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2019/11 塾ジャーナルより一部抜粋

【最終回】小学校英語教育 第12回

     

 小学校での英語教育の教科化が来年の4月に全面実施される。このコラムでは、有識者会議での内容や東京都の英語教育戦略会議の内容と進捗状況、諸外国特に中国・韓国での小学生への英語教育の実施状況と成果、さらにこの2年間の全国の学校教育現場での対応と、中小学習塾での小学生英語指導などをシリーズとしてまとめてきた。

 学習塾の先生方に、国の方針や諸外国の現状など知らないまま、全く手探りで突然新しい学習指導要領でスタートするのではなく、予備知識として知っていてほしいというつもりでのシリーズであった。

 十分に意を尽くしたとは言えないかもしれない。またお読みいただいた先生方からはお叱りを受けるかもしれないが、ほぼ2年間連載を続けた内容を改めて総括したい。

新しい英語教育が描いた未来

 教育再生実行会議の第三次提言で取り上げられ、文科省の教科化の方針がまとまって、翌年有識者会議が開かれた。同年、東京都でも英語教育戦略会議がスタートした。

 我々は日本もいよいよ本格的な英語教育に乗り出すのか、世界の共通語としての英語教育を実施することによって世界に羽ばたける人材育成を目指していくのかと心躍る思いで有識者会議を傍聴した。世界はコンピューター・ITの急速な技術進歩で、情報や画像が瞬時に世界中で共有され、ここ数年次々に信じられない速さで新しい世界をつくり出し始めてきた。

 そしてその根底に世界の共通語としての英語がある。世界の国々へ進出し、工場をつくり製品を販売していく。世界的な発見や技術を認めて貰うには英語で論文を書かなければ無理だ。地球は小さくなった。皆で共通して議論し合える言語、英語を話す、聞く能力を高めようとする教育はまさに必然であり、遅きに過ぎる恐れもあった。

 ただ本格実施が2020年4月からということは、中・韓・台の諸外国に比べて20年も遅い。日本人の明晰な頭脳をもってしても追いつくのに時間がかかるのではないかとの危惧もあった。

 それにしても日本の教育界にとっては青天の霹靂ともいうべき教育改革で、新しい教育・新しい英語指導が日本にどのような変化をもたらし、未来をどう変えていくのか強い興味を持った。明治維新の際の学制のスタートにも匹敵する大変革が起きるとワクワクする思いで毎回の有識者会議の会場へ臨んだのだ。

 愈々来年4月に全面実施が迫ってきて、現状は当初の期待を裏切る感が強い。韓国のように、英語を国家戦略の柱に置き、英語教育が他のすべての教科を加えたもの以上に評価され、ただひたすら前のめりに突き進んでいく国とは、違う方向になった。

 当初、有識者会議では小学校5、6年生は週3時限。45分の3時限で、うち、1時限は15分のモジュール授業3回に分けて、毎日英語の授業があるような考えもあったようだ。しかし最終的には2時限。うち1時限は総合的学習の時間を利用したり、夏休みを短縮したりして、正規の教科時間を増やさない方向になった。英語の授業で他の教科の時間を削らない。生徒の1週間の時数を増やさないということになった。

 これはアジアの諸外国の英語教育と比べてはるかに見劣りがする。こんなことでグローバルな人材の育成ができるのか。

 今、小学校の教師たちは英語指導の研修に取り組んでいる。しかし小学校の教員は近年少子化の影響で教職試験を受けようとする数が急激に減って1、2倍程度。場合によってはほぼ全員採用しても足りない状態に近づいている。一方、中高年の教師たちからは、この年になっていきなり英語と言われても、とやる気の見えない教師も多数存在する。定年間近の教師が多い現状で、英語教育を積極的に推進していく国の施策が機能を発揮していくのだろうか。

 学校の指導が心もとないという状態であっても数年経てば、たぶん日本の小学生の英語力は素晴らしい進歩を遂げているに違いない。多くの母親たちは学校の成績が付く教科については目の色を変えてわが子の力を伸ばそうとする。首都圏・京阪神地区での中学入試の科目に取り上げられることになれば、それこそ夢中になって英語力をつけようとする。つまり、学校でもたもたしていても、民間教育、塾や英会話学校で徹底した教育を受ける状況が始まるのではないか。

海外における英語教育改革の事例

 韓国や中国の例を見てもそのような動きが顕著だった。10年近くたってようやく学校での指導の形が整い、韓国の場合、李明博大統領の英語教育改革前後からさらにしっかりした形になってきたように思える。そして中国も韓国も英語の指導で一気に業績を伸ばした、巨大な学習企業が出現してきている実態を知っている。

 英語は言語であるだけに、聞いたり話したりすることを身につけるには小学校の方が早く馴染むことができる。読んだり書いたり、文法を身に着けるのには中学生の方が力をつけやすいように思う。

 韓国へ何回か訪れて、小学校・中学校を授業参観し、街の学習塾を訪問して感じたことは、小学校でほぼ日常英会話を習得し、中学ではさらに単語力や文法を身に着けるような体制になってきているように思えた。

 理屈からすれば、ある程度第二言語として定着し、その上でさらなる英語力を磨いてグローバルな人材を輩出する方向は正しいように思う。ただ日本の教育が世界に向けた、より高度な教育力の育成に向かっているかと言えば、現状はやや悲観的だ。

 近年ハーバードやケンブリッジなど、海外の大学への留学熱は下降気味だ。韓国や中国がぐんぐん海外留学志向が高まっているのに、日本はここ10年以上伸びていない。一時期アメリカやヨーロッパの大学の日本校が次々に設立されるブームがあって、第一志望大学に合格できなかった多くの生徒たちが日本校に入学した。しかし英語力がTOEFLで一定水準以上ないとアメリカの本校へは行けないという基準などで、徐々に熱が冷め始め、日本校も続々と閉鎖されるようになった。それがきっかけとなったかどうか、その頃から海外留学熱は下火になってきている。トビ立て留学ジャパンのように、企業も国も留学に積極的に支援する体制を進めているのに大きく盛り上がらない。少子化の影響もあり、受験勉強に積極的に取り組まなくても、高校・大学には行けるという思いが激しい勉学心を呼び起こさないのだろうか。

2年間の連載を振り返って

 さて、小学校の英語教育だが、各県各地の取扱いの状況をレポートしている。第1回目に取り上げたのは、石川県金沢市。1995年に世界都市構想を打ち出し、小学校1年から9年間のトータルの英語教育をスタートしている。このほか、東京都、大阪府、福井県など。都市では津市、松江市、寝屋川市、また秋田国際教養大学などの取り組みも取り上げた。英語村設置の動きについても伝えた。

 しかし多くの県では、この2年間一部の小学校に先行実施をさせ、それをモデルケースとして、各小学校から研修に集まって、本格実施のための準備期間として行っていたようだ。腰の重い県も少なからず見受けられた。

 ところで何回も話題になったモジュール授業。基本的なセンテンスを短い時間で繰り返し暗誦し叩きこむ指導方法。中国でも韓国でも効果的だとの評価があり、有識者会議や東京都英語教育戦略会議でも取り上げられたが、どういう方向に進められるのだろうか。週1回または総合的な学習の時間を割いても、2回の指導の中でどのように組み込まれていくのか知恵の見せ所か。

 4月から使用する教科書は出揃った。いよいよスピーキングとヒアリングがしっかりとできる英語教育の幕開けだ。一方で高校3年生の高大接続の英語について、民間の英語検定で予約金の問題やら試験の難易度などでまだまだ問題点が続出している。

 新しい改革にはそれなりにすっきりとは行かないものだが、今回は船出の前から騒がしい。

 5年後にはよかったと言える英語教育改革になってくれることを心より祈っている。

 2年以上の長い間お付き合いいただいて有難うございました。日本の英語教育の発展を祈っています。


森 貞孝(もり さだたか) プロフィール

 慶應義塾大学(経)卒、私塾協議会会長、全国学習塾協会理事長等歴任。全国学習塾協同組合理事長現職。著書「英語ショック」(幻冬舎刊)

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