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2019/11 塾ジャーナルより一部抜粋

2020年度入試における募集人数の変化 第15回

 

私立・国公立大学医学部に入ろう.com 平野 晃康

 
     

 私立大学・国公立大学はともに地域枠・推薦入試の募集人員が増加し、一般枠の募集人員が減少しています。

 通常、大学の募集人員は大学が案を出し、文部科学省が認可することで決まりますが、医学部の募集の方針を決めているのは厚生労働省です。これは、医学部に入学することは将来、医師になることを前提とするわけですから、国民への医療の供給に責任を持つ厚生労働省が決めるべきという判断に基づくものです。

 現在、医学部の募集定員には新成長戦略と緊急医師確保対策による臨時定員増が約1300名ほどあります。これは医師が不足している地域や診療科へ若手医師を供給するために定められた時限法で、本来であれば平成29年・30年度で期限が切れているはずのものです。

 しかし、実際には医師不足はますます深刻化しています。特に産科や小児科や精神科などではこれが顕著で、例えば2019年には兵庫医科大学付属ささやま医療センターが産科医不足を理由として今後の分娩を中止すると発表しました。

 大学付属の医療センターですらこの状況ですから、事態はかなり深刻です。また、今後、医師の労働時間を制限する働き方改革が始まることから、特に地域医療に携わる医師数を増やすことが急がれています。

 こうした中で、厚生労働省は次のような指針を打ち出しています。①募集人員の臨時定員増は原則として2022年度まで延長すること②将来地域医療に携わることを前提とする地域枠入試の募集人員は、各都道府県の実情に合わせるため、2020年度入試からは都道府県ごとに大学と協議すること③地域枠の募集は一般枠と別に行うこと。これらの指針を踏まえ、2020年度入試では2019年度入試に引き続き、募集人員の総数は大きく変化しないものの、一般枠が縮小し、地域枠や推薦・AO入試が増加するという傾向になっています。

【国公立大学】

 国公立大学医学部では、一般枠の縮小に加えて、福島県立医科大学、鳥取大学、広島大学の後期日程が廃止となりました。

 後期日程は近年次々と縮小されており、前述した3大学の廃止のほかにも、秋田大学や浜松医科大学の募集人員が減らされたり、一部が地域枠としての募集に切り替わったりといった変化が起こっています。このような入試日程の変動、特に募集の廃止は周囲の大学の難易度に影響を与えます。具体的には、福島県立医科大学の後期日程の廃止は、前期日程を行わないため募集人員の多い山梨大学や福島に比較的近い秋田大学や山形大学の後期日程出願者増という結果になるでしょう。そのため、これらの大学の受験難易度が上昇することが予想されます。

 また、現在発表があるだけでも信州大学、山口大学、横浜市立大学などが前期日程の一般枠の募集人員を減らしています(表1)。

【私立大学医学部】

 私立大学医学部では、国公立大学よりも大幅な変更が起こっています。これは、私立大学医学部は(特に1978年前後に設立された新設校は)地域医療の担い手を育てることが本来の目的であることが影響していると考えられます。

 2019年10月7日現在、まだ募集人員増加の申請中の大学が多いですが、次の大学で一般枠が減少することが決まっています(表2・表3)。

 岩手医科大学、福岡大学などは10名減という大幅な募集人員減少になっており、今年の私立大学医学部一般入試はかなり厳しい戦いとなることが予想されます。一方、順天堂大学、杏林大学では一般入試の募集人員が増加しています。

【受験校選びについて】

 国公立大学や私立大学で起こっている一般枠の減少は医学部入試にどのような影響を与えるでしょうか。

 まず考えられるのは、地方大学を都会の大学から受験しにくくなるということです。現在は、東京、大阪、名古屋、横浜、札幌、福岡などの大都市の受験生が豊富な教育資源を背景に地方大学を受験し、医師免許を取って故郷へ戻るというケースが多くみられていますが、一般枠が減少し、推薦入試や地域枠入試が増加すれば、このような受験の仕方が難しくなります。2 0 1 9 年度、2020年度の2年間で一般枠はかなり減少したため、今年の受験においてはよく考えて出願する必要があります。

 また、2020年度入試は最後のセンター試験となります。2021年度からは新学力テストが始まりますが、このように試験制度が大きく変わる場合には受験生が極力浪人を避けようとする傾向があります。

 新学力テストに切り替わる2021年度入試では、新学力テストの受験そのものを嫌気して国公立大学から私立大学へ志望を変更する学生が多数現れると考えられます。実際、共通一次試験がセンター試験になったときには国公立大学の倍率が軒並み下がり、逆に私立大学、とくに地方の私立大学の倍率が軒並み上昇したという前例があります。

 このようなことから、2020年度入試においては、一般入試が全体的に厳しくなることを踏まえ、現役生や一浪生など推薦入試やAO入試を受験できる学生はこれらの受験を視野に入れておくとよいでしょう。また、一般入試を受験する場合は大幅に募集人員が減っている大学や、福島県立医科大学のように近隣の大学で募集停止が行われた受験日程を受験する際には、2019年度入試よりも難易度が高くなっている可能性があるため、十分に注意する必要があるでしょう。


平野 晃康 プロフィール

 名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、現在は私立・国公立大学医学部に入ろう.com代表。医学部受験の指導と正しい入試情報の普及に努める。入試情報誌「私大医学部入学試験を斬る2013」(名古屋セミナー出版)を編集・執筆、医療系データブック(大学通信)にコラムを寄稿。

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