掲載:塾ジャーナル2023年1月号

【新連載コラム】意志あるところに道は開ける


作家/教育&介護アドバイザー 鳥居 りんこ


努力を惜しまず働く
外国人の姿に感動

明けましておめでとうございます。
新春早々、のっけからこんな話でスタートして恐縮です。

ワタクシ、昨年、突然「アドレスホッパー」というものに憧れまして、せっかくなので、ふた月ほどではありますが体験してみました。アドレスホッパーとは、アドレス(住所)をホッピング(転々と)するという意味。つまり、定住する家を持たずに移動しながら生活する人を指します。

今はとてもいい時代で、職種にもよりますが、パソコンさえあれば場所を選ばずに仕事ができます。どこにいようが、どこに住もうが、Wi-Fi環境さえあればいいので、そういう意味でも生き方の選択肢は格段に広がっているように思います。

ワタクシは普段は田舎町住まいですので、せっかくの機会であるならば、都会でアドレスホッパーをしてみようと思い立ちまして、「THE東京!」といえる街に滞在しておりました。

そこでビックリしたのは、外国の人たちが働く姿の数々です。コンビニ店員、ホテル従業員、飲食店従業員などなど、会う人会う人、接客業のほとんどと言ってもいいほどに、私が遭遇する方は様々な国の人たちなんですね。

「え!? ここ日本ですよね!?」と確認したくなったほど、今や都会はこんなことになっているのか!? とめちゃめちゃ驚きました。「日本語通じなかったらどうしよう⁉」と焦りましたが、心配は無用。彼らは仕事で使うであろう日常会話は日本語ペラペラ。何の支障もありません。しかも皆さん、お仕事も的確で好印象。真面目に努力されている様が透けて見えるので、「言葉も違う異国で、しかも『空気読め文化』が強い国で頑張っているんだなぁ……」と感心を通り超えて、尊敬の念を持ったほどです。

彼らを見ていると、行こうと思えばどこにだって行けるし、やろうと思えば意外と何でもできるような気持ちがしてきて、素直に「私もガンバロ!」と思いました。このような例を出すまでもなく、今や地球は狭く、世界は実に身近であります。

「幸せな生活とは何か?」を問う
「国際教育」

さて、ワタクシはありがたいことに、いろいろな学校にお邪魔させていただく機会に恵まれておりますが、その中で卒業生の動向を聞かせていただくことも多いです。近年では、その会話の中で「海外で活躍する卒業生」の話もごく自然に出てきます。今や、世界で働いていることは特別なことでも何でもなく、生き方の一つに過ぎないんですね。

聞かせていただくお話は、それこそ日常会話の延長で、雑談の中で出ることばかりです。「あるOBの仕事先の韓国では、上司がブルガリア人で同僚がラトビア人」とか、「フィンランドからタンザニアに仕事を変えたOGがヤギ2頭でプロポーズされたけど、『ヤギ、少っ!』という理由で速攻断ったらしい」などなどですね。思わず「へ~!?」という言葉が漏れ出てしまうほどに面白い話がテンコ盛りなので、聞いていても楽しいことだらけです。

なかでも、ある学校で校長先生に教えていただいた話が印象に残っています。

「どうしてもアフリカで働きたいと言って旅立ったOGが、『世界は4つの段階でできている』とメールしてくれた。それは、①水が出る②水が続けて出る③お湯が出る④お湯が続けて出る、であると。そして『自分は①の場所ならばやっていける』と言ってくれたことが本当に頼もしく、嬉しく思った」というような内容です。

その学校は「国際教育」には定評がある学校ですが、その校長先生が「人の人生と文化をリスペクトせよ」と生徒たちに繰り返し、語りかけていたことを思い出します。

これは「心を開いて向き合える人とより多く出会えれば、1つしかない人生がより彩られる。心を柔らかくすることで、より多くのことを学べる。その先に『幸せ』が待っている」という意味ですが、これはワタクシが「幸せな人生とは何か?」と校長先生に問うた際の答えでした。

日頃、このような言葉をシャワーのように浴びているワタクシは「教育は深く、一生ものだなぁ……」と感嘆することが多いです。

本当の多様性を考える

もう一つ、心に残った話をさせてください。
ある学校で、若手の先生が北米に海外研修に向かう生徒さんたちを集めて、こう言いました。

「今、君たちが『常識』と考えているのは、この時代、この地域限定の『常識』でしかない。例えば、君たちがこれから行く国は多文化主義だ。民族、宗教、文化、各々の歴史的背景、すべてが違う価値観の集合体だ。これを平等に扱うためにはどうすればいい?

世の中の差別は悪意ではないことがほとんどだ。例えば、スロープがないとしよう。しかし、これは障害を持つ人を困らせるためにワザとつくっていないのではない。スロープがないと困る人がいるという事実を知らなかっただけだ。マジョリティが自分の常識に従って『しくみ』をつくることで差別が生まれる。君たちが生きる多文化社会では、どういう価値観を持てばいいのかを考えろ」

数週間後にマイノリティ側の立場としてアウェー環境に出向く教え子たちに「自ら考えてみろ」という講義は刺激的で、生徒たちが食い入るようにしていたのが印象的でしたし、正直、生徒さんたちが羨ましかったです。

今回は国際教育の中の一例を挙げてみましたが、今はどの学校であっても「本物の先進教育」という高い志を掲げております。次代を養成する機関としてのミッションを背負っている学校教育ですから、今現在ではご存知のように「英語」「グローバル」「STEAM」「ICT」「探究」というようなキーワードが踊ることが多くなっております。

これは、偏差値に代表される「学力スケール」というものを担保しながら、さらにプラスαの教育を時代から求められているという背景があるからだと思うのですが、保護者の皆さまは年々、目が肥えた人たちが多くなっている印象があります。

その仕事は「生きていく力」を
授けるもの

日々、教育というものに真剣に対峙しておられる先生方には一層の負荷がかかっているであろうことは容易に想像つきますが、ワタクシはやはり、先生という職業は「聖職」。一生を賭けるに充分値するものだなぁと思っております。なんたって、今の大人である私たちが見られない世界を見ることになるであろう子どもたちに、直接「生きていく力」を授けていく職業なのですから。

以前、ワタクシが尊敬する塾の先生に座右の銘を教えていただいたことがあります。

“Where there is a will, there is a way.”

「意志あるところに道は開ける」というリンカーンの言葉です。受験直前の子どもたちにも聞かせている言葉だそうです。

今年度も、もうすぐ全国各地で受験本番が始まります。子どもたちと先生方の日頃の頑張りが報われて、明るい未来が創られていくことを願っております。

プロフィール
作家/教育&介護アドバイザー
鳥居 りんこ 氏


作家、教育&介護アドバイザー。実体験に基づいた『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)が人気に。近著に『増補改訂版 親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『女はいつも、どっかが痛い ~がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン~』(小学館)など。執筆・講演活動などを通じて、子育てや受験、就活、介護に悩む女性たちを応援している。
■note「湘南オバちゃんクラブ」 https://note.com/torinko


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