先生が文章の読み方を説明してくれるでしょう? そのやり方を真似て読めばいいのです。
Aさん:先生の説明は面倒だから、〈まとめを、はい覚えちゃえ〉という感じですね。

受け答えもきっちりできる生真面目な生徒のようだが、「国語」というものをちゃんと学習していないようだ。

国語に関心も意欲もない生徒

次は、四年制大学志望の男子生徒で、高校3年。こちらは、先の女子生徒と違って、高校の定期考査の時の〈丸覚え〉もしないらしい。

B君:僕にとって「現代文」は顔も見たくないという感じです。授業の時はノートもとらないし、ぼんやりしているだけかな。寝ることはないけど。
仲:中学校の頃もそうだった?
B君:そうでもなかった。中学の時、先生がこの文章についてどう思うかと質問したので、僕がこう思うと答えた。そうすると「それは間違いです」と言って、あとは無視。その頃から僕の方も国語を無視したかな。

彼の場合、ちょっと屈折がありそうだが、私の塾での仕事は、文章を読む「手順」を納得するように教えてやることだろう。

「宿題」を二種課すことにした

このような生徒を対象にした「現代文基礎」の教材を下段に示す。
まずは、「宿題」を2つ。塾生もそうだが、保護者の方が「宿題」を期待なさる。

宿題Ⅰは「漢字書き取り」の課題プリントである。覚えるべきものを各回25個ずつ示して、次の授業までに覚えてこさせて小テスト。負担になるようなら、量を減らす。機械的暗記にならぬように、意味を付記しておくのがポイントである。語彙を増やす目的もある。

宿題Ⅱは単純な作業のようだが、生徒は結構手間取るようだ。この宿題をきっかけに、今までになく新聞を読むようになったと保護者が喜んでくださっているのは嬉しいことだ。慣れないと的確な「要約」は難しい。記事の最後あたりを抜き出しただけのものでも、「よう書いた」と励ますことにしている。

読解の手順を示せる例文を扱う

(授業で扱う)課題文は、看護婦がお年寄りを「何々さん」と呼ぶか、「おじいちゃん」と呼ぶか、という具体的な事例から書き起こされる。

そして、「2つの視点」というように論が進む。ここの所を生徒たちに自分の頭で考え、整理させたいと思って、問一をセットした。答は、〈1=何々さん、2=おじいちゃん、3=一人ひとり別にみている、4=十把一からげにしている、5=個々の老人〉だが、この「対比されている内容をつかむ」が読解の手順の一つ目である。

さらに、どちらの視点を良しとするのかをおさえさせる目的で、「筆者が意見を述べている段落」を指摘させる問二をセットした。答は、④と⑥である。そして、「筆者の主張」を考えさせることになる。問三は、エが正解。「一括処理に走らない」がポイントとなる。生徒の好きな消去法なら、アは「老人呼ばわり」、イは「現実味に欠け」、ウは「人権云々」が本文にあわないので×となる。

問四のような記述は、生徒にとってはハードルが高い。無理強いはせずに現時点での国語の力によって扱いを変えることにしよう。


仲国語ゼミ 塾長 仲 光雄  http://nakakokugozemi.com/
京都大学文学部卒業。東大寺学園・奈良女子大学中等学校国語教諭を経て、河合塾講師(古文)をつとめた。現在は、仲国語ゼミで教えながら、中高生向けの国語関係の参考書・模試問題の執筆などの仕事をする。