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2019/3 塾ジャーナルより一部抜粋

~ 永遠に未完の塾学 ~
第29回 個人塾はなくなる、のか?

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 塾経営者に「いよいよか…」と思わせる記事が、年初の各種ニュースサイトに掲載された。わが国最大手の信用調査会社、帝国データバンクの発表をもとにした、『学習塾の倒産、平成三十年は過去最多!』がそれである。

 各記事の概要は、

 一、平成三十年、「各種スクール・家庭教師」および「学習塾」の倒産件数は過去最多を記録する見通しである。

 二、教育関連業者の倒産は、四年連続で増加を続けており、少子化による生徒数の減少や競争の激化などから、リーマン・ショック以上の苦境に立たされている。

 三、負債規模別では、負債五億円を超える倒産はゼロであり、五千万円未満の小規模倒産が九割を超えている。大型倒産は2010年の(株)ジオス(英会話スクール)以来発生しておらず、規模のメリットを生かせる大手企業は比較的安定した業容を確保しているとみられる。

 四、大規模事業者が倒産企業の生徒、従業員、商圏を引き継ぐ例も多く、今後さらに小規模事業者の苦境が続くと予想される。

まわりを眺めると…

 そういえば、どこどこに、これこれという個人塾があって、多くの塾生で溢れかえっているという噂話を、聞かなくなって久しい。

 私が所属している塾団体も、以前は五十塾の会員塾をかかえていたが、今では三十塾ほどになっている。

 地域で新規の開塾といえば、チェーンの個別指導塾が出店してくるくらいで、それすら最近は見かけない。廃業と、高齢化による閉塾ばかりで、新しい個人塾を見かけることはほぼ皆無だ。

 個人塾は本屋さんと同じ運命をたどっているように見える。小さい街だと、今や本屋さんは、探すのさえ難しい。

大手塾の合従連衡(がっしょうれんこう)

 昨年の塾関連のもう一つの大きなニュースとして、学研ホールディングスと市進ホールディングスを核に、全国の大手塾など130数社が連合して、生徒数46万人、ベネッセホールディングスに次ぐ売上高第2位の連合体「教育アライアンスネットワーク」を設立したことがあげられる。

 私は最初このニュースを見たとき、収益を争う私企業同士の合従連衡がどれだけの成果をあげられるのか、疑問に思った。たった二社のメガバンクの合併でさえ数十年はぎくしゃくするのに、130数社が一つの企業体になることなどありえない。

 ネットワークのサイトを見ると、①共通診断テストの採用と教材の共同作成、②保護者対策資料など校務システムの共同開発、③授業力アップを図る社員研修システムの共有化、④社員採用の合同説明会実施、以上四つが現状の提携の柱となるようだ。

 その程度の連携ならたいしたことないと思う反面、この四つの柱を見ると、ますます個人塾は窮地に立たされ、「意識の高い」保護者に対して肩身の狭い思いをするだろうとも感じてしまう。

 しかし、合従連衡をせざるを得ないのは、弱さのゆえだと言えないこともない。合従連衡策は、超強大国の秦に対する周辺六ヵ国(韓、魏、趙、燕、楚、斉)の窮余の策であった。

 実際、大手塾も塾部門の収益の多くを個別指導部門に頼り始めており、大手塾の看板であった一斉授業クラスの収益は、3割ほどに落ち込んでいるとも言われている。

 学童保育への進出など、新しい業態の模索を始めている大手塾も多い。

保護者の意識の変化

 資料数が少ないので帝国データバンクほどの信頼性はないが、民間のイー・ラーニング研究所がおこなった「子どもの習い事アンケート」も、衝撃的なものであった。

 同アンケートによると、「平成三十年、子どもに学校以外にどんな習い事をさせましたか?」という質問に対して、実際に習っているものとして挙がったのは、一位が「学習塾」(23%)、二位が「スポーツ系」(17%)、三位が「英会話スクール」(14%)であった。

 ところが、「平成三十一年、子どもにさせたい習い事は何ですか?」の質問に対しては、「プログラミング」(27%)と「英会話スクール」(27%)が同率一位で、三位が「スポーツ系」(16%)。肝心の「学習塾」はわずか5%にすぎない。

 これは、私の実感でも、首肯できる。私の塾は英会話のECCジュニアも開講しているが、小学生クラスの曜日を決めるのに難儀する。ある曜日を保護者に提案すると、「その曜日はダンス、スイミング、空手、サッカー、野球…等々で来れません」の声が続出する。

 今や、小学生の学習塾部門は、変わった人の通うものに近くなっている感がある。「中学受験をするわけでもないのに、なぜ学習塾に通ってるの?」と周囲から言われたという保護者の声も珍しくない。

個人塾、なくなるのは仕方がない

 個人経営の本屋さんがなくなっても、誰も手を差し伸べなかったように、社会が塾を必要としなくなって、塾の存在理由が消滅して塾が消えていくのなら、それはそれで仕方がない。

 しかし、本屋さんに対するアマゾンにあたるものが、塾に対して今現在存在するかというと、私にはまだ見当たらない。

 私は今年、六十六歳になる。やっと我が子たちは自分の好きな道で稼げるようになったし、わずかではあるが年金ももらえる。返さないといけない借金もない。お金は、妻が困らないだけのものがあれば、それでいい。いい歳をして、いつまで現場にしがみついているのかと揶揄されることも増えた。

 しかし、私自身は、塾というものがなくなると本当に困る。

わが人生のゴールは無限の彼方(かなた)

 私は最初、何か崇高な目標や理念があって塾を始めたわけではない。ただ成り行きで食べるために塾をしてきただけだが、最近になって痛切に思うことがある。

 私の一生は、ただただ「子どもたちの学力を伸ばすにはどうしたらよいか」、その道を探す旅だった、人生だったという思いである。

 最初は、近所のできる塾の先生と比べられて、塾生にも馬鹿にされることの方が多かった。ところがいつの間にか、「教え方が他の人とは全然違う、学校で習っているだけではここまで理解は深まらなかった」とか、「初めて数学の面白さがわかった」とかの感想が耳に入ってくるようになった。冗談半分に「神だ!」と言う子さえいた。

 自分がそんな存在の足元にも及ばないことは、自分自身が一番よく知っている。しかし、長い道のりを歩んできたおかげで、だいぶ上達したなという思いはある。

 だが実は、「子どもたちの学力を伸ばすにはどうしたらよいか」という大問のうちの小問の一問すら、正答を見つけられないで毎日あがき続けている。

 その答えの一端の、さらに端っこでもよい、垣間見るまで、塾がなくなっては、私は大変困る。

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