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2020/1 塾ジャーナルより一部抜粋

授業づくりへのアプローチ 国語
天皇はなぜ面白がったのか?
――「行間を読め」ということ

仲国語ゼミ
塾長 仲 光雄

 

高校生対象の国語塾をやっている。今回の教材は、古文の「吉野拾遺」で、「センター試験」の前身の「共通一次」の問題を扱った。左ページに掲載したのがそれで、問題本文の前半部と設問の一つである。

 

天皇は話を聞いて面白がった

ストーリーを追ってみよう。

a=鷹狩に出かけたひろなりの皇子は、小松の生えた大きな岩が気に入り、持ち帰って天皇にさしあげたいと言う。

b=皇子のお供をしていた実為中将は、幼い皇子の無邪気なお気持ちを汲んで願いを聞き入れる。

c=皇居に戻った皇子は、言いつけておいた岩が届いていないので機嫌を損ね、お供の者は困り果てる。

d=中将がこれまでのいきさつを天皇に申しあげると、天皇は面白がりなさった。

ざっとこんなお話で、選択肢の①が正解である。傍線部は「それは面白い、こいつらどうするのかなあ」という気持ちを表している。茶目っ気のある天皇の姿を彷彿とさせる言葉なのである。

あれあれ、生徒は理解できない

 しかし、高校2年生の中位レベルの生徒の多くが、正しく答えられない。③か④で迷ったという。天皇が「岩を見たい」「民部の力がすごい」と言っているので、それに沿った内容のものが答えだと考えたらしい。

 なぜ、そんな発想になるのだろう。文章全体を読んで考えない、場面・背景を理解しないで傍線部の前後だけを見て答えを出そうとする。あるいは、場面・背景を理解する力がないからだろうか。

「行間を読む」ことの大切さ

 今ではめったに聞くことがないが、《行間を読め》ということが言われた時代があった。書いてあることを《文字通りに読む》のではなく、そこで言われていることの含み、暗に述べられている内容を理解せよというのである。特に、小説・物語文では必要なことであろう。

 近年、国語教育では「思考力」「表現力」を身に付けさせようとするのがはやりで、「主体的・対話的な深い学び」を促していくといった方向が声高に言われている。

 ただ、わたしなどは《場面をきっちり読み取る》《本文を正しく理解する》を忘れかけているのではないかと危惧する。昔にかえって《行間を読む》ことを提唱したいと思う。

ここの「行間」はこのようだ

 この問題文における「行間」を考えてみよう。

 A=「なんともすてきな岩で、小松の生え出た大きな岩」……まずは、この岩を運ぶことなどできないというおさえが必要。どこにも「運べない」と書かれていないなどと反論した生徒がいたが、困ったものだ。「常識」と言えばそうだが、家来たちがあたふたする様子から「運べない」と推測できないといけない。

 B=「幼い無邪気なお気持ちを汲んで、仰せを承知なさる」……お供の者はその岩が運べないのを承知の上で、皇子の仰せを受け入れる。皇子と家来の交流を前提とした心温まる場面である。これが「心温まるお話」だとどうしてわかるのですかと尋ねた生徒もいたが、これも困ったものだ。

 C=「皇子と、実為中将・忠行侍従・民部大輔のやりとり」……あの岩がほしいと駄々をこねる皇子に対し、家来たちは誰も責任をとらない。古文の内容を正しくとらえて、いわゆる「たらいまわし」であるとおさえたい。本人たちは真剣だが、周りから見ていると滑稽である。

 D=中将はこのいきさつを天皇に申し上げた。天皇は、幼い子どもではないし、家来たちの気持ちも理解できる。すべてをお見通しの上で「をかしがった」のである。

今の高校生のつまずくところ

 ところで、塾生の多くがつまずいたのはどうしてだろうか。教える私たちも反省しないといけないことがありそうだ。

 一番の問題は、「本文に書かれていることが答えとなる」と強調しすぎることだろう。文章を読んで選択肢を選ぶ時、本文に書かれていることを整理し、キーになる表現を見つければ、それが答えにつながると安易に教えてしまうことが多いが、これがいけない。

 「ことばを情報として処理する」ことは必要なことだが、それを強調するあまり、「行間を読む」ことの大切さを教えなくなっている。ことばの真意を読み取ることができない生徒が増えてきている原因だろう。《「あなたなんか大嫌い」と言われた時、本当は「大好き」という気持ちを込めていることもある》と説明したら、「いつもそうなのですか」と真顔で聞き返した生徒がいた。場面・背景を正しくおさえることができれば、好意を持って言われた言葉かどうかは理解できよう。

 文学的文章の理解には絶対に必要なことなのだが、指導者の方がそれくらいのことはわかっているはずだと思い込んで説明を省略することが往々にしてある。これが「場の空気を読めない」生徒をつくり出すのだろう。

この問を記述問題としたら

問 傍線部における天皇の気持ちを具体的に50字程度で説明せよ。

答 「皇子の無理な注文を安請け合いした家来たちが困っているのを知り、その後始末をどうするかと面白がっている。」(51字)

 「理解力」と「表現力」を問える魅力的な設問だが、ぐっと難しい。国語力とはこんなのが答えられることだと思うが、何よりも採点が複雑になり収拾がつかなくなる。だから、こんなのは「共通テスト」の記述式ではゆめゆめ問われることはない。

【例文】

 ひろなりの皇子の、いまだをさなうおはしましける時に、若き殿上人あまた伴はせ給ひて、夏実の河の河淀のほとりにて、鷹をつかはせ、御覧ありけるに、傍らに、いと大きなるいはほの、えもいはれず面白きに、小松の生ひ出でたるありけり。皇子御覧じて、「この岩を、帰りなん時、皇居の御庭に持てまゐれ。うへに奉らん。」と、実為中将にのたまはせければ、をさなき御心をおしはかりて、みことうけ給ふ。鳥などあまた捕らせ給ひて、帰らせ給へる時に、忠行侍従に、「岩を忘れし。」とのたまはせければ、「民部大輔が力も強く侍れば、御あとより持てまゐり候ふなり。」と申して、皇居に入らせ給ふ。

 御鷹の鳥など奉らせ給ひて、実為中将に、「ありつる岩を。」と召させ給ひけるに、「忠行侍従の仰せごとをうけたまはりぬ。」と申し給へば、侍従を召して、「いかに。」と尋ねさせ給ひけるに、「民部大輔の、『御あとより、持てまゐらん。』と言ひ侍りつる。民部を召させ給ひなん。」と申し給へば、むつからせ給ひて、「中将にこそよく言ひつれ。などさは言ふか。」としをらせ給ひければ、中将のありつることを奏し給へば、をかしがらせ給ひて、「まことに面白からん。岩こそ見まくほしけれ。民部が力こそゆゆしければ、持て来なん。」とのたまはするに、……                 (『吉野拾遺』から)

問 傍線部「をかしがらせ給ひて」とあるが、その時の天皇の気持ちを具体的に示すとすれば、次のどれが最も適当か。

①廷臣たちが岩を持って帰ることを約束したと言うことを聞いて、その後始末をどうつけるかと面白がっている。

②廷臣たちに向かってだだをこねている皇子の様子を見て、ほほえましく思っている。

③民部大輔が岩を持って来るということを聞いて、その怪力ぶりを見たいものだと興味をもっている

④そのすばらしい岩をぜひ皇居に据えてみたいものだと思って、民部大輔が持って来るのを楽しみにしている。

⑤廷臣たちが大きな岩の運び方を真剣に工夫している様子を見て、どうなることかと関心を寄せている。

【口語訳】

 ひろなりの皇子が、まだ幼くていらっしゃった時に、若い殿上人を大勢お連れになって、夏実の河の河淀のあたりで、鷹狩をなさって、御覧になっていたが、そばに、たいそう大きい岩で、何とも言えないくらい趣深く、小松が生え出ているのがあった。皇子は御覧になって、「この岩を、帰る時、皇居の御庭に持ってまいれ。天皇にさしあげよう。」と、実為中将におっしゃったので、幼い(無邪気な)お気持ちを汲んで、仰せを承知なさる。鳥などをたくさん捕えなさって、お帰りになった時に、忠行侍従に、「岩を忘れた。」とおっしゃったところ、「民部大輔の力が強くございますので、あとから持ってまいります。」と申しあげて、皇居にお入りになる。

 鷹のとった鳥などを(天皇に)さしあげなさって、実為中将に、「さっきの岩は。」と持ってこさせなさろうとしたところ、(実為中将は)「忠行侍従が仰せをうかがっていました。」と申しあげなさるので、侍従をお呼びになって、「どうしたのか。」と尋ねなさったところ、「民部大輔が、『あとから、持ってまいるでしょう。』と言いました。民部をお呼びになるのがよい。」と申しあげなさるので、機嫌を損じなさって、「中将によく言っておいたのだ。どうしてそのように言うのか。」と責めなさったので、中将が(今)あったことを天皇に申し上げなさると、(天皇は)面白がりなさって、「ほんとうに面白い。(その)岩を見たいものだ。民部の力は大変なものだから、きっと持ってくるだろう。」とおっしゃるが、……

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