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2019/5 塾ジャーナルより一部抜粋

~ 永遠に未完の塾学 ~
第30回 縮小と切り捨ての時代

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 大手新聞社の本社はすべて東京にあり、テレビネットワークの中心となるキー局もすべて東京に集中している。そのため、私たちは東京の現況が今の日本の姿だと勘違いしてまだ安逸をむさぼっているが、もはや東京以外の日本は滅びつつあると言っても過言ではない。

 私は、山口県熊毛郡というド田舎の出身である。一年に一度、帰省するたびに、母から聞かされる話は驚くことばかりだ。実家の周辺では、イノシシに荒らされるので耕作を放棄する農地が年々増え続けている。土地や家屋を譲渡しようとしても、売主の方が相当額のお金を支払わなければ貰ってくれる人がいない。自治体も、固定資産税収入が減るから、土地の寄付を申し出ても引き取ってくれない。出身小学校は廃校になり、小さい子が遠方までバスでの通学を余儀なくされている。予算不足で、無料であった高齢者の通院タクシーも有料になった。

 しかし、これはド田舎に限った話ではない。

地方の都市も疲弊が顕在化

 私が現在住んでいるのは奈良県に近い大阪府の地方都市である。東京への対抗意識で頑張っているように見える大阪だが、内実は他の地方と同様、張りぼてに近い。

 大企業のほとんどは本社を東京に移転してしまった。人口をかろうじて維持しているのは大阪と堺の二政令都市くらいで、わが市も、隣の八尾市も、急速に少子化が進んでいる。小学校、中学校のクラス数は半減し、小中学校の統廃合が急速に推し進められつつある。今話題の、維新の会主導の大阪都構想も、実は、東京と二枚看板であると偽装したい大阪の悪あがきに過ぎないのではないかと、私は疑っている。

 東京以外は切り捨てないともたない時代になっている。

子どもたちも切り捨てられる

 直近の指導要領の改訂で、教科書の内容が難しくなった。それはわかっていたが、学校が配布する補助教材の問題集やワークブックの内容も急に難しくなっている。下手をすると、塾専用教材の応用問題より難しい問題が掲載されていて、塾生から質問されてこちらがあたふたすることも多い。

 さらに、以前には基本問題がほとんどであった学校の定期テストの問題も難問化している。恐らく、偏差値六十を超える生徒でないと解けないであろうレベルの問題が、平気で出題され始めた。

 また、小学校でも中学校でも能力別のクラス分けが当たり前になってきている。成績別ではなく習熟度別とか、クラス名も抵抗がないように「ゆっくりクラス」と「チャレンジクラス」とか、児童の希望によって振り分けているとか、さまざまな粉飾を凝らしてはいるが、要は能力別のクラス分けである。

 『少なくとも公立学校においては、すべての子どもたちを平等に』という、かつての教育界の金科玉条は、弊履のごとく捨て去られてしまったようだ。

果実は公立に、面倒は私学に

 今年の大阪府公立高校の志願者数を眺めると、ある大きな特徴に気づく。

 模擬テストの偏差値が五十以上の公立高校は、軒並み倍率一・五倍前後の高倍率であり、特に最難関校の倍率が大幅にアップして、中には二倍近い高校もある。それに対して、偏差値が四十台以下の公立高校は、近年このレベルの学校の統廃合が進んで学校数が急減しているにもかかわらず、特に工業科、商業科を中心にほとんどの学校が倍率一倍を切って定員割れを起こしている。

 高学力層は競争がさらに激化し、低偏差値層は勉強しなくてもどこかには行けるということだ。

 ところが、誰でも行ける公立高校に行きたがる生徒は少ない。わが塾でも、今年は公立高校の受験を避けて私学へ流れる生徒が急に増えた。

 公立高校は成績上位者をかっさらって人気と権威を維持し、面倒で苦労の多い分野は私学にお任せということであろう。

 税収不足から教育予算の削減を推し進めている府や市からすると、狙い通りの状況が進展していることになる。

言い訳は、官民連携

 教育関係をはじめ、あらゆる行政分野で最近よく聞く言葉が「官民連携」である。文部科学省の諮問機関である「教育行政機関と民間教育事業との連携方策に関する調査研究協力者会議」の報告書『全国で始まっている教育行政機関と民間教育事業者との連携の促進について』によると、官民連携のメリットは、(1)人々の学習需要の多様化に応え、(2)民間教育事業の活発化を促し、(3)教育行政機関と民間教育事業者との連携を進めることにあるとされている。

 塾部門に関しても、放課後学級や放課後子ども教室などの名称で校内や公共施設を開放して学習教室を開講する事例が全国に広まっている。行政の公平性の見地から具体的に明文化はされていないが、塾に通えない子どもたちの基礎学力をつけるための教室であることは周知の事実である。

 ところが、その事業を自治体から請け負っているのは、ほぼ一部の大手教育企業だけであり、また、大学入試でベネッセのGTECの導入が噂されるなど、特定の大企業の大きな収益源になっているだけではないかとの疑いも残る。

大学入試も地方切り捨て

 今年、関西では、関西有名私大の関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学の入試の難化、さらに近畿大学や摂南大学の高偏差値化が、どの塾、予備校でも話題になった。東京の人気私立大学はさらにそれ以上に入りにくくなっているようだ。

 ところが反面、地方国公立大学が非常に入りやすくなっているとの情報もしばしば耳にする。

 国立大学の独立行政法人化で、国は国立大学へ配分する予算を削減し、公募と審査を通して競争で獲得するシステムに変えた。結果として、研究資金が、大規模で学会の有力者がいる大都市の大学に偏って配分されることになったのだそうだ。そのためもあって、地方国公立大学の人気は一気に急落している。

 地方の私立大学はさらに悲惨で、外国からの留学生に頼る以外、方策が尽きている大学が多いとも仄聞する。

少子化、人口減がもたらすもの

 私の市には六つの中学校がある。現在、わが塾の成績を支えているのは、六つの中学校のうち、新しく住宅地が建設されて生徒数を維持している、ある一中学だ。マルクスの言う「量は質に転化する」である。数がいないと競争もなく、優秀者は生まれにくい。

 そして人口減は、一部の人だけが優遇され、行政と結びついて癒着が生まれやすくなる。官以外に、お金をばらまけるものがいなくなるからだ。

 塾は何をめざすべきか?
悩みは深い。

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